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経営・戦略

2026.08.07 08:38

優秀な社員をマネージャーに昇進させることが、なぜ組織を壊すのか

Adobe Stock

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最近、コーチングのクライアントの一人と話していた際、彼女が職場で起きた驚くべき現象を教えてくれた。

ニコール(仮名)は、個人として成果を上げる担当者の立場から、マネージャーを飛び越えていきなりシニアディレクターに昇進した。しかし、彼女にはマネジメントやリーダーシップの経験がまったくなく、何の研修も受けていなかった。

もちろん、彼女の上司は悪意があって昇進させたわけではない。ニコールの可能性を信じ、同じ勤勉さと高いパフォーマンスをチームでも発揮できると考えたのだ。しかし、ニコールは苦戦していた。

だが、このような状況はニコールに限ったことではなく、目新しい話でもない。さまざまな組織で長年にわたり見られてきた現象である。

実際、2018年に世界経済フォーラム(WEF)が実施した調査では、マネジメント職に昇進した約1500人の営業プロフェッショナルが分析された。想像に難くないが、高業績者の多くには昇進の機会が強く与えられていた。

しかし、彼らがマネジメント職に押し上げられると、チームの営業成績が約7.5%低下することと相関していた。逆に、高い協働経験やスキルを持つプロフェッショナル(一部は個人としての営業成績が振るわない者もいた)は、より優れたマネージャーとなり、チーム全体のパフォーマンスを高め、基準を引き上げていた。このことは、個人の業績のみに基づく昇進が組織に悪影響を及ぼし得ることを示している。

同じ年、テキサス大学オースティン校マコームズ・スクール・オブ・ビジネスによる別の研究でも、優秀な個人担当者であることを理由に昇進した人物は最悪のマネージャーになる傾向があり、アウトプットが28%低下、利益が33%減少することが確認された。これは「ピーターの法則」として知られている。

業績に基づく昇進が組織を損なう

従業員を業績データだけを根拠に昇進させると、次のようなことが起きる。

まず、有害な職場環境が定着する。なぜなら、そうした社員は時代遅れのリーダーシップ手法に頼りがちであり、現在や過去の上司が見せてきたやり方をそのまま模倣する可能性が高いからだ。

そもそもリーダーシップ・パイプラインにいるべきでない人物を送り込むことにもなる。彼らにとって重要なのは、成果を上げること、売上目標を達成すること、顧客を獲得することであり、部下を心から気遣い、共感力や感情的知性(EQ)をもって導くことではないからだ。

さらに、彼らを混乱の渦に陥れることになる。彼らが知っているのはKPIを達成し、超過することだけであり、マネジメントとリーダーシップはまったく未知の世界だからだ。誰も語ろうとしないが、彼らは以下のような浮き沈みをどう乗り越えていいか分からないのだ。

  • チーム内の緊張や対立に対処し、コントロールすること
  • 変化の時期にプレッシャーの下でリードすること
  • 難しい対話を行うこと
  • 才能を見極め、育てること
  • 長期的で大局的な思考を持ちつつ、実務にも深く関与しながら高い視座を維持すること
  • 上司をマネジメントすること(マネージング・アップ)
  • そのほか、研修を受け、昇進前に適切なスキルを実践し、昇進後にさらに学び、失敗する余地を与えられて初めて身につく多くの領域

私自身、キャリアのごく初期、かつ非常に若い時期にマネジメント職に昇進した。最初の昇進は21歳になったばかりの頃で、その役割に就いてから4カ月も経たない時期のことだ。担当業務で常に高いパフォーマンスを上げていたためだ。加えて、チームメンバーへのメンタリング、率先した行動、課題の発見と解決策の創出、部門内での他メンバーへのトレーニングなど、リーダーシップスキルも発揮していた。

幸運にも、私には可能性を信じてくれる経営陣と上司がいた。特に私の上司は単なるチームマネージャーではなく、認定コーチでもあったため、私が成功できるよう、骨身を惜しまず育成やメンタリングを行ってくれた。そのおかげで、わずか5カ月後に社内でより上位のマネジメント職に昇進した。これが可能だったのは、会社が業績だけで私を昇進させたのではなく、すでに発揮していたリーダーシップスキルに基づいて昇進させてくれたからだ。さらに、上司から実践的なリーダーシップコーチングを受けることもできた。

その反面、しばらく経ってから別の会社でより高い役職に就いた際、そこの経営陣は私に対して非常に短気であり、私は大きなミスを犯してしまった。その役職に適応するための育成を受け、同じレベルの実践的な研修やメンタリングを受けていれば、そのミスは容易に防げたはずだと後になって気づいた。

結局、直属の部下と上級経営陣の双方から極めて有害な環境が作られてしまい、私はその職を離れた。

私が言いたいのは何か。

優秀な社員というだけで、安易に昇進させたりリーダーとしての責任を押し付けたりしてはならない。売上目標を上回ることが、強い雇用主ブランドやポジティブな職場文化に直結するわけではないからだ。特にリーダー候補の層が薄い場合には魅力的な選択肢に見えるかもしれないが、長期的に見れば組織に損害を与えることになる。

代わりに、以下の点に注力すべきだ。

代わりに取るべきアプローチ

社員にリーダーシップの素質があるかを評価する際は、感情的知性(EQ)を重要な基準として強く考慮する必要がある。

  • 人の話をよく聞いているか
  • 対立にどれほどうまく対処できるか
  • チームメンバーのコーチングやメンタリングを行っているか
  • システム思考のアプローチを持っているか
  • 自分が常にスポットライトを浴びていなくても、他者の勝利や成功に喜びを感じられるか
  • プレッシャーの下でも回復力(レジリエンス)を発揮できるか
  • 他者を育てることにどれだけ注力しているか

加えて、初めてマネージャーになる社員には、しっかりとしたコーチングとメンタリングを組み合わせて提供することが重要だ。

そして最後に、トップパフォーマーが必ずしもリーダーになる必要はないと認識することだ。高い成果を出す社員だからといって、キャリアアップの次の段階として昇進が当然の選択肢であるとは限らない。

組織内で横移動をしたり、ピープルマネジメントの責任を持たずに専門家やスペシャリストになったりする方が、より幸せで高い価値を発揮できる人もいる。

将来のマネージャーをどのように見極め、支援するかを再考すべきだ。

そして忘れてはならない。Z世代が次々と労働市場に参入している。現在マネージャーを務めているのはミレニアル世代だ。10年後にはZ世代が労働力の過半数を占め、未来のリーダーやマネージャーになる。

今、リーダーシップとマネジメント育成にどう取り組むかが、10年後あるいはそれ以上先の組織のあり方を左右するのだ。

forbes.com 原文

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