多くの企業が業務にAIエージェントを導入し、従業員が「AIネイティブ」になることを期待するようになると予想されている。
Shopify(ショッピファイ)、Duolingo(デュオリンゴ)、Box、Metaなどの企業は、従業員が業務でAIやAIエージェントを使用することを期待している。これらの企業の一部は現在、年次人事評価に従業員のAI活用状況を組み込んでいる。業務でのAI使用を期待していると従業員に伝える企業は増えており、ShopifyやMetaなど一部の企業では、採用面接の中で候補者にAIを使用させている。AIの活用とは、退屈で時間がかかり、レバレッジの低い(生産性の低い)業務を分担するパートナーとしてAIエージェントを利用することを意味するケースが、ますます増えていくだろう。
2000人のエグゼクティブを対象としたMITスローン(MITスローン経営大学院)の調査によると、エージェントの導入が進んでいる組織の従業員の76%が、AIエージェントを使用することが同僚との差別化につながると考えている。マッキンゼーの推計では、雇用データ、賃金水準、予測される自動化の導入率を組み合わせた計算に基づき、2030年までに年間2兆9000億ドル(約459兆円)の米国経済価値が生み出される可能性がある。しかし、多くの組織はいまだにAIの導入に取り組んでいる最中であり、エージェントの導入はさらにもう一段階上のハードルとなっている。同MITスローンの調査では、2025年11月時点でエージェント型AI(自律型AI)の導入率は35%にとどまっていることが分かった。つまり、多くの組織や従業員は、いまだにエージェント型AIに触れておらず、使いこなすスキルも身につけていないということだ。
多くの人々が、AIが雇用市場に与える影響や、AIの使い方の習得がいかに必要であるかについて耳にしている。彼らはようやくAIの初期段階を理解し始めたと感じているところなのに、今度はエージェントが登場したのだ。エージェントとの関わりが限られている人は多いが、これらは急速に「未来の働き方」の一部となり、雇用市場で競争力を維持するために不可欠なものとなるだろう。未来の働き方に備えるために、まずは馴染んでおくべき3つのAIエージェントおよびエージェントプラットフォームを紹介する。業務でよく使われるエージェントは変わるかもしれないが、それらを扱う基本原則はどれも同様である。
初心者向けの優れた業務向けAIエージェント:Zapier(ザピア)
多くの人は、Zapierを基本的な自動化ツールとして知っているだろう。「もしこれをしたら、あれをする(If this, then that)」というものだ。しかし、Zapierは基本的な自動化の枠を大きく超え、8000以上の連携機能にアクセスできるAIやAIエージェントを追加している。同様のツールを使って自動化を構築した経験があるなら、Zapierを使えばエージェントへの移行がはるかに容易になる。見込み客の処理、サポートチケットの管理、メールマーケティングのワークフロー自動化などを行うエージェントを構築できる。エージェントの使い方を学んでいる人にとって、Zapierが価値を持つもう一つの理由は、より自律的なエージェントにプロセスを抽象化(ブラックボックス化)させる前に、自分自身でタスクの分解を論理的に考える訓練になるからだ。プロセスの各パーツを接続する際に、トリガーやアクション、そしてシステムがどのように連携しているかを視覚的に確認できる。このメンタルモデルは、今後使用するあらゆるエージェントツールに応用可能だ。
コーディングにとどまらない業務向けAIエージェント:Claude Code(クロード・コード)とClaude Cowork(クロード・コワーク)
Claude Codeは、技術的なツールに慣れており、ターミナル(PCのオペレーティングシステム上で直接コマンドを実行するためのテキストベースのインターフェース)での操作を得意とする人向けだ。より扱いやすいバージョンのClaude Coworkは、Claudeのデスクトップアプリ内で使用できる。どちらもタスクを受け取り、それをいくつかのステップに分解し、自律的に処理を進めることができる。多くの人はClaude Codeをコーディング用エージェントと考えているが、コーディング以外の用途も同様に強力だ。筆者は競合調査、調査結果の戦略フレームワークへの落とし込み、そして後でエンジニア向けのチケット(起票)作成などに再利用できる「スキル」の構築に活用している。Claude Coworkも同様のことを、より緩やかな学習曲線で実現できる。Claude Coworkは使いやすいUI(ユーザーインターフェース)を備えており、ユーザーはエージェントの進捗状況や、作業中のフォルダ、エージェントがコンテキスト(文脈情報)として使用しているドキュメントやその他の情報を常に視覚的に確認できる。
一歩先を読むAIエージェント:Manus(マナス)
Manusは、自由度の高いオープンエンドなタスクを最初から最後まで完結させる能力に長けている。リサーチの課題を与えれば、必要に応じてすべての情報をまとめたウェブページを作成するなど、解決方法を自ら導き出す。このツールが際立っているのは、回答を出した後にユーザーが次にやりたいであろうステップを先回りして予測することに長けている点だ。標準でGoogleドライブなどのサービスと多数連携しており、非エンジニアでも接続方法を理解しやすいUIを備えている。最近、筆者は友人のために形にしたいアイデアの市場分析をManusに依頼した。Manusは信頼できるウェブサイトからすべての調査を行い、文書を作成した上で、その成果を共有するためのウェブサイトが必要かどうかを尋ねてくれた。
会社がAIエージェント戦略を打ち出すのを待つ必要はない。頭角を現す従業員とは、指示を待つ人ではない。すでに実験を始め、何が機能し、何が機能しないかを学び、経営陣から尋ねられたときに自分の言葉で語れる人のことだ。
これらのツールのうち1つを選び、実際のタスクを与えてみるとよい。機密データの漏えいを避けるため、IT部門が承認していないツールに会社のデータを入力してはならない。会社にまだこれらのツールがない場合は、仕事以外で自分が持っているアイデアに関するタスクを考えてみよう。Zapierにフォローアップメールの作成を手伝わせる。Claude CodeやClaude Coworkに競合調査をさせる。何週間も先延ばしにしていた市場分析をManusに任せる。目的は、どのタスクをエージェントに割り当てるべきか、何を期待すべきか、成果をどう評価すべきかについての感覚を養うことだ。
従業員にAIリテラシーを求める企業の動きは鈍化しておらず、テクノロジーも同様だ。始めるための最良の方法の一つは、業務向けAIエージェントに直接触れてみることである。遅れをとっていると感じるかもしれないが、今からでも決して遅くはない。



