2026年にビジネスリーダーが注目すべき「ロイヤルティ」3つの教訓
トレバー・ノアが「デイリー・ショー」で披露した、あの有名な「そんなことをしている時間はない(Ain't nobody got time for that)」というセグメントが、これほど的を射ていたことはない。私たちは常にあまりにも多くの情報にさらされており、そのすべてを読み解くことは実質的に不可能だ。これこそが、筆者がこの記事を書こうと思った理由である。
当社は、マーケティングのプロフェッショナルや消費者からのインサイト、そして当社のプラットフォーム上で追跡された5億件にのぼる会員のインタラクションを分析した、大規模かつ詳細な「グローバル・カスタマー・ロイヤルティ・レポート2026」を公開した。これは、当社がこれまでに作成した中で最も包括的なレポートであり、60ページ以上に及ぶ。しかし、誰もがそのすべてに目を通す時間があるわけではないことも理解している。そこで、2026年にビジネスリーダーが「知っておくべき」重要事項として、レポートから得られたロイヤルティ業界に関する3つの主要な教訓を紹介する。
1. 誰もがAIについて語るが、その鍵を握るのがロイヤルティである
AIは、あらゆる戦略資料や取締役会、基調講演で大きく取り上げられている。確かにその可能性は本物だが、ボトルネックも同様に本物である。人々が忘れがちな側面の1つが、「前述の可能性を引き出すために、どのようなデータをAIに入力すべきか」という点だ。
当社のレポートによると、将来的にロイヤルティプログラムの導入を検討していない企業のAIレディネス(準備態勢)スコアは、10点満点中わずか4.9点だった。一方で、アクティブなロイヤルティプログラムを運営している企業のスコアは6.3点だった。しかし、これは理にかなっている。ロイヤルティプログラムの本質は、同意に基づくデータハブである。すべてのスキャン、アンケート回答、レビュー、特典引き換え、チャレンジ達成は追跡可能なインタラクションであり、ファーストパーティデータやゼロパーティデータを生成する。これこそが、AIが実際に学習できる種類のデータなのだ。
その結果生まれるのが、当社が「AIデータループ」と呼ぶものだ。
1. 最適化されたロイヤルティプログラムがより多くの顧客を惹きつける。
2. 会員数が増えれば、より豊富なデータが集まる。
3. 豊富なデータによってAIの学習が進む。
4. AIの精度が高まることで、プログラムのパフォーマンスが向上する。
5. プログラムのパフォーマンス向上により、AIのインサイトとパーソナライゼーションの質が向上する。
6. そのAIインサイトがロイヤルティプログラムをさらに最適化する。このサイクルを繰り返す。
リーダーに対する私のアドバイスは、AIを常にエコシステム全体の文脈で捉えることだ。どのようなデータがそこに流れ込み、AIに何ができるのか、そして具体的にどのような成果を期待しているのかを常に意識することである。
2. ロイヤルティプログラムが機能しないと、会員は離脱しポイントは放置される
先ほど説明したループは、会員が実際にエンゲージ(関与)していなければ機能しない。普及が進むなかで、ここから少し耳の痛い現実がある。ロイヤルティプログラム会員の74%が、わずか2カ月で「静かに退会(クワイエット・クィッティング)」している。彼らはアカウントを解約するわけではない。親友が関わるなと忠告してくれた「要注意人物」のように、何も言わずにそっと離れていくだけなのだ。
もうひとつ懸念すべきデータがある。2025年に獲得された全ポイントの27%が使われず、顧客の49.1%がロイヤルティプログラムに不満を感じる最大の理由は「特典の獲得までに時間がかかりすぎること」だと答えている。
これらの兆候は、月曜朝の会議でわかりやすく警告の旗を振ってくれるわけではない。実際、手遅れになるまで気づかれないことが多い。幸いなことに、これを解決するためにプログラムを全面的に再設計する必要はない。CSOとしての経験から言えば、初期段階の体験(初期エクスペリエンス)を見直すだけでよい。
• より迅速、より頻繁な成功体験:購買以外の行動(プロフィールの完成、レビュー投稿、SNSでのエンゲージメントなど)でポイントを付与する非トランザクション型の獲得方法を導入し、会員が最初の特典を早く獲得できるようにする。
• ポイントだけでない、感情的なフック:認知、ステータス、帰属意識を活用し、顧客が戻ってきたくなる仕掛けをつくる。
• プログラムの新鮮さを保つ:季節ごとのチャレンジ、期間限定の特典、ゲーム化(ゲーミフィケーション)されたマイルストーンなどが効果的だ。変化のないプログラムは地雷を踏むようなものである。
3. 「認識のギャップ」を解消する必要がある
データループを構築し、離脱問題にも対処した。これで一息つけると思ったら大間違いだ。自分自身に問いかけるべき重要な質問がもうひとつある。それは「会員は自分が大切にされていると感じているか」だ。現実には、企業側がそう思っていても、顧客がそう感じているとは限らない。
当社の調査によると、マーケターの82.6%が「自社のロイヤルティプログラムによって顧客が大切にされていると感じている」と信じているのに対し、それに同意した顧客はわずか56.2%だった。これは、いわばロイヤルティにおける「マリアナ海溝」のような深い溝だ。放置すれば、プログラムは一気に底へと沈んでいくだろう。
これを解決するための第一歩は、「プログラムが、企業側が提供したいものに基づいて設計されているのか、それとも顧客が本当に受け取りたいものに基づいて設計されているのか」を自問することだ。常に顧客の視点で考え、すでに手元にあるロイヤルティデータを実際に活用し始めることを勧めたい。
結論
これら3つの教訓は、それぞれ独立した課題ではない。これらは一連のサイクルなのだ。エンゲージしている会員がいなければ、強力なAIデータループは構築できない。また、顧客が軽視されていると感じていれば、会員のエンゲージメントを維持することはできない。そして、ロイヤルティプログラム特有の、同意に基づいた豊富なデータがなければ、認識のギャップを埋めることは不可能なのだ。1つの課題を解決すれば、次の課題を解決するための道が開ける。これは偶然ではない。これこそが、適切に設計されたロイヤルティプログラムが持つ真のパワーである。



