いま、多くの人のデスクや本棚、Kindleには、読まないままになっている本がある。それも1冊や2冊ではなく、山積みになっているケースも珍しくない。「本を読み始める方法」というGoogle検索が過去1カ月で158%急増していることからも、人々がもっと本を読みたいと考えているのは明らかだ。一方で、なぜ最後まで読み切れないのかと悩み、その原因は自分にあると思い込みがちでもある。だが、これは個人だけの問題ではない。
読書・要約アプリ「Headway」の調査によると、66%の人が結局読まない本を購入している。これは、私たちの日常や注意力の在り方によって形づくられている、広く見られる行動パターンだ。私たちは、「自分を高めたい」という純粋な動機で本を買う。成長したい、向上したい、もっと創造的で充実した自分になりたい、視野を広げたいと願う。しかし、その多くの本は、自己成長のためというより、インテリアとして機能することになる。
本は「なりたい自分」への投資であり、読書は希望をもたらす
本は本質的に、楽観的な存在だ。未読の本はすべて、未来の自分の可能性を表している。新しい習慣を身につけることかもしれないし、パーソナルブランドを進化させることかもしれない。だからこそ、意欲的な人ほど本を買い続けるのだろう。おそらく読み終えることのない本を買い、自己啓発(self-help)の機会を「棚に飾るだけの啓発(shelf help)」に変えてしまう。
この現象は、単に規律や読書習慣の問題ではない。アイデンティティ、憧れ、自己成長に関わる問題である。人は情報を得るためだけに本を買うのではない。変容するために本を買うのだ。Headwayのデータが示しているのは、これは読書の問題というより、現代生活の問題だということだ。
現代生活は本を読むことに逆行するように設計されている
注意力が低下する一方で、私たちの時間に対する要求は増えている。一冊の本を最後まで読むと決めることは、とても大きな負担に感じられることがある。お気に入りのオンラインメディアで「読了時間12分」と書かれた記事を見たとき、それはおもしろそうに感じるだろうか。それとも、疲れそうに感じるだろうか。
現在の仕事や生活の環境は、絶え間ない通知、デジタル過負荷、終わりなく流れ込む新しいコンテンツで満ちている。それは圧倒的で、ときに身動きが取れなくなるほどだ。さらに厄介なのは、マルチタスクの効率性は幻想であるにもかかわらず、私たちが自分はマルチタスクが得意であると思い込んでいることだ。メールを確認しながら1段落を読み、Slackに飛び込むことは、深い思考を生むための方法とは到底言えない。
多くの人は、規律が足りないから読書に失敗しているのではない。気を散らす無数の誘惑に囲まれた環境の中で、本を読もうとしているのだ。私たちは、常に新しさを求めるように脳を訓練してしまった。ソーシャルメディアが生み出すドーパミンのループは、深い集中ではなく、瞬間的な刺激への報酬を私たちに与える。
10分おきにメールを確認するとき、私たちは何らかの報酬を探している。無限スクロールが起きるのは、親指を少し動かすだけで、常により新しく、より速く、より騒がしく、より魅力的な何かが待っているからだ。



