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資産運用

2026.08.07 14:15

200年分の資産を稼いでも「幸せのリターン」がないのはなぜ? 入山章栄 × 恵島良太郎「人生のファイナンス思考」対談

事業の資本配分には心血を注ぐが、自分の人生という「究極のアセット」に対する投資戦略については実は無頓着な経営者が多い──。

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ドキッとする人も多いと思うが、限られた時間をどこに何を投下し、いかに高いリターン(幸福)を回収するか、皆さん、考えているだろうか。人生を「ファイナンス思考」で考えるというこの連載の筆者は、恵島良太郎氏。彼は自身の会社売却時に経験した、ファンドによる壮絶な乗っ取り劇を経済小説『闇と闇と光 THIS IS M&A ESSENTIAL(幻冬舎)』として2025年に発表し、話題になった。また、その経験をもとに、その後、M&Aのアドバイザーとして、また、エンジェル投資家として、多くの人に「お金を得た後の生き方こそ大事」と助言する。

人生をファイナンス思考で考え、移住先のマレーシアで家族と暮らす恵島氏が、Forbes JAPANでの連載スタートを記念し、特別に入山章栄・早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授と対談。二人が考える「幸せリターン」をお送りする。

恵島良太郎◎1976年、宮崎県生まれ。大学卒業後、システム開発会社、コンサルティング会社を経て、2004年にROIを設立。覆面調査サービスをリリースし、同社の主力事業へと成長させる。2012年、マレーシア進出を機にクアラルンプールへ移住。現地での進出支援事業および外食事業を開始。2017年に代表を退任し、以降はマレーシアを中心とした海外事業に注力。2018年にはスタートアップスクエアを設立し、SUS投資組合を組成。ショートイグジットを目指すスタートアップ企業への投資・コンサルティング事業を開始する。現在は、M&Aを目指す企業に向けたバリューアップ支援やFAサービスを提供しながら、自身もシリアルアントレプレナーとして複数の事業立ち上げとM&Aを手がけている。

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PL(損益計算書)脳から、人生のBS(貸借対照表)思考へ

入山:私は 日経新聞で書評を書いているのですが、いつも書評の最後の2〜3行は辛口のことを書くことが多いんです。でも、恵島さんの著書『闇と闇と光』だけはむさぼり読んで、絶賛しました。全起業家が読むべき「教典」ですよ、と。

編集部:入山先生がそこまで衝撃を受けたのはなぜですか?

入山: まだM&Aが一般的でなかった時代に、水森という狡猾な人物が仕掛ける巧妙なスキームに嵌められ、恵島さんが絶望の淵に立たされる。これ、ほとんどノンフィクションで、騙す方が圧倒的に強く、そこからの突破劇でいろんなスキームがでてきます。それがめっちゃ面白いし、勉強になります。

恵島: 恐縮です。人生のファイナンス思考を大学の先生にお話するのは恥ずかしいのですが、私の思考の根底には、朝倉祐介さんの著書『ファイナンス思考』と山口周さんの『人生の経営戦略』の二つがあります。それを掛け合わせてみたんです。スタートアップの経営者として、経営で学んだことを活かしてみようと。

入山: まさしく、朝倉さんがあの本の中で批判しているのは「PL脳」ですよね。短期的なPL思考で考えるのは、すなわちフローを追いかけるだけでは何も生まれない。「PL脳で考えたらダメで、バランスシートで考えろ」という話で一貫しています。

恵島: 私は今、マレーシアに15年ほど住んでいるのですが、マレーシアには、経済的なアセットを200年分持っているのに、顔色が冴えない富裕層がごろごろいるんです。彼らは短期的にお金を追いかけて、お金をつくるのに成功したのですが、その時間を使って、もっと自分が永続的に幸せになることを考えることができるのではないかと思ったんです。つまり、「経済寿命」を伸ばすことには成功しましたが、人生のBS管理、特に出口戦略に失敗している。

入山: PL上の数字を追うあまり、永続的な幸福をもたらすストックを毀損している経営者は少なくありません。

恵島:短期的な考えで動くと、人生もったいと思うんです。ちゃんと今やっていることが資産化されて、それが自分の人生の BS として将来的に永続的に幸せをもたらせる行動に対して時間をかけるべきかなと思います。経済寿命は長くても、それ以外は長さを考えていなかったりする。資産を機能させるための「時間軸(寿命)」を再定義する必要があります。

私は人生のポートフォリオ管理において、注視すべきは単一の寿命ではないと思ったんです。 私は人生の時間を四つの寿命に分解しています。

1. 経済寿命: 資金が尽きるまでの期間。
2. 身体寿命: 心身ともに自立して活動できる期間。
3. 社会寿命: 他者から必要とされ、「ありがとう」と言われる機会がある期間。
4. 存在寿命: 死後、人々の記憶や文化の中に価値が残る期間。

恵島良太郎氏

入山: 社会寿命。それはすごく面白い。

恵島: M&Aで巨額の富を得た創業者の3〜4割が、売却後に深い孤独に陥ります。他人から「ありがとう」と感謝されることがなくなり、「社会寿命」が尽きてしまうからです。経済寿命が200年あっても、社会寿命がゼロなら、その人生は経営的に見て破綻しています。

入山: そっか。M&Aで大金が入ったけれど。経済以外の寿命が弱いから、辛いし、寂しいという感じになるということですね。

恵島: はい。例えば、実は私はゴルフが大嫌いでした。でも、90歳になっても友人と遊び続けるためには、共通言語としてのゴルフが必要だと思ったんです。それで45歳からゴルフを始めました。70歳からゴルフを始めたら、一緒に回る友人たちは嫌な顔をするだろうかと思い。これは「身体寿命」というより、「社会寿命」なんです(笑)。

次ページ > 「ウェルビーイングが高い」とはどういうことか

連載

恵島良太郎の「人生ファイナンス思考」

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