NEWS Forbes JAPAN MEMBERSHIP 新機能|
記事ページ内の広告表示を最小限にしました

欧州

2026.08.07 17:00

米・ウクライナの防空がともに試練に パトリオット枯渇に直面、原因と対策は「非対称戦」

ウクライナの首都キーウのダルニツィキー地区で2026年7月2日、ロシアによる大規模なミサイル攻撃で甚大な被害を受けた集合住宅を視察したゼレンスキー大統領(中央)ら(Hennadii Minchenko/ Ukrinform/Future Publishing via Getty Images)

米国はPAC-3の追加調達を急いでいる。米陸軍の2027年度のミサイル予算ではPAC-3が圧倒的に最大の項目となっており、調達計画数は2798発、総額で120億ドル(約1兆9000億円)超にのぼる。

advertisement

最新の数字によれば、PAC-3 MSE(ミサイル部分強化型)の価格は1発あたり498万7857ドル(約7億9000万円)する計算になる。こうした高コストは、パトリオットの備蓄を十分に増やせない大きな理由のひとつになっている。製造元の米ロッキード・マーティンは最近、「ACE(Adapted Capability Effector)」と名づけた低コスト版PAC-3を発表した。価格は通常型の半分ほどに抑えられるというが、性能面にどのような違いがあるのかは現時点で不明だ。

国防総省は、パトリオットの生産を迅速に拡大させようと奔走している。しかし、それだけでは当面の不足を解消できないだろう。イランとの紛争が続けば備蓄はさらに減り、中東地域の同盟国やパートナー国も自国の防衛のため、パトリオットをもっと供与するよう求めている。さらに、紛争初期のような高強度の戦闘が再び起これば、備蓄は数週間のうちに危機的な水準に落ち込むおそれがある。

そして、CSISが指摘するように、パトリオットの備蓄減少は「西太平洋で中国との戦争に備える米国の即応態勢に短期から中期のリスク」ももたらしている。つまり、比較的小規模な紛争で勝利しても、その紛争の影響によって、将来はるかに重大な紛争で敗北する危険性が出てくるということだ。

advertisement

こうした状況にドナルド・トランプ米大統領が不満を抱いているのは間違いない。最近では、ミサイル不足をめぐってピート・ヘグセス米国防長官と衝突したとも伝えられる。もっとも、米国には莫大な財政リソースがあり、イランとの紛争も国の存亡がかかったものではない。したがって、問題は時間をかければ解決できるかもしれない。

矢ではなく射手を撃つ

ウクライナは自国で弾道ミサイル用迎撃ミサイルの開発を進めると同時に、パトリオットミサイルのライセンス生産も目指している。だが、やはりこれらも現在の問題をすぐに解決できるものではなく、より直接的な対策が必要とされている。パトリオットのような従来の高性能・高価格の「精巧な」兵器は、答えではないかもしれない。

ゼレンスキーは今週、“矢ではなく射手を撃つ”ことにあらためて注力する考えを示した。

「われわれの軍は、ウクライナとその重要インフラ、民間人に対する攻撃を減らすためには、敵の発射機を破壊しなければならないことを理解しています。軍はそれに取り組んでおり、今後も継続していきます」とゼレンスキーは国家安全保障国防会議で述べ、ロシアのミサイル発射機を破壊していくことで、ウクライナの都市に対する攻撃の軽減を図っていく方針を明らかにした。

次ページ > 難しい目標であるイスカンデル発射機をどうたたくか

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事