その言葉とは、「FUN(楽しさ)」だ。スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、「遊ぶことは、子どもの仕事である」という名言を残した。これが真実であるならば、最良の状態にある仕事とは、大人にとっての遊びになるのかもしれない。年齢や活動を問わず、遊びが人生の重要な一部であることを、この言葉は思い出させてくれる。しかし、多くのビジネスパーソンにとって、最近の仕事はあまり遊びのようには感じられない。むしろ、心底疲れ果てるものと感じられているかもしれない。世論調査会社ギャラップによると、世界中の従業員の62%が仕事にエンゲージメントを持てておらず、17%は積極的に離反している(不満、恨み、無関心)状態にあるという。つまり、10人中およそ8人が、惰性で働いているか、みじめな思いをしているということだ。だからこそ、毎日の仕事に取り入れるべき3文字の言葉がある。「fun(楽しさ)」だ。
楽しさは仕事の根幹である
職場での楽しさとは、ふざけることではない。人々が自分の仕事、同僚、組織に対してどう感じるかに、実質的な役割を果たすものだ。楽しんでいるとき、脳は気分を高める神経伝達物質を放出する。ドーパミンやセロトニンといったこれらの化学物質は報酬系を活性化し、ストレスを軽減し、気分、創造性、学習能力を高めてくれる。これは、今取り組んでいることへのより深い関与を促す、モチベーションの妙薬と言える。うまく実践されれば、楽しさは従業員の幸福度に直接寄与する。そして幸福度は、企業の業績にも貢献する。ただし、多くの組織が見落としている点がある。職場での幸福度を高める最も速い方法のひとつは、仕事そのものをより楽しくすることなのだ。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された研究によれば、幸福度の高い従業員は、仕事において生産性、創造性、有効性が大幅に高いという。楽しさはパフォーマンスの妨げではない。むしろ、それを推進するものなのだ。それにもかかわらず、職場での楽しさを軽薄あるいは不適切とみなす人もいる。
多くの組織(およびそれを率いる人々)は、人々が笑っているならば、仕事をしていないに違いないと考えがちだ。真面目さと有効性を同一視すると、遊び心や自発性が抑え込まれてしまう。皮肉なことに、人々が自分の仕事や仲間を楽しんでいるとき、エネルギーと創造性は高まる。それでも、仕事とはやはり「仕事らしく」あるべきだと考えるビジネスパーソンは相当数存在する。心当たりのある人もいるだろう。何でも真剣に受け止め、ユーモアを加えると少し居心地悪くさせ、まるで心臓の開胸手術を行っているかのように振る舞う人たちだ。この「真面目でいること」への傾倒は、過去の遺物ではない。求人サイト大手モンスター(Monster)の「職場における笑いに関するレポート(Workplace Laughter Report)」によれば、「ビジネスパーソンの32%が、過去1年間で職場が明らかにより真面目になったと感じている」という。仕事から楽しさを排除しようとする人々は間違っている。そして科学がそれを証明している。もちろん、職場から楽しさを奪う要因はほかにもある。
絶え間ない過重負担
締め切りに追われ、こなしきれない量のタスクを抱えているとき、楽しさは手の届かない贅沢になる。朝から晩まで全力疾走のような日々が続き、ユーモアや好奇心、創造性の入り込む余地はなくなる。
評価への恐れ
楽しさには、多少の弱さをさらけ出すことが必要だ。冗談を言ったり、遊び心を発揮したり、軽い瞬間を共有したりすることには、小さな社会的リスクを伴う。プロフェッショナルらしく見えないこと、間違ったことを言うこと、評価されることを恐れる文化のなかでは、従業員は身構えたままになる。
強制された楽しさ
実際の仕事や文化と切り離された「楽しい活動」を組織がスケジュールすると、しばしば白い目で見られる。本物の楽しさは、人間関係、共有された課題、そして予期せぬ瞬間を通じて、自然発生的に生まれることが多い。
