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2026.08.27 11:00

「疑問」が放置されない組織へ——三菱地所レジデンスと樹林AIが変えた、社内の情報流通

労働人口の減少に伴う業務効率化と、社員がより付加価値の高い業務に集中できる働き方への変革。多くの企業が直面するこの課題に対し、住宅デベロッパーである三菱地所レジデンスは、生成AIスタートアップの樹林AIをパートナーに迎え、社内問い合わせ業務へのAIエージェント導入へと舵を切った。

AIが業務の主役になりつつある時代、人間は何に集中し、組織はどう変わるべきか──。樹林AIは、単に質問に回答するAIではなく、企業の業務プロセスに深く入り込み、顧客対応や社内業務を実際に動かすAIエージェントプラットフォームを提供するAI企業だ。「答えるAI」ではなく「動くAI」の実現を掲げる同社CEO オオイ・ライスと執行パートナー・廣野研一が、三菱地所レジデンス 執行役員 C・DX企画部長の小笠原秀佳、C・DX企画部 DXシニアグループマネージャー池田至に話を聞いた。


期待だけでは決めない。PoCで見極めた技術力と対応力

小笠原秀佳(以下、小笠原):私たちC・DX企画部は、三菱地所レジデンス全体のDXとCXの向上を横断的に推進する組織です。将来にわたって三菱地所グループが「選ばれ続ける企業」であり続けるため、既存ビジネスの深化や効率化に加え、環境変化をとらえ、新たなビジネス機会にもチャレンジする必要がある中で、それを支える社内の働き方をどう変革していくかが大きなアジェンダでした。まず、問い合わせ対応をはじめとする定型的な業務に人的資源が割かれている状況を見直し、AIなどを活用することで、社員がより付加価値の高い業務に集中できないか、その可能性を模索していました。そうした中で、樹林AIのオオイさんや廣野さんと出会いました。

廣野研一(以下、廣野):私自身、前職の三菱地所で丸の内の再開発やグランフロント大阪などのまちづくりに長く携わってきました。私が考えるまちづくりとは、ヒト・モノ・コトの感動的な出会いの場を創出することです。その思想の下、2021年に丸の内に推薦制のプライベートメンバーズクラブ「OCA TOKYO」を立ち上げ、入会時期が同じ同期会で、小笠原さんと樹林AIのオオイが出会うというセレンディピティが起こったのです。

廣野研一 │ 樹林AI 執行パートナー
廣野研一 │ 樹林AI 執行パートナー

池田 至(以下、池田):小笠原から紹介され、樹林AIには高い技術力を感じました。ただ、当部はすぐに新しいツールに飛びつくのではなく、実際の業務でどの程度の効果が得られるのか、また、運用面に問題がないかを小さく検証した上で、導入を判断するスタンスを取っています。そこでまずは対象範囲を限定し「社内の問い合わせ対応」をテーマに、PoCからプロジェクトを始めました。

当社の業務やサービスに合わせてのカスタマイズ提案、週2回の打ち合わせで前回の課題が次回には修正されているアジリティの高さなど、樹林AIの圧倒的なスピード感と柔軟性も導入の決め手となりました。

小笠原:グループ会社の三菱地所プロパティマネジメントで、すでに樹林AIが導入されており、同社での活用状況をヒアリングできたことも安心感につながりました。

オオイ・ライス(以下、オオイ):今回のプロジェクトは、樹林AIにとってもグループ間横展開の最初の成功事例です。私たちは、プロダクトの8割にあたるコアな仕組みは強固に保ちつつ、残り2割は各企業固有の課題や特徴に合わせて柔軟にカスタマイズ開発を提供する方針をとっています。そして、その場、その週で解決するスピード感で開発を回すことが、大企業の皆様に信頼していただける鍵だと考えています。

暗黙知や人間用のマニュアルをAIが学ぶために

池田:しかし、いざプロトタイプのAIエージェントで検証を始めると、その回答精度はわずか17%という厳しい数字からのスタートでした。当時はAIにドキュメントを正しく読み込ませる知見が不足しており、ここから長い生みの苦しみが始まりました。

