米国トラック協会(American Trucking Association)によれば、貨物盗難によるトラック業界の損失は1日あたり1800万ドル(約28億2600万円)に及ぶ。なかでも自動車輸送企業は、上昇し続ける車両価値に目をつけたハッカーの標的となるケースが増えている。
もはや単純な自動車窃盗の域を超えている。自動車輸送会社は、巧妙な手口を用いる窃盗犯や詐欺師によって多額の損失を被っているのだ。
「映画のように男たちが森から飛び出して車を奪うようなシーンではありません。彼らはコンピューター画面の向こう側に座り、車両を特定の場所へ運ぶネットワーク(多くの場合、参加している当人たちも知らずに)を利用しているのです。そして気づいたときには、車は国外に持ち出され、2度と戻ってきません」と、自動車輸送プラットフォームSuper DispatchのCEO、マット・ブラッドリーはインタビューで語る。
盗難は1件当たり3台へ増加、狙いは1256万円級の新車
Super Dispatchが自動車輸送業界の動向をまとめたレポートによると、こうした盗難の件数と被害額が増加していることが明らかになった。具体的には次のとおりだ。
・1件あたりの盗難車両数は、2026年初頭の1台から、直近3カ月間では3台に増加
・盗難車両の中央値は約8万ドル(約1256万円)
・盗難車両の4台に3台は2024年モデル以降の新しい車両であり、「犯罪者が輸送ネットワークを流れる、より新しく高価値な車両を意図的に狙っている」ことを示している
フィッシングメールで、正規のレッカー車を窃盗に利用
窃盗犯は輸送トレーラーごとを乗っ取ったり、保管ヤードから車両を運び去ったりするような単純な手口には出ない。
ブラッドリーによると、犯人は正規の連絡を装ったフィッシングメールを輸送会社の従業員に送り付け、社内ネットワークへのログイン情報といった重要情報を盗み取る。
「正当なレッカー車が、必要な情報をすべて持ってヤードに現れます」とブラッドリーは言う。「そのレッカー車は、自分たちが違法行為に加担しているとは知りません。指示通り車両を積み込み、ヤードやオークション会場から、関係者だけが知る非公開の場所へ運びます。すると、善意のレッカー業者が駐車場に車を降ろす。そこに悪人が現れて車を持ち去る。2度と戻ってきません」。
これは、Above Auto Transportの創業者マイケル・ベイダにとっても身に覚えのある状況だ。Super Dispatchが主催した本テーマのウェビナーで、ベイダは自身の経験と被害を防ぐための対策を語った。
「フィッシングメールは数え切れないほど届きます」とベイダは述べた。「うちの経理チームには、毎日1日中、『運送業者から新しいメールアドレス宛への支払い依頼』を装った詐欺メールが届きます。こうしたことは日常的に起こっており、自衛策としては、適切なシステムを整え、適切な保険に加入していることを確認する以外に、できることはほとんどありません」。



