中国CXMTが値引きに応じず、第2サプライヤー戦略が崩れる
アップルは20年にわたり、サプライヤーとの価格交渉を同じ型で処理してきた。第2の調達先(セカンドソース)を認定し、その存在を突きつけて既存サプライヤーに値下げを迫るやり方だ。この型は有機EL(OLED)パネルで機能し、どのメーカー製でも大差がないとみなされるコモディティ(汎用品)る部品でも繰り返し効果を上げてきた。
アップルは2026年、メモリーに対してもこの戦略を実行したが、それが公の場で頓挫することとなった。アップルは数カ月をかけ、中国が国を挙げて支援するメモリメーカーCXMT(長鑫存儲技術)製DRAMをテストした。サムスン電子とSKハイニックスに交渉へ応じる理由を与える狙いは明白だった。
だがCXMTは「安い代替役」を演じることを拒み、韓国勢と同等かそれ以上の価格をアップルに提示した。米国の輸出規制でCXMTはEUV(極端紫外線)露光装置を使えず、同じ産出量を得るのに約30%多くウエハーを投入しなければならないため、安値で切り込むことはそもそも不可能だ。しかもファーウェイとシャオミが生産能力の大半をすでに契約で押さえており、CXMTにはアップルに無理に対応する商業上の理由が何もなかった。
中国のメモリー生産を遅らせるために作られた輸出規制が、結果として韓国企業の価格設定を牽制できたかもしれない唯一のサプライヤーを排除してしまったのだ。アップルは現在、他に行き場がないことを知っている2社のベンダーと交渉を行っている。しかも、そのベンダーたちが製造可能なすべてのウエハーをAI関連の顧客に売りさばいている最中での交渉だ。
メモリー高が粗利益率を圧迫、在庫は約1兆7522億円へ膨らむ
ティム・クックは、この件について異例ともいえる率直な発言をしてきた。彼は6月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、価格の上昇は避けられず、メモリーとストレージのコストは持続不可能なレベルに達していると語った。40年以上のキャリアの中で、このような状況は見たことがないと彼は述べた。アップルはその月、MacとiPadの価格を引き上げた。
クックは、CEOとして最後となった決算発表(7月30日)の電話会見で、同社は「やむを得ず価格を引き上げた」と認め、こう続けた。
「我々は、メモリー価格が指数関数的に上昇するという、いわば100年に1度の大洪水のような事態に直面している」。
この言葉の背景にある利益率の計算こそ、注目すべきポイントだ。CFO(最高財務責任者)のケヴァン・パレクはアナリストに対し、整後売上総利益率が3月期の49.3%から6月期には48.1%へ下がったと説明し、9月期は46.5%になるとの見通しを示した。メモリー価格の上昇は、この両期間における売上総利益率の低下幅のすべてを説明して余りある。つまり、他のあらゆる要素がアップルにとって有利に働いていたにもかかわらず、メモリーのコスト高が全体の数値を押し下げたということだ。
調査会社テックインサイツの推計によると、256GBモデルの「iPhone 17 Pro」の部材コストのうち、メモリーとストレージが占める割合は約9%だったが、「iPhone 18 Pro」では約27%に達する見通しだ。アップルは在庫をほぼ倍増させ、110億9000万ドル(約1兆7500億円)とした。アップルはかつてないほど多くiPhoneを売りながら、売り上げのうち利益として残る割合は下がっている。そして価格が再び跳ね上がる前に、買えるだけメモリーを買い込んだのである。