池田 至 │ 三菱地所レジデンス C・DX企画部 DXグループ シニアグループマネージャー
池田 至 │ 三菱地所レジデンス C・DX企画部 DXグループ シニアグループマネージャー

オオイ:AIの側から見れば、渡されたデータに基づいて回答しているため、システム的には「100%正しい処理をした」とみなされることがあります。開発者側はそこで満足してしまいがちですが、私たちのゴールは、回答を受け取った現場の社員が「問題が解決した」と満足することです。しかし、現場が求める回答をAIに導き出させるのは、一筋縄ではいきません。

というのも、本当に必要な知識の多くの自然言語による非構造データは、ドキュメント化されておらず、個人の頭の中や、過去のメール、チャットの履歴の中に暗黙知として埋もれています。だからこそ樹林AIは、現場の生データをAIが誤解なく解釈できるナレッジとして再構築する手法に注力しています。

小笠原:人間用のマニュアルをAIが正しく理解できるように、データを適切な単位に分けて整理するという、地道なアナログ作業を樹林AIのエンジニアと一緒に行っていきました。

池田:当初は1問の修正に30分近くかかることもあり途方に暮れていましたが、樹林AIがプロセス自体を劇的に効率化する3つのツールをスピーディーに開発してくれたんです。画像や複雑な構造図・音声にも対応するデータ読込機能、回答エラー時にどこを修正すべきかをAIが提示する修正補助機能、そして500問の設問を一斉実行してAI自身が正否を自動評価するAIテストツールを開発したことによって、検証時間は大幅に圧縮されました。

さらに大きな転機となったのは昨年末、私たちのニーズに合わせて、ボットの設計をゼロベースで作り直してくれたことです。これにより、回答精度が一気に跳ね上がり、最終的に一般社員テストで80%超に達しました。内容に応じて担当者へ自動で引き継ぐ運用や人による確認を組み合わせることで、実務で活用できる水準になったと判断しています。

疑問をそのままにしないことが、組織力の向上につながる

小笠原:テストを経てAIエージェントを導入した結果、これまで表に出てこなかった潜在的な問い合わせが顕在化し、社内からの問い合わせ総数は導入前比で約2倍に増加しました。24時間いつでも気軽に問い合わせ可能となった利点は非常に大きく、これまで周囲に聞きづらくて中途半端なまま進めていた業務や、一人でマニュアルを見ながら悩んでいた時間が多くあったことがわかりました。

オオイ:大企業では「今すぐ聞くのは気が引ける」と質問を溜め込んでしまい、一気に聞いて回答が返ってくるまでに1週間かかるような非効率がよく起こります。でも相手がAIであれば、気遣うことなくその場ですぐに確認できます。

オオイ・ライス│ 樹林AI CEO
オオイ・ライス│ 樹林AI CEO

池田:現場が質問を遠慮して、十分に確認できないまま業務を進めてしまうと、結果としてエラーが起きてお客様にご迷惑がかかり、リカバリーにも膨大なコストがかかります。問い合わせAIがあることで事前に確認しやすくなり、業務上のエラーを減らすことができます。特にリスク管理部門やコンプライアンス部門のように、直接問い合わせるにはハードルが高い領域でも気楽に確認できる窓口として非常に大きな可能性を感じています。

また、現場に使ってもらうための工夫として、従来の電話やメール、チャットといった使い慣れた動線のまま使えるようにしましたし、ハルシネーションへの不安を解消するために、回答の根拠となるマニュアル資料添付の機能も実装してもらいました。

オオイ:新しいツールのためにログインや操作方法を覚えさせるのは、現場にとって大きな心理的ハードルになります。人間がシステムに合わせるのではなく、普段使い慣れた電話や連絡ツール上で裏側のAIと繋がるというアプローチは重要です。

池田:専門知識が必要な問い合わせ対応は教育コストもかかりますが、AIが一次対応を担うことでナレッジが蓄積され、組織全体の効率化とコスト削減を実現できています。

顧客とともにプロダクトを育てる「共創」の形

小笠原:今回のプロジェクトを通じて、私たちは単なる「ITツールの買い手」ではなく、現場の課題感や実務のニーズを樹林AIのエンジニアと共有し、一緒にシステムを磨き上げていくことができました。こうしたプロセスそのものが、私たちが目指す「共創」の形です。

