NEWS Forbes JAPAN MEMBERSHIP 新機能|
記事ページ内の広告表示を最小限にしました

その他

2026.08.10 07:30

権力者が莫大な富を蓄積するイランの実態 国民は生活に困窮

イランの前最高指導者、故アリ・ハメネイ師の肖像が掲げられた同国の首都テヘラン。2026年3月4日撮影(Majid Saeedi/Getty Images)

イランの前最高指導者、故アリ・ハメネイ師の肖像が掲げられた同国の首都テヘラン。2026年3月4日撮影(Majid Saeedi/Getty Images)

イランの労働者の平均月収は約1億6000万リヤル(約1万8000円)だ。インフレや物資不足、停電などが重なり、同国の一般市民が生活費を賄うことは極めて困難になっている。イラン国家統計局によると、6月のインフレ率は88.6%に達し、特に食品価格の上昇率は世界でも最高水準にある。同国では人口9200万人のうち、3200万~4000万人もの国民が絶対的貧困線を下回る生活を送っている。紛争や制裁に加え、40年ぶりの干ばつがイランの貧困層に深刻な打撃を与えている。

他方で、政権を掌握する強硬派はこうした影響をほとんど受けておらず、蓄積した莫大な富を維持しようと、かえって勢いづいている可能性がある。これは、イランの指導部が自らを演出している姿とは正反対だ。同国の最高指導者だった故アリ・ハメネイ師は、質素で謙虚な人物として自らを位置付けていた。公式の資産申告書にはわずか5万ドル(約790万円)相当の資産しか記載されておらず、自身の生活水準は「平均以下」であるとし、「貧しい人々」としか付き合わないとされていた。

ところが、この「民衆の味方」という表向きの姿の裏には、国家の支配と富が結び付いたかつての全体主義体制をほうふつとさせる、強大な経済帝国が潜んでいる。これは汚職を通じて富を蓄積し、私有財産、海外口座、企業、一族の資産などで構成される、典型的な権威主義体制の私的な富の蓄積法とは異なる。確かに、イラン政権も私的な富を蓄積してきた。だが、ハメネイ師の富の多くは、国家とその経済資源に対する並外れた支配力によってもたらされたものだ。ソビエト連邦のヨシフ・スターリンのような歴史上の指導者らと同様、ハメネイ師の権力と富は切り離すことができなかった。それは、ハメネイ師が個人的に莫大な私的財産を所有していたというより、経済の大部分を支配する国家機関に対する同師の権力に由来する。

ハメネイ師はスペインや英国など複数の国に高級不動産を所有する金融機関を率いていた。これには、スペインのマヨルカ島やマルベリャにある複数の高級リゾートやゴルフ場が含まれる。ハメネイ師一族は2022年に国内で抗議運動が発生して以来、投資の分散を図るため、これらの地域への関心を高めるようになった。スペインや英国以外にも、ハメネイ師の資産の一部はベネズエラ、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)に預けられている。特にベネズエラはハメネイ師のマネーロンダリング(資金洗浄)に協力しており、政権が崩壊した場合に備えて一族の資産を守る役割を果たしている。

質素で飾り気のない服装からは収入が控えめであるかのように見えるかもしれないが、ハメネイ師の資産は1000億~2000億ドル(約16兆~32兆円)と推定されており、イランが石油輸出から年間に得る額をも上回る(同国は現在の紛争中でも110億ドル(約1兆7000億円)以上、停戦期間中にはさらに65億ドル(約1兆円)を得た)。

しかも、その富はすべて一族に集中しているようだ。ハメネイ師の息子でイランの新最高指導者となったモジタバ・ハメネイ師は英国やUAE、欧州諸国に少なくとも30億ドル(約4700億円)相当の資産を保有しているが、公式の所有権書類には同師の名前は一切記載されていない。これらの資産や不動産は資金洗浄や、同師が支配する機関への資金提供に利用されている。

富を生み出す強大な機関

国王による支配に終止符を打った1979年のイラン革命で、数十万人の国民が国外に逃れた(イラン人の15人に1人が海外に居住している)ことで、革命後に放棄された不動産を管理するため、通称「セタド」という組織が設立された。セタドの活動は当初、慈善目的で、2年間の移行期間のみに限定される予定だった。

次ページ > 富を生み出す強大な機関セタドの実態

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事