もし私がすべてのCEOにひとつだけ質問できるとしたら、こう問いかけるだろう。「自社は本当は、何のビジネスをしているのか?」シンプルな質問に聞こえるが、AIが瞬く間に業界を塗り替え、競争優位性がかつてないほどの速さで失われる時代において、これはリーダーが答えるべき最も重要な戦略的質問かもしれない。
数年前、ラルフ ローレンのパトリス・ルーヴェCEOは、創業者のラルフ・ローレンに、同社が本当はどのようなビジネスを行っているのかを尋ねた。ラルフの答えはファッションではなかった。アパレルでも、小売でもなかった。彼の答えはシンプルだった。「私たちは夢を売るビジネスをしている(We're in the dream business)」
その答えは、単なる哲学にとどまらないものとなった。同社が行うすべての意思決定における戦略的なフィルターとなったのだ。ラルフ ローレンは、守るべき夢を補強しないチャネルや製品、パートナーシップから撤退することで、約10億ドル(約1580億円)の売上を手放した。それほどの売上を手放すのは容易なことではないが、あらゆる機会を追い求めることよりも、夢を守ることの方が重要だった。
それこそが戦略の本質である。何をするかを決めることだけではない。何をしないかを決める規律を持つことだ。あまりに多くの企業が、自社を販売する製品によって定義している。そうすると、成長は次の機能、次の買収、次の市場を探し続ける終わりなき営みになる。製品は進化する。だが、自社が本当に属しているビジネスは変わるべきではない。
リーダーにとって、この質問を見失うことは容易だ。四半期ごとの目標、製品ロードマップ、競合からの圧力、そして絶え間ない変化のペースに、日々追われることになるからだ。時間が経つにつれ、企業は自社のパーパス(存在意義)を明確にする代わりに、製品の最適化に習熟していく。その結果、短期的には成功しているように見えても、長期的には一貫性を欠いた成長になってしまう。
存続し続ける企業は、この質問に答えている。ディズニーは映画ビジネスではなく、イマジネーション(想像力)ビジネスを行っている。ナイキはシューズビジネスではなく、人間の可能性を広げるビジネスを行っている。アップルはハードウェアビジネスではなく、シンプリシティ(簡潔さ)ビジネスを行っている。アマゾンは小売ビジネスではなく、利便性のビジネスを行っている。彼らにとって製品とは価値を届けるための手段であり、価値そのものではない。
この違いが、今日ほど重要になったことはない。AIがイノベーションを加速させるなか、製品や機能はかつてないほど模倣しやすくなっている。競争優位は、何を作るかから、そもそも顧客がなぜその企業を選ぶのかへと移りつつある。
自社が本当は何のビジネスを行っているのかを知ることは、戦略的な羅針盤となる。これにより、リーダーはどの機会を追求すべきで、どれがブランドを希薄化させるかを判断できるようになる。従業員の意識を共通のミッションに向けさせ、単にタスクをこなすだけでなく、理解したパーパスを推進できるようになる。顧客には一貫した体験を提供し、投資家には市場が進化するなかでなぜその企業が重要であり続けるのかを理解させる助けとなる。
あらゆる組織が、この質問を投げかけることで恩恵を受けることができる。もし製品が変わるたびに答えが変わるようであれば、自社を狭く定義しすぎている可能性が高い。しかし、テクノロジーの転換、市場のサイクル、製品の進化を経てもなお、その答えが変わらないのであれば、製品よりもはるかに価値のあるものを見つけたことになる。あなたはパーパスを見つけたのだ。
次の戦略会議、企業買収、あるいは製品発表の前に、ひとつのシンプルな質問を自分に投げかけてみてほしい。「自社は本当は、何のビジネスをしているのか?」その答えはブランドを定義するだけでなく、どこに投資し、何を諦め、どのようにイノベーションを起こすか、そして最終的には、変化する世界のなかで自社が価値を持ち続けられるかどうかを決定づけるだろう。



