東京生まれ、キングス・カレッジ・ロンドンで博士号を取得し、豪モナシュ大学准教授などを経て、現在はロンドン大学バークベック・カレッジ「犯罪と司法政策研究所」の教授兼所長を務める犯罪学者だ。日本国内では、死刑廃止を推進するNGO「CrimeInfo」の副代表としても知られている。2024年7月、国連人権理事会は佐藤氏を、イラン人権状況特別報告者に任命し、同年8月1日より正式に就任した。
今回のイランへの攻撃とその被害、そしてその陰で加速する国内抑圧の両方を、国連の側から独立して報告し続けているのが、まさにこの日本人研究者である。
佐藤氏はイランへの軍事攻撃について、「軍事作戦は魔法の解決策ではない」と繰り返し発言し、外交的対話への回帰を強く求めている。
加害者の責任追及の側のICC所長として赤根氏がいて、被害者側の人権状況を独立に報告する側に国連特別報告者として佐藤氏がいる。この一致は偶然ではなく、日本という国が、国際人権メカニズムのなかで、現に担っている/担うべき位置そのものである。この立場は、遠くの戦争で殺された子どもたちに対して、日本という国が「無関係」ではありえないことを、法制度の面からも、そして人の顔の面からも示している。
そのうえで、Forbes JAPANの読者に問いたいことがある。
企業は、自社のサプライチェーンや投資先が、紛争下の人権侵害に間接的にでも関与していないと、どこまで説明できるだろうか。投資家は、自らのポートフォリオが、紛争影響地域でどう機能しているかを、開示し、対話しているだろうか。大学は、研究資金、共同研究、留学生の受け入れの側面で、紛争下の学生や研究者の権利をどう扱っているだろうか。そしてメディアは、戦時に報道し、戦後に忘れる、というサイクルの外に自らを置く努力を、どれほどしているだろうか。
これまで、実業を代表とする功利的な社会にとって、人権や戦後補償は、しばしば「コスト」として扱われてきた。しかしいま、問われているのは別の文脈である。人権が守られ、戦争被害が補償される社会でこそ、ビジネスは持続可能である、という新しい功利の文脈である。人権と功利は、対立ではない。この視点からいえば、遠くの子どもたちの死は、経営者と投資家にとっても、他人事ではなくなる。


