視点4:将棋AIが証明した、「悪手」の中に眠る最適解
1997年にディープ・ブルーがチェス王者を破って以来、AIはボードゲームで人間を超え続けてきた。興味深いのは勝敗そのものではない。プロ棋士たちはAIとの研究でむしろ強くなり、かつて「悪手」とされた戦法が再評価された。AIは定石の外側に眠る最適解を提示したのである。形勢を数値化する「AIスコア」は観戦文化まで変えた。そしていま、棋士がAIと日々「壁打ち」するように、コンサルタントもエンジニアもAIと仮説を検証する時代が到来した。これは企業活動にも当てはまる。私たちが「悪手」として避けてきた戦略も、深いデータと探索力で見直せば「実は最適解」かもしれない。常識を信じるか、データで検証するか——固定観念に捉われない妄想する勇気が問われている。
視点5:コンピュータは「時間の加速器」から「時間の増幅器」へ
コンピュータは計算や取引を高速化する「時間の加速器」として進化してきた。株式取引はいまやマイクロ秒の世界だ。しかしデジタルツイン、メタバース、そしてAIエージェントの登場により、その役割は「時間の増幅器」へと変わりつつある。自分のアバターに大学講義の大半を任せ、質疑応答だけ本人が担えば、単純計算で数倍の講義を並列提供できる。複数のAIエージェントに業務を委ね、成果を統合する働き方は、もはや思考実験ではない。複数の世界で同時に自分が活動する——マルチバース的世界観を「理解できる世代」として、この共通概念の先に何が必要になるかを構想する力こそが、次の産業を生む起点となる。
波に押し流されるか、波の形を先に読むか
五つの視点は、一つの問いに収束する。「既存の前提に縛られず、どれだけ先の未来を描けるか」。常識が非常識に反転する変化の波に押し流されるか、波の形を読んで先に乗るか。それを決めるのは、技術力よりも先に「未来を想像する力」と「ありえない未来を妄想する力」なのである。


