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2026.08.31 11:00

アイデアを、「カタチ」に―― エプソンが支えるチームラボの表現世界

メイン画像:チームラボ《The Way of the Sea:虚空の宇宙》© チームラボ

アートコレクティブ・チームラボが手がける「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス(以下、エプソン チームラボボーダレス)」。麻布台ヒルズ(東京・港区)にあるこのミュージアムでは、約560台のプロジェクターが空間のすべてを作品で満たし、境界のない(ボーダレス)ひとつの世界をつくり出す。

「エプソンのプロジェクターだからできた表現」とチームラボ代表・猪子寿之(以下、猪子)は言う。エプソンとの共創の舞台裏を聞く。


世界は、連続している──チームラボが表現したかったもの

チームラボの作品世界の根底には、猪子の一貫した世界認識がある。

「この世界は、基本的にすべてのものが連続性の上に成り立っていると思っていて。自分というものは単独では存在できず、環境との連続性のなかに存在している。しかも人間は、その連続性を外から眺めているのではなく、自らそのなかに入り込んだうえで世界を認識しているはずなんです」

それにもかかわらず、人間はどうしても世界を切り刻んで認識してしまう、と猪子は続ける。その典型が言語だ。「地球」と口にした瞬間、まるで境界をもって単独で存在するかのように認識してしまう。だが本当は、境界は連続的で、誰にも決められない。だからこそ猪子は、頭ではなく身体で、世界の連続性を感じられる場所をつくろうとしてきた。

「自分とこの世界が一体であったり、連続していることそのものを認識できたり、美しいと感じられるような場所をつくりたかった。作品同士が移動し、関係し合い、重なり合って変化していく。作品群によって、境界なく連続するひとつの世界をつくりたかったんです」

その思想を結晶させたのが、2018年にお台場にオープンした「エプソン チームラボボーダレス」だ。2019年には年間219万人が来館し、「単一アート・グループとして世界で最も来館者の多い美術館」としてギネス世界記録に認定された。2024年には舞台を麻布台ヒルズへ移し、その世界はさらに深化。移転後から2年5ヵ月たった2026年7月に来館者数が400万人を突破した。豊洲にある「チームラボプラネッツ TOKYO DMM.com」を合わせた東京のふたつのチームラボには、年間約420万人が訪れている。

「黒が、圧倒的に黒い」──エプソンのプロジェクター技術でなければ実現しなかった世界

お台場では、エプソン製プロジェクター約470台を投入。麻布台ヒルズは約7,000平米と床面積こそ小さくなったが、それでも約560台が高密度に設置されており、多様な形状・広さ・素材の作品空間で、より精細な表現が可能となった。エプソン チームラボボーダレスでは、作品が展示空間を「どこまでも」移動していく。例えば、蝶の作品は、人から生まれ、床から壁へ、そして別の作品空間へと、どこまでも飛んでいく。

「ひとつの作品が何十台というプロジェクターを通っていくし、一台のプロジェクターのなかを何作品も通って重なり合う。作品ごとの音楽も重なり合う。いろんなものが重なり合いながら成り立つ状態をつくることが、非常に困難なんです」

象徴的なのが、《The Way of the Sea:虚空の宇宙》(メイン画像)という複雑な地形をもつ作品だ。極めて狭い空間に、47台ものプロジェクターが使われている。

「あそこまで複雑な地形になると、ディスプレイを使う……といったことはもうできない。現実的にプロジェクター以外の選択肢はありません。つなぎ目なく作品に包まれる状態は、プロジェクターでしかありえないんです」

さらに重要なのが「黒」だという。像が壁に見えるということは、その場所で光があらゆる方向に拡散しているということ。閉じた空間で何台もの光が重なれば、光は互いの投写面に入り込み、映像は白っぽくぼやけてしまう。

「黒が黒であることがすごく重要なんです。エプソンのプロジェクターは、とにかく黒が圧倒的に黒い。あれだけの台数を高密度に使うと普通は白っちゃけてしまうんですが、極めて彩度の高い状態で、黒が鮮明に見える。ほかのプロジェクターでは、あの鮮明さは絶対に出ないと思っています」

映像を投写面から「分離」できることも、プロジェクターならではだ。ディスプレイでは、映像面がそのまま機材になってしまう。だがプロジェクターなら、水やミスト、柔らかい素材にまで映像をまとわせられる。来場者は映像のなかを歩き、触れ、時に作品そのものを通り抜ける。身体的な体験の可能性が、大きく広がるのだ。

チームラボ《百菊:散り、流れに還る》© チームラボ   ミストを使用した作品。
チームラボ《百菊:散り、流れに還る》© チームラボ ミストを使用し、空間そのものに作品が描かれている。

技術者同士が対話を重ねる「共創パートナー」

エプソンとの協業は、お台場の開業以来続いている。作品ごとに異なる細やかな要望への対応、膨大な台数における設定の最適化、さらには機材をより柔軟に使いこなすための検証。有効面積を最大化するため、吸気口のスペースを極限まで詰めても問題がないか、機種ごとにテストで検証したこともある。わずかな差が空間のあり方を変え、体験の質を大きく左右するからだ。

猪子が「マニアックな話ですが」と笑いながら挙げるエピソードの一つひとつが、現場への深い理解の証しだ。

「制約の多い状況でも、先を見据えた対応を一緒に検討してくださったり、土壇場でもどうにかしてくださる。まさに伴走してもらっています」

技術だけに留まらない、伴走の積み重ねが、境界のない世界を支えているのだ。

身体で世界を認識する場所を、これからも

猪子がこだわるのは、テクノロジーの存在を感じさせないことだ。作品世界に浸っているとき、来場者がプロジェクターの存在を意識することはほとんどない。機材は「黒子」に徹する。

「テクノロジーや機材を感じてほしくないんです。作品に包まれ、連続した世界のなかに自ら入って、身体を通してこの世界を認識していく。そういう場所をこれからもつくっていきたい」

自分もまた、連続する世界の一部である──。その気づきを身体にもたらす表現の中心に、今日もエプソンのプロジェクターがある。

「今日現在、空間全体を作品で包み込む手段はプロジェクター以外にない。だからこそ、レベルの高いエプソンの映像表現技術とともに、つくり続けていくんです」

いのこ・としゆき◎チームラボ代表。1977年、徳島県生まれ。2001年、東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボを設立。アーティスト、プログラマー、エンジニア、数学者、建築家など、さまざまな分野のスペシャリストから構成されるアートコレクティブを率いる。

promoted by エプソン販売 / text by Mayu Yamaguchi / photographs by Toru Hiraiwa / edited by Yosuke Mizuno(都恋堂)