3つ目の「バブル」は、4つの批判でできている
力の問いに「そこまでの力はない」と答える側に回ると、意見の対立は本物になり、しかも即座に細かく割れていく。ひとまとめに「バブル」論と呼ばれるこの3つ目の陣営は、実のところ4つの別々の批判の寄り合いである。
マイケル・バーリが狙いを定めているのは会計処理だ。彼は「資産の耐用年数を延ばして減価償却費を過少に計上すれば、利益は人為的にかさ上げされる」とXに投稿し、2026年から2028年にかけて業界全体で1760億ドル(約27兆8000億円)分の減価償却費が過少に計上されると見積もった。オラクルは利益を27%近く、メタは21%近く過大に見せている、というのが彼の計算である。
バーリへの反論はこうだ。チップは最先端モデルの学習から、推論、さらにクラウドでのレンダリングへと、6年をかけて段階的に用途を移していく。だから長めの償却期間にはそれなりの根拠があるし、監査法人も承認し続けている。バーリの主張が通るかどうかは、結局、推論の需要が十分な速さで伸びるかどうかに帰着する。
ビル・ガーリーが疑うのは、会計ではなく売上の中身だ。巨大テック企業がスタートアップに出資し、そのスタートアップは受け取った資金を出資元のクラウド利用料として払い戻す。こうした循環取引が売上を膨らませている、というのが彼の指摘である。
エド・ジトロンが突くのは支払い能力だ。OpenAIを、近年の経済史で最大級の負債と呼んでいる。
MITのプロジェクトNANDAが突きつけるのは、導入の現場の実態である。企業が実施した生成AIの実証実験のおよそ95%が、損益に測定できるほどの効果をもたらさなかった、という調査結果だ。ただし、この数字は報告書そのものが読まれる回数よりはるかに多く引用されてきた。報告書自身は、公開されている約300件の取り組み、52件の組織へのインタビュー、業界カンファレンスで集めた153件のアンケート回答をもとにした暫定的な知見だと断っている。その後も通用しているのは95%という数字ではなく、そこで示された仕組みのほうだ。企業のシステムはフィードバックを蓄積できず、文脈に合わせて適応することもできない、という指摘である。
ベンチャーキャピタリストが、減価償却については正しく、導入の実態については誤っている、ということは十分にありうる。それなのに、たいていの論評はこの4つの批判を、分けられない1つのパッケージとして扱っている。
行はAIが世の中を変えるかどうか、列はその結末が良いものかどうかで、4つの立場は次のように並ぶ。
| 悪い結末 | 良い結末 | |
|---|---|---|
| AIは世の中を変える | 審判のとき ダリオ・アモデイ ジェフリー・ヒントン ヨシュア・ベンジオ シトリーニ・リサーチ ダロン・アセモグル | スーパーサイクル ジェンスン・フアン キャシー・ウッド マーク・アンドリーセン デミス・ハサビス ヤン・ルカン |
| AIは過大評価されている | バブル マイケル・バーリ ビル・ガーリー エド・ジトロン レイ・ダリオ MITプロジェクトNANDA | 普通の技術 ゲイリー・マーカス アルヴィンド・ナラヤナン サヤシュ・カプール ピーター・マクローリー エリック・ブリニョルフソン |


