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2026.08.25 11:00

AI時代、激変するマーケティング環境にどう対応すべきか─「思想」を「編集」し、コンテンツとして発信することの価値

AIの進化がマーケティングを変える時代。企業に求められるのは、思想や価値観を伝える「コンテンツ」の発信だ。企業のブランドマーケティングを支援するクロスメディアグループ代表・小早川幸一郎とsuswork代表・田岡凌が、その未来を語り合った。


小早川幸一郎(写真左。以下、小早川):田岡さんとは、当社から『カテゴリー戦略』を出版したことをきっかけに、著者と出版社という関係を超え、さまざまなプロジェクトをご一緒しています。ネスレをはじめマーケティングの最前線で活躍されてきた田岡さんは、次代を担うマーケターだと注目しています。

田岡凌(写真右。以下、田岡):ありがとうございます。私は生活者の困りごとや利用シーンに着目し、市場そのものを創造することをテーマに取り組んできました。

独立した今、あらためてマーケティング環境を俯瞰すると、最も大きな変化は、時代の変化そのものが加速していることです。技術革新だけでなく、人々の価値観や社会構造も急速に変わり、昨日できなかったことが今日には実現する時代になりました。

こうしたなかで企業に求められるのは、「人の頭に真っ先に思い浮かぶ存在」になることです。情報があふれる時代だからこそ、人々の認知や選択のあり方そのものが変わるゲームチェンジが起きています。

小早川:顧客の比較検討の仕方も変わってきたということですね。

田岡:その通りです。以前は「キリンかサントリーか」というようにブランド同士を比較していましたが、今は「クラフトビールが好き」「IPA(インディア・ペールエール)が飲みたい」とカテゴリーから選ぶ人が増えています。

その結果、人は細かな違いではなく、「そのカテゴリーを代表するブランド」を選ぶようになります。この傾向はBtoBでも同じです。「○○といえばこの会社」と真っ先に想起される企業こそが、顧客だけでなく社員や投資家からも選ばれる時代になっているのです。

小早川:そうした変化のなかで、コンテンツの役割もますます重要になっていると感じます。

suswork 代表取締役 田岡 凌
suswork 代表取締役 田岡 凌

AI時代に問われる「思想」とコンテンツ

田岡:マーケティングの視点から見ると、企業が何を目指し、何を実現したいのかという思想がなければ、本当に価値あるコンテンツは生まれません。

AIによって大量のコンテンツを生成できる時代だからこそ、創業者の原体験や企業文化、哲学といった、その企業にしか語れない一次情報の価値は、これまで以上に高まっています。

小早川:まさに思想を言語化することが重要です。私たちが社名に掲げる「クロスメディア」には、質の高いコンテンツをひとつの媒体で終わらせず、書籍、ウェブ、動画、ポッドキャストなど、さまざまなメディアへ展開し、その価値を最大化するという思いを込めています。

私たちは20年前、ビジネス書出版社のクロスメディア・パブリッシングとしてスタートしました。その後、クロスメディア・マーケティングを設立し、企業のブランドマーケティングを目的とした「企業出版」や、出版後の本を活用したマーケティングサービスへと事業を広げてきました。

現在では、書籍や広報誌などの紙媒体から、動画、ポッドキャスト、ウェブサイト、オウンドメディアまで、さまざまなメディア・コンテンツを通じて企業のブランドマーケティングを支援しています。

創業当時は少し早すぎたかもしれませんが、今まさに「クロスメディア」の時代が来ていると感じています。

クロスメディアグループ 代表取締役 小早川幸一郎
クロスメディアグループ 代表取締役 小早川幸一郎

田岡:AI時代だからこそ必要なのは「思想×編集」です。AIは既存情報をもとにコンテンツを生成できますが、その源となる思想は人間が生み出すものです。そして、その思想を社会に伝わるかたちへ編集するプロセスが欠かせません。

