混乱への安易な対処法としてレイオフを利用するのではなく、組織はバランスの取れた、人間中心の人材戦略に注力する必要がある。
市場変化の加速とスキルギャップの拡大により、組織は絶え間ない再調整を迫られている。職務の移行(役割の転換)は頻度を増し、人材管理システムはその変化への対応に追われている。レイオフに関しても、企業が「新たな常態」としての混乱に対処するなかで、その実施を促す要因自体が変化している。
かつてレイオフは、マクロ経済のショックや世界経済の逆風に対する反応として行われるものだった。しかし今日、それは日常的な出来事となっている。筆者の会社がまとめた調査レポート「The Mobility Breakdown: Redeployment and Outplacement Trends Report」(モビリティの崩壊:再配置とアウトプレースメントのトレンドレポート)によると、調査対象となった人事リーダーの87%が「最近レイオフを実施した、または今後12カ月以内にレイオフを検討している」と回答した。
組織が俊敏性を維持したいのであれば、人員削減を労働力戦略の主眼に置くべきではない。信頼を構築し、重要な領域へ人材を戦略的に配置転換しなければならない。
レイオフの隠れたコスト
人事リーダーが「レイオフされた従業員に提供している」とするサービスと、従業員個人が「利用できる」と認識しているサービスの間には、大きな乖離が存在する。調査した人事リーダーの約半数が、移行期間中に的を絞った再配置の機会やキャリアコーチングサービスを提供していると回答した一方で、それらが利用可能であると認識していた従業員は20%未満にとどまった。これは、コミュニケーション、透明性、明確性の明らかな破綻を示しており、雇用主ブランドに悪影響を及ぼし、本来であれば引き留められたはずの優秀な人材を失うことにつながりかねない。
一方で、米人材マネジメント協会(SHRM)の調査では、新規採用にかかる総コストは、その職務の給与の3〜4倍に達することがあるとされている。再配置(配置転換)は、従業員がそれを選択肢として認知していれば、このコストを劇的に削減できる。
退職者以外に及ぶレイオフの影響
レイオフは退職する人だけでなく、組織全体に影響を及ぼす。残留する従業員は、業務量の増加、士気の低下、チームの不安定化、そしてリーダーシップへの信頼喪失から生じる強い不安を訴えることが多い。測定は困難だが、この信頼喪失は雇用主にとって長期的な影響を及ぼす。それが認識され対処される頃には、生産性やロイヤルティに重大なダメージが生じている可能性がある。
同時に、人事リーダー自身もまた、これまで以上に大きなプレッシャーにさらされている。従業員への対応という重荷の多くが彼らの肩にかかっている。すなわち、退職する従業員の移行を支援しつつ、残留する従業員をサポートし、チームを安定させ、リーダーに次の課題への備えを促すことである。
見えざるシステム的な疲弊
従来の人材管理オペレーティングシステムは、特定の出来事に応じたピンポイントの人員削減決定に対処するために構築されたものであり、現在では機能不全に陥っている。新たなアプローチが必要だ。
このプレッシャーを和らげる鍵は、役割ではなくスキルに焦点を当てた人材システムを導入することだ。データに基づく「スキルベースの計画モデル」を取り入れることで、組織は混乱が生じる前にスキルの過不足を予測できるようになる。こうしたアプローチを確立するために、雇用主は以下の取り組みを行うことができる。
• 従業員が自身の価値を理解し実感できるよう、実践的なツールや枠組みを提供する
• 継続的なスキル開発と、新たなスキルを応用する機会に投資する
• ワークフローの設計プロセスに従業員を関与させる
これにより、的を絞った再配置の機会を提供することが可能になり、その場しのぎの労働力決定に伴うリスクを軽減できる。
人間中心の人材戦略
労働力の変化は今や常態化している。競争力を維持するために、組織はキャリア移行や社内モビリティを、個別の場当たり的な対症療法ではなく、人間中心の人材戦略の要素として捉えなければならない。
当社の社内データによると、体系的な移行支援を受けた従業員は、平均して32日早く新しい職務に就いている。また、過去4年間に当社のキャリア移行支援を利用した候補者の約60%が、まったく異なる職種や業界へと転身を遂げた。課題は何か。多くの人が、どの道を進むべきか、どのようなスキルが必要なのか確信を持てずにいることだ。この種の支援は、退職が決まってから開始すればよいというものではない。
包括的で人間中心の人材戦略を提供することは、組織内における信頼関係を構築し、組織の評判やブランドを広く高めることにつながる。また、絶え間ない混乱という新たな現実に組織を備えさせ、俊敏性が成功を左右する未来への適応力を高めることにもなる。



