自社チップでも、資金はブロードコムとTSMCへ流れる
いわゆる「エヌビディアからの脱却」という枠組みが見落としていることがある。自社チップを設計するAI開発企業は、業界のチップ層から支出を引きあげるわけではない。同じ層の内側で支出を再分配するだけだ。
設計は、ASIC(特定用途向け半導体)の専門知識を持つ誰かによって物理的な部品へと落とし込まれる必要がある。まさに、ブロードコムが積み上げてきた事業そのものだ。アクセラレータ・クラスターを統括するCPUは、CPUはArm系アーキテクチャーで動く比率が高まっており、Armは今や、他社の設計に対してロイヤリティを徴収するのではなく、完成したプロセッサをハイパースケーラーに販売している。
チップ群は高速スイッチング機器で束ねる必要がある。そして最後は、すべてがTSMCで製造される。どのAI開発企業がどんなカスタムシリコン計画を立ち上げようと、チップの設計・接続・製造を生業とする同じ数社を必ず経由するのだ。
アマゾンとグーグルは何年も前に信頼に足るアクセラレータを構築したが、それでもエヌビディア製品を買い続けてきた。この地位を支えているのは、業界全体がすでに書き慣れているソフトウェアと、数万個のチップを1台のマシンのように振る舞わせる相互接続技術だ。その下には、CUDAを標準として扱う既存ユーザー基盤が横たわっている。Anthropicが自社チップチームの発表と同時に、今後も使い続ける調達先としてエヌビディアの名を挙げたことこそ、今回の発表で最も雄弁な細部である。。
AI開発企業によるカスタムシリコンは、トークン価格に照準を合わせたコスト削減策だ。業界のコンピューティング能力は、依然として昨年と同じ供給元からやって来る。
これを決着させる要素は具体的だ。Anthropicが実際に自社チップの設計を完成させ、製造工程へ回す日が来るのか。サムスンや他社が最終的に製造するのか。2027年に届くTPU容量が、Anthropicのトークン単価をどう動かすのか。それが判明するまでAnthropicは、財務が許し、成長が求めることをやり続ける。すなわち、売ってくれる相手全員からコンピューティング能力を買いながら、いずれ買う量を減らす手助けとなる人材を雇うのである。
AIインフラ増強は、「チップの外部調達から脱却する企業」を報じるニュースを生み続けている。それでも資金は、変わらず既存の半導体企業へ流れ込み続けている。


