ある航空機部品サプライヤーが、何年も待ち望んでいた朗報を受け取ったとしよう。次世代ジェット機に関する巨大契約の獲得だ。このプロジェクトは、赤字から黒字への転換に必要な特効薬となる。だが問題がある。そのメーカーには、この案件をこなせるだけのエンジニアが十分にいないのだ。海外に業務を委託するか、納期を引き延ばすかしかない。
人材ボトルネックという問題
この話は架空のものだが、描かれているジレンマは非常に現実的だ。需要を満たすだけの熟練したアメリカ人エンジニアは、単純に足りていない。
航空宇宙分野は、この人材不足を痛感している。「『当協会の法人会員からは、将来の雇用を埋めるだけの人数が工学を学んでいないとの声が寄せられている』と、世界最大の航空宇宙専門技術者団体AIAAで収益開発・法人会員担当シニアディレクターを務めるビッキー・シンガー氏は話す」とAerospace Americaは報じている。
同誌によれば、有能なエンジニアの層はコロナ禍後に縮小した。高齢の労働者や管理職が現在の役割から退くにつれ、人材流出はさらに激しくなると見込まれている。
ジェフ・イメルト氏はこの衰退を間近で見てきた。ジャック・ウェルチの後を継いだゼネラル・エレクトリック(GE)の元会長兼CEOとして、彼はエンジニアリング企業が国内産業を稼働させ続けるのに必要な最高の才能を採用・維持できた時代を振り返ることができる。もうそれはできない、と彼はインタビューで筆者に語った。
New Enterprise Associates(NEA)のベンチャーパートナーであるイメルト氏は最近、産業チーム向けのエージェント型AIエンジニアリング・スタートアップであるP-1 AI, Inc.の取締役に就任した。同社はシリーズAラウンドで5000万ドルの初回クロージングを発表したばかりだ。筆者はイメルト氏と、エアバス元CTOでP-1 AI共同創業者兼CEOのポール・エレメンコ氏に、資本・技術・人材への投資が米国のエンジニアリング基盤をいかに再起動できるかを聞いた。
イメルト氏とエレメンコ氏はともに、誤ったインセンティブが問題の一因だと指摘する。エレメンコ氏は文化的要素も働いていると見る。「社会として、我々はソフトウェアエンジニアリングこそが本命だと言ってきた。機械工学、電気工学、航空宇宙工学、産業工学は、魅力的な分野として称えられてこなかった。だからSTEM志向の子どもたちは、物理的な形のエンジニアリングよりもソフトウェアを選んだ。結果として、国として産業労働力で遅れを取っている」。言い換えれば、米国はモノを作る人材を生み出すことをやめてしまったのだ。
ここで人工知能の出番となる。
AIは代替ではなくチームメイト
P-1 AIは、機械・電気・熱・システム設計を担うエージェント型AIエンジニア「Archie(アーチー)」の形で、人間チームと機械の知能を結びつけることによって国内生産を復活させられると信じている。エレメンコ氏はArchieをソフトウェア製品というより採用する人材のように表現する。「一般的に、エンジニアリングチームは5~10人で構成される」と彼は説明した。「私たちの仮説は、1チームに1人のArchieがいるべきだというものだ。チーム全員がArchieであるべきだとか、半分がArchieのチームにすべきだと言っているわけではない。Archieは各チームの若手メンバーなのだ」
「エンジニアのすぐ隣に技術強化ツールを組み込み、横並びで作業を進めることで、より速く、より経済的に行うという考え方は、企業が製品設計を考える際のワークフローに合致している」とイメルト氏は付け加えた。
目標:少ないリソースでより多くを
P-1 AIはデータセンター工学、自動車、航空宇宙・防衛に焦点を当てているが、AIが人間の労働者の上に知能の層を提供するという全体的な発想は、筆者の最近のForbes記事とも重なる。そこでは、エージェントが倉庫の生産性、特に収益性に不可欠でありながら非常に時間を要する工場見積プロセスの効率化にも貢献できることを解説した。
ここには、筆者の最近の別の報道にもつながるもう1つの要素がある。筆者がマイクロエンタープライズ・モデルと名付け、ほかならぬGEにも適用した概念だ。この巨大企業が圧倒的な存在感を示していた20世紀には、規模が力の代理指標だった。雇用する人数が多ければ多いほど、組織は複雑な業務を遂行する能力を高めた。
エージェント型AIは、Archieが示すように、この計算式を変える。2020年代には、上述の架空の航空機企業のような会社は人材不足に苦しむ必要はない。むしろ明日のエンジニアリング組織は、AIチームメイトによって人間の知見を強化できる。「P-1 AIはエンジニアが協働する自然な形に溶け込むことで、サイクルタイムを短縮し、競争力を高め、ミッションクリティカルな環境で測定可能な成果をもたらすことができる」とイメルト氏は今回のラウンド発表の声明で述べた。
恩恵を受けるのは製造業だけではない
このように人間の生産性を倍増させる先例は、すでに見えている。人材不足に苦しむのはエンジニアリングだけではない。「建設サービスへの需要を満たすため、建設業界は2026年に推定34万9000人の純新規労働者を確保する必要がある」と、Associated Builders and Contractorsの独自モデルを引用してLBM Journalは伝えている。すでに市場では、Archieの「職人のチームメイト」モデルに似たソリューションがいくつか存在する。BuiltWorldsによれば、Drawer AIは電気工事業者を支援し、「機器のカウント、分岐配線、電線サイズ選定」などの項目を扱い、「数分で詳細な数量報告書とレイアウトを作成」する。
同様に、米国が看護師不足に苦しんでいることはよく知られており、多数のベビーブーマーが医療サービスを必要とするにつれ、この不足は悪化していく見通しだ。病院はギャップを埋めるため、同じような人間と機械の融合を実現するAIスクライブ(記録支援AI)を導入している。
American Hospital Associationによれば、「JAMA誌に最近発表された研究では、AI搭載のアンビエントスクライブが5つの学術医療センター全体で電子カルテ(EHR)合計時間を13.4分、記録時間を16.0分ほど適度に削減したことがわかった。この研究の対象施設は、EHRシステムとしてEpicを利用しつつ、Ambience、Nuance Dragon Ambient eXperience(DAX)Copilot(Microsoft Dragon Copilotの前身)、および/またはAbridgeを活用していた」という。
製造業を国内に取り戻す
米国のエンジニアリング国内回帰という課題に戻ると、イメルト氏はAIチームメイトの恩恵によって将来を強気に見ている。「過去数十年のアウトソーシングの多くは、賃金の裁定取引だった」と彼は説明した。Archieのようなツールは賃金部分を均等化し、国内で生産する事業性を復活させる。「私が今日CEOであれば、AIのおかげで作りたいものを作りたい場所で作れると確信するだろう。そして最大の市場が米国なら、そこで製品を作りたいと考えるはずだ」
冒頭の物語に登場した航空機サプライヤーや他の企業が、人工知能の層に支えられて仕事を断ったり遅らせたりする必要がなくなるシナリオを思い描くことができる。その未来では、チームは今日のものと同じような姿をしているかもしれないが、それぞれにAIチームメイトがいる。エレメンコ氏は、こうしたハイブリッドが米国のエンジニアリング競争優位の一部を国内に取り戻すと同時に、「メガシティ、ロケット船、宇宙データセンター、そしていずれは恒星間宇宙船を含む物理世界を設計する種としての我々の能力」を拡張できると予測している。可能性は無限だ。



