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AI

2026.08.10 08:30

AMDが新興Taalas買収、AIモデルをシリコンに焼き付ける技術を獲得──AI推論でHBM依存を崩すか

digitalpochi - stock.adobe.com

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現在、AIモデルを動かすということは、トークンを1つ生成するたびに、メモリーチップからプロセッサーへと重み(ウェイト)データ全体を何度も繰り返し転送することを意味する。このデータの往復こそが、現代の推論における速度の限界であり、広帯域メモリー(HBM)がコンピューティングの世界で最も希少な商品となった理由だ。AMDが米国時間8月6日に買収合意を発表したトロント発の新興企業Taalas(タラス)は、この問題を根本から消去することで解決に挑んでいる。同社のチップは重みデータをロードすることが一切ない。なぜなら、重みデータがトランジスターに永久にエッチング(刻印)されているからだ。

今回の買収劇は、AMD対エヌビディアの推論競争における新たな一手として記録されるだろうが、その競争の力関係において大きな変化をもたらすわけではない。より有意義な解釈は、半導体業界で現在最も過熱している取引である「メモリー」について、この買収が何を物語っているかという点にある。

重みをトランジスターに刻み、メモリー読み出しをなくした半導体

Taalasは2023年、AIチップ企業であるTenstorrent(テンストレント)を創業したリュビサ・バジッチによって設立された。共同で経営にあたるのは、ATIやAMDのエンジニアリング部門で経験を積んだ妻のレイラ・バジッチで、最高執行責任者(COO)を務める。同社はフィデリティ、クワイエット・キャピタル、そして半導体投資家のピエール・ラモンドから2億1900万ドル(約344億円)を調達し、「モデル特定型集積回路(model-specific integrated circuits)」と呼ばれるものの開発を進めてきた。

TSMCの6ナノメートルプロセスで製造された同社の最初のテストチップは、メタの大規模言語モデルLlama 3.1 8Bを毎秒1万6960トークンで処理した。Taalasは、これが当時のエヌビディア製GPUの48倍、Cerebras(セレブラス)のアクセラレーターの8.5倍の速度であると主張した。2026年は、200億パラメーターのモデルを対象とした第2世代チップが登場する予定だ。

その設計は2つの領域に分かれている。モデルの重みをマスクROMとして焼き付ける領域と、書き換えが必要なキャッシュや微調整用アダプターを受け持つ通常のSRAM領域だ。バジッチは2月、「このハードワイヤリング(回路の固定化)が、私たちのスピードを生み出している要因の1つだ」と米技術メディアThe Next Platformに対して語っている

編注:AIモデルの重みとは、学習によって決まる数値パラメーターを指す。Llama 3.1の80億パラメーター版なら約80億個ある数値の集まりで、通常はDRAMやHBMなどのメモリーに保存され、推論のたびにプロセッサーへ読み出される。Taalasの方式は、この数値をチップ製造時にマスクROMとして回路構造そのものに固定する。マスクROMは製造段階で内容が物理的に確定し、以後書き換えられない読み出し専用回路で、重みの値はトランジスターと配線のパターンとして作り込まれる。データを記憶装置に置くのではなく、データを回路の形にする処理だ。読み出しの往復が不要になるため速度が上がる一方、チップは製造時に固定した1モデル専用になる。

GPUが入力を処理し、Taalas製チップがトークンを生成

AMDはこのチップを自社のラック型AIシステムHeliosに組み込み、役割を分担させる構成をとる計画だ。プロンプト処理はInstinct GPUが担当し、トークン生成はTaalasのシリコンが処理する。全体をAMDのソフトウェア基盤ROCmで一元的に制御する。今回AMDは、人材獲得が主目的のアクハイヤーではなく事業買収と位置づけ、2026年10〜12月期中の完了を見込む。AMDでAI部門を統括するシニアバイスプレジデント、バムシ・ボッパナは買収の狙いをプラットフォームの観点からこう説明した。

「AMDは、あらゆるAIワークロードに最適な計算ソリューションを顧客が柔軟に導入できる、フルスタックのAIプラットフォームを構築している」

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