OpenAIとソフトバンク、オラクルは、Stargate(スターゲート)プロジェクトを通じてAIインフラに最大5000億ドル(約78兆5000億円)を投じようとしている。その傍らで、テンセントのHy3は、100万トークンあたり0.13ドル(約20円)という価格を武器に、OpenRouterの世界エージェントランキングを静かに駆け上がっている。しかも同社のAIワークスペースは、8月31日まで世界中で無料開放されている。
この対比は、AIの力がどのように配分されていくのかをめぐる、根本的に異なる2つの考え方を映し出している。
AIの力は、希少性ではなく普及から生まれる
8月5日、テンセントは大規模言語モデルHy3を、自社のエージェント型AIワークスペース「WorkBuddy」の国際版に全面的に統合した。Hy3は高級品として位置づけられてはいない。電気や水道のようなインフラとして配られている。
世界のユーザーは8月31日までWorkBuddyを無料で使える。それ以降のHy3のAPI料金は、入力100万トークンあたり0.1288ドル(約20.2円)、出力100万トークンあたり0.5336ドル(約83.8円)となる。欧米の主力モデルより一桁安い水準だ。
さらに重要なのは、テンセントがHy3をApache 2.0ライセンスでGitHub、Hugging Face、ModelScopeに公開したことだ。開発者は、特定企業のクラウド基盤に頼ることも、プラットフォームの利用料を払い続けることもなく、モデルをダウンロードし、改変し、自分の環境で動かせる。
市場の反応は早かった。
7月6日の公開から1週間で、Hy3の呼び出し回数は前世代モデルの68倍以上に跳ね上がり、OpenRouterの世界ツールコール量ランキングで1位に躍り出た。
この指標には注目する価値がある。ツールコール量(AIが外部のツールや機能を呼び出した回数)が測っているのは、AIモデルと雑談している人が何人いるかではない。自律的なAIエージェントが、人の手をほとんど借りずに実際の仕事をどれだけこなしているか、である。リサーチ、データ分析、資料作成、コード記述といった作業だ。
Hy3は現在、こうした呼び出しを1日あたりおよそ3300万件処理しており、世界のエージェント関連トラフィックの8.9%を占めている。
考えてみてほしい。現時点で、開発者が自律型ワークフローを組むのに最も活発に使っているモデルは、GPT-5でもClaude 4でもGemini 3でもない。安さと使いやすさを軸に設計された中国製モデルなのだ。



