Pro優先や割賦拡充、コスト吸収など打ち手はまだ残る
もっとも、ここまで追い込まれてもなお、アップルには対抗する手段が残っている。これほど多くの選択肢を持つハードウェア企業はほかにほとんど存在せず、アップルはその大半を実行に移すはずだ。具体的には次の3つである。
・値上げしても買い手が離れにくいProおよびUltraモデルに不足しているメモリーを優先的に振り向け、標準版iPhoneを待たせる
・割賦や下取りプログラムを厚くし、高くなった店頭価格を月々の小さな支払いへ変える
・需要を守るため値上がり分の一部を自社で吸収する。9月期の利益率見通しは、すでにこれを織り込んでいる
1つ目は四半期の数字に実際に効く。供給が足りない分だけ秋の販売が高価格のProやUltraへ偏れば、売れる製品の構成は利益が出やすい方向へ変わる。1台あたりの製造コストがかつてなく重くなる、まさにその時期にである。台数は計画より減り、平均販売価格(ASP)は上がる。それはアップルが描いた発売計画より悪い結果であるものの、同じ不足に直面している競合他社に比べれば、はるかに好ましい結果をもたらす。
入門機クラスのPCが消え、価格決定権は供給側へ移る
アップルのような強固なバランスシートや価格決定力を持たない企業は、クッション(緩衝材)もないまま同じコスト上昇に直面することになる。
米調査会社ガートナーは、500ドル(約7万9000円)未満の入門PC市場が2028年までに消滅すると予想する。この価格帯には、現在のメモリー価格を吸収できる利幅がもう残っていないからだ。世界電子機器協会(GEA)の調査では、62%の電子機器メーカーがすでに調達難や納期長期化に直面している。台湾の業界メディアDigiTimesは、メモリー各社が2027年分の生産枠を売り切ったと報じており、締め付けは今回の製品サイクルをはるかに越えて続く。
価値(主導権)はサプライヤー側に移行しつつある。マイクロン・テクノロジー、サムスン電子、SKハイニックスは、AI分野の顧客とコンシューマー機器メーカーが同じウエハーを巡って争う市場で価格設定権を握っており、AI分野の顧客の方がより高い価格を支払っている。
過去最高の6月期でも株価は約5%下落、焦点は9月の利益率
アップルは会社史上最高となる6月期決算(第3四半期)を発表したばかりだ。売上高は1094億ドル(約17兆2852億円)に達し、iPhoneは22%近い増収だった。それでも株価は、その後に示された業績見通しを受けて約5%下落した。市場が織り込み直したのは利益率である。9月にはジョン・ターナスがCEOを引き継ぐ。折りたたみ型が出荷され、メモリーの請求書が届くのと同じ数週間にだ。の議論に決着をつけるのは、9月期の売上総利益率が実際にどこへ着地するかである。アップル自身がすでに46.5%という見通しを示しており、実績がこの水準を守れるかどうかで答えが出る。
アップルはこれまでで最も高い代金をメモリに支払い、それでもなお、1台あたりの利益は業界のどの競合他社よりも多く稼ぐだろう。この差こそが、同じDRAM不足でありながら、アップルにとっては「問題」にとどまり、アップルより小さいすべての企業にとっては「脅威」となる理由のすべてである。


