ロシア経済は、石油価格下落と、現在16ヶ月目に入った西側の制裁のダブルパンチで、打撃を受けた。第3四半期のGDPは、前年比で4.1%減少したが、これは第2四半期の4.6%減からは改善である。ロシアの第3四半期のGDPはコンセンサスGDPをも上回った。
バークレイズ・キャピタルアナリストのダニエル・ヒューイットは、今年については、GDPが4%縮小するとの予測を維持するが、世界の石油価格のトレンドが逆転して上昇し始めれば、来年には景気後退は終わるだろうと述べている。ロシア株式は今年、MSCIエマージング・マーケット・インデックスを上回ったが、石油が1バレル40ドルを下回るようであれば、今後ロシア株を買おうとする人は、殆どいないだろう。1月には、先物が1バレル当り43ドルと、危険な程近付いた。市場では、石油価格は比較的安定しており、今後2年間は1バレル当り10ドルを超えて上昇することはないと予測している。
先月、ロシア議会は、2016年の予算案を公表したが、来年1バレル当り50ドルという危険なほど高い石油価格を前提としている。
産業活動の縮小幅は小さくなったが、サービス分野は落ち込んだ消費需要の影響で引き続き苦しんでいる。この主な原因は、およそ15%の高インフレである。信用拡大のスピードも落ちてきている。他方、中央銀行が、銀行部門のシステミック・リスクを限定するために、対外債務の支払に必要な場合に、銀行に対して資金を提供している。また、2015年第3四半期のロシアの経常収支黒字は、エネルギー輸出の減少により、縮小している。ロシアは、現在では、GDP比0.6%の基礎的財政収支の赤字に直面しているが、1年前には、2.9%の黒字であった。ロシアが赤字になることは、稀である。
ロシア最大の商業的貸し手であるスベルバンクは、制裁や石油に関わりなく、家計の負債が来年は減少するとの予想を明らかにしている。同行のベース・ケースは、来年12%の名目賃金上昇を前提としている。来年のどこかの時点で、貸出の縮小が終わり、家計が再び借り始める可能性が高い。ただし、増加率は僅かなものとなろう。
9月には、ロシア経済の多くの分野で回復が見られた。季節調整および日数調整をした鉱工業生産と投資は、8月の水準から増加した。しかしながら、小売には、変化がなかったように思われる。農業部門は、欧州からの食品が幾つか輸入禁止になったために、前年比で4%の成長となった。
スベルバンクは、景気は底を打ったとしている。
先週、同行のアナリストは、「ロシア経済の回復が、9月に始まったように思われる。」と述べている。
その兆候としては、インフレが鎮静化し、来年の金利引き下げの可能性が出てきている。基幹部門の生産は、8月の5.2%の落ち込みから、9月には4.3%の減少になった。これが第4四半期まで続けば、スベルバンクは、2016年は良好な結果になり、2016年にGDP成長率2.5%を達成することも可能であると考えている。
260億ドルを運用しているブランデス・インベストメント・パートナーズのポートフォリオ・マネージャーであるジェラルド・ザモラノは、最近フォーブスに対して、ロシアは、現在の株価水準と石油価格ショックや制裁への見事な耐久力から見て、良い投資先となっていると語った。
「現在は、ロシアに投資するのにとても良いタイミングだと確信している」と、ザモラノは語る。
12日には、ブルームバーグが、ロシアは政治的にも経済的にも1年前とは全く違うとする、ブラックロックのファンド・マネージャーのエイマー・ビサットのコメントを配信した。「ロシアには大きな課題や問題があるので、取り繕うつもりはないが、経済循環的にみて、今日の状況は全く異なる。ルーブルは、他のどの一次産品輸出国の通貨より、下落幅が大きい。そのため、ロシアにおいては、他の一次産品輸出国では見られない輸出代替が数多く見られる」と、彼は語る。
マーケット・ベクトル ロシア上場投資信託は、年初からこれまでで10.32%上昇しているが、この間、MSCIエマージング・マーケットは13%の下落、S&P500の上昇幅も0.5%未満である。今年、ロシア株は、中国のA株すら上回っている。A株は、ドイチェXトラッカーズA株ETFの結果によれば、僅か約2%の上昇である。