小笠原秀佳 │ 三菱地所レジデンス 執行役員 C・DX企画部長
小笠原秀佳 │ 三菱地所レジデンス 執行役員 C・DX企画部長

池田:樹林AIのコミットメントには本当に驚かされました。私たちから共有した大量の社内規程をわずか数日で読み込み、その内容を踏まえて議論に臨んでくれたんです。その姿を見て現場のメンバーは「私たちの真のチームメイトだ」と感じ、信頼関係が一気に深まりました。

小笠原:今後も、社内の他の部署や異なる業務領域に対し、今回構築したナレッジ基盤を段階的に横展開していきたいと考えています。本プロジェクトを通じて、樹林AIが信頼できる共創パートナーであるとの確信も深まりました。今後は、今回の実績や知見を三菱地所グループ各社とも共有し、それぞれの課題に応じたAI活用の可能性を広げていきたいと考えています。すでに現在、樹林AIとの新プロジェクトが複数動き始めていて、今後も継続的に活用領域を広げていく構えです。

廣野:今回は丸の内の『OCA TOKYO』のメンバー同士だからという信頼感が醸成された中で生まれた出会いが発端でした。そして、実効性と持続性を備えたシステムかどうかを厳正に評価する三菱地所グループ会社の中で、対等なパートナーに段階的に浸透し、確かな評価として定着していくことを期待しています。

オオイ:私たちは「お客様の成功こそが自社の成功」というカルチャーを徹底しています。三菱地所レジデンス様の「現場の知恵」と私たちの「AI工学」が融合したからこそ、17%から90%超への逆転劇が生まれました。これからも並走しながら、企業独自の競争力となる「生きたプロダクト」を日本、そして世界に向けて育てていきます。

樹林AI
https://www.jurin.ai/ja


おがさわら・ひでか◎三菱地所レジデンス 執行役員 C・DX企画部長。全社のCX・DX推進を牽引し現場と経営をつなぐデジタル戦略を実践。

いけだ・いたる◎三菱地所レジデンス C・DX企画部 DXグループ シニアグループマネージャー。現場のリアルな課題とデジタル技術を結ぶブリッジとして、社内ナレッジの構造化やAIツールの全社実装プロジェクトを現場の指揮官として推進。

おおい・らいす◎樹林AI 創業者 代表取締役社長(CEO)。東京大学、ジョージア工科大学、北海道大学等で AI・ソフトウェア工学と経営工学を専攻。シリコンバレーユニコーン「Applied Intuition」の初期メンバーとして国内外の広範な自律システム実装を統括。

ひろの・けんいち◎樹林AI 執行パートナー。元三菱地所にてグランフロント大阪のタウンマネジメント開発や、丸の内の会員制プライベートクラブ「OCA TOKYO」の設立を主導。産業と最先端テクノロジーを結ぶブリッジを担う。


樹林AI — Special Series
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01 | Forbes US
Forged in Japan: How Jurin AI is Building AI for the Real World
→ [Read on Forbes US]

02 | Forbes JAPAN(日本語版)
世界で勝てるAIは、日本で磨く──「答える」から「働く」へ、樹林AIの挑戦
→ [Forbes JAPANで読む]

03 | 導入企業対談 Vol.1
民間だから決断できた──関西エアポートが樹林AI と描く「進化し続ける空港」次の一手
→ [Forbes JAPANで読む]

04 | 導入企業対談 Vol.2
蚊帳から宇宙へ──460年変わり続けてきた寝具の老舗・nishikawaが、AIで描く次の未来
→ [Forbes JAPANで読む]

05 | 導入企業対談 Vol.3
「疑問」が放置されない組織へ——三菱地所レジデンスと樹林AIが変えた、社内の情報流通

06 | Special Page
樹林AI 特設連載ページ

 

Promoted by 樹林AI / text by Miyo Takako / edited by Mao Takeda / photograph by Yutaro Yamaguchi