政治

2026.08.28 10:45

『戦争が終わったあとの法』は無力か。法学者が思う戦争の「不適切さ」

トランプ・ネタニヤフ会談:2026年7月28日、アメリカ合衆国ワシントンD.C.のホワイトハウスにて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談するドナルド・トランプ米国大統領(写真:Ma'ayan Toaf (GPO)/HANDOUT/Anadolu via Getty Images)

メディアが忘れると、権利も忘れられる──「同情疲れ」の影響も

戦争は、始まった瞬間に、爆発的に報道される。だが、その報道量は、時間とともに驚くほど早く減る。ある戦争が続いているあいだに、別の戦争が起きれば、前の戦争は、それだけで画面から押し出される。

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国際NGO「CARE」は毎年、「Breaking the Silence(沈黙を破る)」という報告書を出し、その年に「世界で最も報じられなかった人道危機」の10件を発表している。

2025年版でリストに並んだのは、中央アフリカ共和国、ナミビア、ザンビア、マラウイ、ホンジュラス、北朝鮮、アンゴラ、ブルンジ、ジンバブエなどで、大半はアフリカの危機であり、そのすべてが、被害の規模に対して「報道量は無視できるほど小さい」と評価されている

ノルウェー難民評議会(NRC)も同様に、「世界で最も無視されている強制移動危機」を毎年報告しており、2024年版ではカメルーンが最も無視された危機の1位となった。報道の少なさ、援助資金の少なさ、外交的関心の少なさが、構造的に重なることを繰り返し指摘している。メディア研究では、視聴者が悲惨な報道から目を背ける「同情疲れ(コンパッション・ファティーグ)」が、報道側の編成判断そのものにも影響することが、繰り返し検証されている。

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この構造は、単に「知らないこと」の問題ではない。報道が減ると、援助が減る。援助が減ると、外交的な関心が減る。外交的な関心が減ると、責任追及の動きも遅くなる。そして最終的に、被害者の権利、とりわけ子どもの権利は、法的にはあるのに、社会的には「忘れられた権利」になっていく。

「戦争が終わっても、子どもたちは帰らない」。この問いは、この構造の入口に立っている。法は忘れないが、法が生かされるための社会的な条件は、確実に痩せていく。だからこそ、メディアが忘れることは、それ自体が人権問題である。この認識を、書き手も、読み手も、共有する必要がある。

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文=谷口真由美 編集=石井節子

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