つまり、形質の多くは、背後にあるメカニズムから生まれた副産物だというのだ。眠りに落ちる前に起きるけいれんも、単に入眠時の神経系の引き継ぎがうまくいかなかったことによって生じる、しゃっくりと同様の「ノイズ」であり、設計されたわけではないのかもしれない。
さらに、他の動物との比較の問題がある。犬や猫など、樹上で生活する習慣を持たない哺乳類も、みな入眠時に体がピクッと動くことがある。この現象で働く反射神経が、枝をつかむために発達しているのだとしたら、この現象と樹上生活とのあいだには、もっと密接な関連性があるはずだ。
入眠時けいれんは基本的に無害だが、注意を払うべきケースも
入眠時のけいれんは、体が睡眠に向かおうとしているにもかかわらず、脳を覚醒させるシステムが活発に動き続けている場合に、より頻繁かつ強烈になる。具体的には、夜の遅い時間のカフェイン摂取、ストレスの高い状態、睡眠負債の蓄積、就寝時間が間近になってからの激しい運動などが覚醒要因となる。
このようなパターンは、入眠時に二つの系統のあいだで引き継ぎが行なわれている、というモデルで考えるとわかりやすい。二つの系統が競合する度合いが高くなると、移行時の混乱がより激しくなるということだ。
それでも入眠時けいれんは、基本的には健康への害はない。医師に相談するべきなのは、これとは異なるタイプの体の動きだ。すなわち、寝ているあいだや、昼間の時間帯にもけいれんが継続的に起きる場合や、ケガをするほどの激しい動き、あるいは、体が動いた後に意識が混乱したり、方向感覚を失ったりする場合だ。
これらの症状がある場合は、通常の入眠時けいれんではなく、むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害、あるいは、発作性疾患が起きている可能性がある。
入眠時けいれんが見せているのは、いわば睡眠という行為に存在する「継ぎ目」だ。実際に体験している側から見ると、眠りは、一つのまとまった事象のように見える。だが実際には、体の制御権をやりとりする複数システムの連携が、そこには働いている。眠りに向かうなかで、片方のシステムが、ほんのわずか先走りして、受け手システムの準備が整う前に制御権を手放してしまうこともある。体がビクッと動くのはそのためなのだ。


