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サイエンス

2026.08.07 16:00

シャンプー後などに犬が急に走り回る「ズーミーズ」とは何か

stock.adobe.com

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シャンプーされた直後の犬が、すごい速さで走り回ったり、床に体をこすりつけたりすることがある。獣医師や動物行動学者たちはこれを、「Frenetic Random Activity Period(熱狂的なランダム活動期間:FRAP)」と呼ぶ。親しみを込めた「ズーミーズ(zoomies)」という呼び名もある(「疾走する」という意味の「zoom」を使った言葉)。

米コーネル大学獣医学部によると、犬がそうした爆発的な行動をとる場面は、目覚めた直後や、遊んでいるさなか、飼い主が帰宅した時などさまざまだが、とりわけ多いのはシャンプーのあとだという。ここでの問題は、犬が時々興奮することではない。問題は、シャンプーという、いささか不愉快な体験のあとに、犬が全身を使ってエネルギーを発散させることがそれほど多いのはなぜかということだ。

ズーミーズは「転位行動」である可能性

ズーミーズに関する最も有力な説は、動物行動学が誕生した直後に唱えられた概念にもとづいている。動物行動学は、コンラート・ローレンツとニコ・ティンバーゲンが20世紀半ばに確立した分野だ。ティンバーゲンは、1952年に『Quarterly Review of Biology』で発表した研究論文の中で、「転位行動(Displacement Behavior)」という概念を正式に打ち出した。

動物は、葛藤状態に置かれたり、動きを抑制されたり、その場では処理しきれない体験をしたりして、興奮が蓄積されることがある。そして、それをすぐさま発散させる手段がないと、溜まったエネルギーが、まったく関係のなさそうな激しい行動へと置き換えられる。それが転位行動だ。

ブリタニカ百科事典には転位行動の項目があり、動物が、その場の状況を引き起こした原因にはそぐわない行動をとることと、説明されている。神経系の圧力弁が「ぽん」と開くような感じだ。

これにぴたりと当てはまるのが、お風呂場でのシャンプーだ。水を怖がらない犬であっても、足が滑りやすい場所で体を抑えつけられ、いつもとは違う扱いを受け、においや音が、有無を言わさず次々と襲ってくる状況に耐えなくてはならない。そうした刺激のどれもが必ずしもトラウマになるわけではないが、犬は文字どおりその場に留め置かれているので、逃げることができず、興奮状態が続く。

同じ基本的なメカニズムは、2022年に『Scientific Reports』で発表された研究でも示されている。犬は、拘束されたり、不満を感じてイライラしたりすると、ほぼ確実に転位行動を示すことが明らかにされたのだ。とはいえ、こうした行動が、溜まった興奮を発散させているのか、それとも、単に興奮を示しているだけなのかについては、まだ議論が続いている。

体を包んでいたバスタオルが取り除かれ、束縛から解き放たれた瞬間に、蓄積されていたエネルギーの出口ができる。そんな時に「走り回ること」は、犬の体にとって、エネルギーを手っ取り早く放出できる最速の手段なのだ。

次ページ > 「自分のにおいを取り戻す」ためのズーミーズ

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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