OpenAIは、開発中の次期モデル「Astra(アストラ)」がサイバー攻撃能力で社内基準で最上位に届いた可能性を否定できないと公表した。
Astraは未公開のモデルで、公開時期も提供形態も明らかにされていない。判定の物差しとなる「プリペアドネス・フレームワーク(準備態勢の枠組み)」は、2023年12月にOpenAI自身が定めた社内規程だ。米国にはAIモデルを公開前に政府が審査する法的な制度がまだない。トランプ政権は評価手順の整備を進めている段階だ。今回ブレーキを踏んだのは規制当局ではなく、モデルを売る側の企業だった。注目すべきは公開の遅れではない。開示された能力そのものである。
未公開モデルの侵入能力を、OpenAIが自ら市場に告げた
数学の未解決問題10問をAstraが解いたとして、OpenAIはその証明を公開し、数学者の検証に委ねた。それから6日後、同じモデルは祝福とはほど遠い別の評価を受けることになった。Astraは今や、OpenAIがサイバーセキュリティ上「クリティカル(深刻)」に該当し得るとみなす初のシステムである。判断基準となる「プリペアドネス・フレームワーク」は、誰かがモデルを使えるようになる前に、どれだけの封じ込めが必要かを決めるという社内規程だ。
OpenAIは米国時間8月7日、自社サイトへの投稿でAstraの評価結果を明らかにした。最初に報じたのはAxiosである。強化されたセキュリティ管理の要件をまだ満たしていないAstra関連の社内活動を、すべて一時停止したことも同時に公表した。
次期モデルの投入に向けて商業的な圧力を最も強く受けている企業が、そのモデルは堅牢に守られたシステムに単独で侵入できるかもしれないと市場に告げたのである。
単独でゼロデイを突く水準、社内活動の一部を停止した
OpenAIの枠組みであるプリペアドネス・フレームワークが「クリティカル」と呼ぶのは、「堅牢に守られた実世界の重要システムを幅広く相手取り、あらゆる深刻度のゼロデイ脆弱性を人手を介さず見つけ出せる」モデルだ。ゼロデイ脆弱性とは修正パッチが存在しない欠陥を指し、発見だけでなく、実際に機能する攻撃手段へ仕上げるところまでが条件になる。「大まかな目標を与えられただけで、堅牢な標的への新しいサイバー攻撃戦略を立案から実行まで一貫してやり遂げられる」場合も、同じ判定が下る。
GPT-5.6-Solを含む従来のフロンティアモデルは、いずれも1段下の「ハイ(High)」にとどまってきた。ところがAstraの内部評価では、エージェント型コーディングとサイバーセキュリティで能力が大きく伸びた。OpenAIはもはやクリティカル判定を除外できないという。本格的なベンチマーク測定はなお進行中であり、今回の扱いは最終判定ではなく予防措置としている。
隔離環境で思考連鎖を監視、高リスク動作は即時中断
どちらに転ぶにせよ、対応は具体的だ。Astraは現在、隔離されたテスト環境で稼働している。ネットワークと外部ツールへの接続は制限され、モデルの重み(学習済みパラメーター)は暗号化され、実行はサンドボックス(隔離領域)内に閉じ込められている。加えて、モデルの思考連鎖(Chain-of-Thought)を常時監視し、高リスクの動作をリアルタイムで中断できる体制も敷かれた。政府機関と一部のAI安全性評価機関には、一般公開に先立って能力を検証する機会が与えられる。OpenAIは、必要な安全性とセキュリティ要件を満たした段階でAstraを広く提供する方針を変えていない。