小早川:松下幸之助さんや稲盛和夫さんのような優れた経営者のそばには、必ず編集者がいました。理由はふたつあります。ひとつは、人は自分自身を客観的に語ることが苦手だから。もうひとつは、専門家ほど話したいことが多く、情報が複雑になりがちだからです。編集者は、その本質を整理し、相手に伝わるかたちへ変換する役割を担います。

田岡:私も経営者として、その重要性を実感しています。特にスタートアップは、新しい価値を生み出す力はあっても、それを社会へ伝える力は別物です。編集という客観的な視点が入ることで、独りよがりな思想ではなく、社会に受け入れられるカテゴリーへと育っていきます。

一方で、大企業の経営者は周囲から賛同されやすい立場だからこそ、自分の思想を磨き続けることが難しくなる場合もあります。だからこそ、異なる視点をもつ編集者との対話が必要なのです。

小早川:AIは情報を整理し、最適解を導くことには優れています。しかし編集者の役割は、その人の頭のなかにある、まだ言葉になっていない考えや経験を引き出すことです。そこにある一次情報こそが、新しい価値を生み出します。

田岡:これからは人だけでなくAIも情報を選ぶ時代になります。AIが評価するのは、独自性や専門性をもつ一次情報です。逆に、他社の焼き直しのようなコンテンツは、人にもAIにも選ばれなくなるでしょう。思想をもち、それを良質なコンテンツとして発信し続ける企業こそが、AIからも人からも選ばれる存在になると思います。

小早川:私たちも企業向けAI検索サービスを提供し始めました。価値ある一次情報をAIに正しく理解され、推薦されるように編集し、多様なメディアで発信することで、AIからも評価され、「選ばれる企業」になれると思います。こうした領域でも、当社の編集力を企業の皆さまに活用いただきたいと考えています。

クロスメディア・マーケティングが提唱する「AI時代のブランドマーケティング・モデル」
クロスメディア・マーケティングが提唱する「AI時代のブランドマーケティング・モデル」

「言葉」こそがすべてのコンテンツの源泉

小早川:書籍は今なお最も信頼性の高いコンテンツです。SNSや動画が認知を広げる一方、深い理解や行動変容には書籍のような本質的なコンテンツが欠かせません。さらに一冊の内容は記事や動画、音声などへ展開できるストック型の情報資産となります。執筆を通じて経営や人生を棚卸しできたという経営者も少なくありません。

田岡:書籍は社外だけでなく社内にも影響を与える重要なコミュニケーションツールです。AI時代だからこそ、企業が何を目指すのかという思想が、人を引きつける旗印になります。

小早川:経営理念や戦略は言葉にして初めて共有できます。伝わらない原因は、相手ではなく、自分の考えを十分に言語化できていないことが多いのです。言語化に優れた経営者の組織には一体感があります。

田岡:優れた経営者は、言葉にすることで思考を深めています。一方で独善に陥る危険もあるため、編集者のような第三者との対話を通じて言葉を磨くことが重要です。

小早川:書籍も動画もホームページも、本質は思想を伝える手段です。私たち編集者は、その源泉となる思想を言葉にし、最適なコンテンツへ編集することが使命だと考えています。

クロスメディア・マーケティング
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こばやかわ・こういちろう◎クロスメディアグループ代表取締役。2005年にクロスメディア・パブリッシングを創業。ビジネス書出版を起点に、企業のブランディングやマーケティング、採用支援まで事業を拡大し、多彩なコンテンツを通じた情報発信を手がける。

たおか・りょう◎suswork代表取締役。京都大学卒業後、ネスレなどでブランドマーケティングに従事。2022年にsusworkを設立。著書『カテゴリー戦略』は「実務者が選ぶマーケティング本大賞2025」大賞を受賞し、大きな反響を呼んだ。

promoted by クロスメディア・マーケティング / text by Fumihiko Ohashi / photographs by Masahiro Miki / edited by Akio Takashiro