政治

2026.08.28 10:45

『戦争が終わったあとの法』は無力か。法学者が思う戦争の「不適切さ」

トランプ・ネタニヤフ会談:2026年7月28日、アメリカ合衆国ワシントンD.C.のホワイトハウスにて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談するドナルド・トランプ米国大統領(写真:Ma'ayan Toaf (GPO)/HANDOUT/Anadolu via Getty Images)

トランプ・ネタニヤフ会談:2026年7月28日、アメリカ合衆国ワシントンD.C.のホワイトハウスにて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談するドナルド・トランプ米国大統領(写真:Ma'ayan Toaf (GPO)/HANDOUT/Anadolu via Getty Images)

谷口真由美氏。TBS「サンデーモーニング」プレゼンターとして人気だ。ビジネスと人権研究所の代表理事も務める。

著書に、ベストセラーとなった『おっさんの掟: 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)のほか、『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』(文春文庫)がある国際人権法、ジェンダー法、コンプライアンスやハラスメントを専門領域とする法学者である。

今日本、世界で起きている事柄を「人権」の視点から読み解き、今日の意思決定と発信のためのフレーム提示を目指す時評コラムシリーズ、第1回は戦争と人権と法をテーマに、谷口氏が戦争をめぐる不条理の構造を解説、ニュースへの接し方、そしてわれわれに課された課題はなにかをともに考える。

法学者が考える今の人権 不適切にはどう「ほどがある」のか vol.1(前編):『イランで殺された子らの人権 どこへ?──戦争の不適切にはどう「ほどがある」のか 』に続き、後編ではトランプ大統領による国際刑事裁判所(ICC)解体圧力を入り口に、戦後における法の役割、そして隣り合わせた市中には砲火が轟かない「日常」を(今のところ)暮らすわれわれや所属する企業や社会、そしてメディアの宿題にフォーカスする。

ICCは戦争犯罪や反人道の罪などを犯した個人を裁くオランダ・ハーグにある常設の国際裁判所だ。今トランプ政権が、このICCがプーチン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出したことに対して廃止を主張している。この解体圧力で「加害者の責任追及」という法の役割が脅かされているといってよいが、法が戦後に果たすべき役割はこれだけではないという。その他の役割とは何か。また、それらは果たして正当に「運用」されているのか。


戦争が終わったあと、法は何をするのか

停戦が発表されると、報道の主語は「国家」に戻る。ニュースは、停戦の条件、外交の駆け引き、復興の見通し、投資機会の話へと移っていく。だが、法の側から見れば、話はまるで逆である。戦争が終わったところから、法の役割は別のフェーズに入り、本格化する。

法が戦後に果たすべき役割は、大きく3つに分かれる。

次ページ > 責任追及、救済、再発防止

文=谷口真由美 編集=石井節子

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