スタンフォード大学の科学者らが、自然界のDNA構造のパターンを認識し、それを書き換えてこれまで見たことのないウイルスゲノムを作り出すよう生成モデルを訓練した結果、AIが新種の細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)を十数種類も生み出したことが分かった。
大腸菌に感染した16種、自然界にない配列を備えていた
米国時間8月6日に科学誌『サイエンス』で発表された研究論文の中では、研究者らが「Evo」と名付けた生成モデルを訓練し、完全に機能するウイルスゲノムをゼロから設計することに成功した経緯が説明されている。
言語モデルが大量のテキストデータで訓練されるのと同様に、科学者らは数百万のゲノムからなる膨大なDNAデータを使ってEvoを訓練した。その結果、AIモデルは自然界のDNA配列を形成する進化上の制約を学習し、新たなウイルスの「独自レシピ」を書き上げた。
このAIによって設計されたレシピを使って生成されたバクテリオファージのうち、16種類が実際に大腸菌への感染に成功した。中には、細菌が本来持つ耐性メカニズムを見事に打ち破るケースも確認された。
また、この新種のウイルスは自然界に存在するいかなるものとも異なる配列パターンを持っていた。
人間の病原体に関するデータセットは訓練から除外
研究の著者らは、人間の病原体に関するデータセットを訓練から除外していたため、作り出されたウイルスは人間に感染する能力を持ち合わせていない。しかし今回の結果は、AIがいつの日か新世代の生物兵器の製造に利用されるのではないかという、科学者らの間で高まりつつある懸念に拍車をかけるものとなった。
抗生物質が効かない細菌の治療における可能性
その一方で、新たなウイルスを生み出すことができるこのAIの能力は、抗生物質が効かないスーパーバグ(超多剤耐性菌)の治療におけるブレイクスルーにつながる可能性も秘めている。特定の細菌を標的とするウイルスを自然界から探し出す代わりに、科学者自身がオーダーメイドの治療法を生み出せるようになるためだ。