つながりの欠如
楽しさは、多くの場合、人と人とのつながりから生まれる。実務的・事務的なコミュニケーション以外での交流がほとんどない場合、職場は機械的なものになる。役職を超えて互いを知り合っているチームは、より多く笑い、より良く協働する傾向にある。
テクノロジーの過剰負担
延々と続くビデオ会議、メールのやり取り、チャットメッセージは、人々がより自然に交流するときに生まれる人間的なエネルギーを消耗させる。Zoomで「ミーティングを終了」をクリックして、「うわ、楽しかった」と思ったのは、いつが最後だろうか。非公式な会話や自発的なやり取りの瞬間がなければ、仕事は味気なくなってしまう。
仕事に楽しさを加えると、魔法が起こる
楽しさは、人々が安心し、つながりを感じ、人間らしくあることを許されているときに、その魔法を発揮する。それが実現すると、幸福とエンゲージメントもすぐ後についてくる。誤解しないでほしいのだが、ここで言っているのは楽しむための楽しさではないし、組織のミッションに集中する代わりに会議中に『ブリジャートン家』のエピソードを観るような話でもない。必要なのは、私たちの働き方や価値提供の方法に楽しさを取り込む工夫だ。それを実現できれば、仕事は多方面で好転する。
楽しさはポジティブな感情を生む
職場での幸福は、ポジティブな感情体験と強く結びついている。そうした瞬間が、仕事の一日の体験を変えていく。仕事が純粋に取引的でストレスに満ちたものと感じられる代わりに、活力を与えてくれるものになり始めるのだ。ポジティブ心理学の研究では、ポジティブな感情が思考を広げ、創造性を高めることが示されている。
楽しさは人間関係を強くする
共に楽しむことは、社会的な絆を生む。一緒に笑ったり、小さな勝利を祝ったり、気軽な活動に参加したりすることが、信頼とつながりを築く。従業員エンゲージメントに関するギャラップの調査でも、職場に友人がいることが、エンゲージメントと幸福度を大きく高めることが一貫して示されている。
楽しさはストレスを軽減する
仕事には必然的にプレッシャーや締め切りが伴う。「楽しむことと笑うことは、2つの強力なストレス軽減法である」と、ストレスコーチのジョーダン・フリードマンは言う。「笑いや非公式なやり取りを含む短い休憩を定期的に取ることで、緊張が和らぎ、気分が向上する」
楽しさはエンゲージメントを高める
職場環境が遊び心や好奇心、創造性を発揮する瞬間を後押ししているとき、人々は疲弊するのではなく、主体的に関わっていると感じやすくなる。エンゲージメントの高い従業員は、自分の仕事に対してより強いオーナーシップ(当事者意識)を持つ。彼らはアイデアを提案し、会議(バーチャルなものも含めて)に積極的に参加し、組織に対して感情的な愛着を抱くようになる。
楽しさは帰属意識を高める
楽しさが強制されたものではなく、組織のアイデンティティを反映するものであれば、従業員は自分がそこに属していると感じられる。真のリーダーは、帰属意識を育むことがチームの結束の鍵であることを知っている。チームの成功を祝うこと、ストーリーテリング、遊び心のある儀式、創造的なコラボレーションは、なぜ人々が共に働くのを楽しんでいるのかを思い出させてくれる。
他の人にとって仕事を楽しくする人になろう
ここからは、あなた自身の話になる。仕事に楽しさを持ち込むことを、自分に許してあげよう。最も退屈で、面白味がなく、エネルギーを奪い、魂を削るようなタスクを取り上げ、そこに創造的に楽しさを組み込んでみよう。それはあなた自身と、関わるすべての人に配当をもたらす挑戦になる。バーチャル会議のような、他者と一緒に取り組む活動に焦点を当てよう。会議は、最も強力なブランド構築の場のひとつだ。ほぼ全員が参加し、勤務時間の大部分を占める。それなのに、あまりにも退屈で、事実上全員が会議中にマルチタスクをしている。しかし、Zoom会議が仕事と並行して遊びが起こる場になれば、参加者は実際に身を乗り出し、注意を払うようになるかもしれない。会議に楽しさを持ち込むためのアイデアをいくつか紹介しよう。



