AIが人間の専門性をより価値あるものにする場合
AIが定型業務を担い、意思決定、文脈の理解、リスク管理、説明責任を従業員に残す場合、その職務の価値は高まり得る。その人の価値は、AIをどのように使うべきかを決め、その出力を評価し、結果に責任を負うことから生まれる。
明確な正解のない判断に依存する職務では、経験の価値が高まる。その判断をテクノロジーや経験の浅い従業員で置き換えることが難しいほど、雇用主が賃金プレミアムを提示する可能性は高くなる。
AIが職務に必要な専門性を下げる場合
逆のことは、AIが専門的な業務のより多くを自らこなす場合に起きる。残された責任を果たすために必要な訓練や経験が少なくなれば、その仕事に就ける人の数は増える。雇用主にとっては候補者の母集団が広がり、高い賃金を提示する理由は小さくなる。
その職自体は残るかもしれない。しかし、専門知識を必要とする責任が減れば、従業員はその職務に賃金プレミアムがふさわしいと主張する交渉力を失う。
稼ぐ力を守る方法
まず、自分の職務のどの部分が自動化されやすくなっているのか、そしてどの部分がなお判断力、人間関係、説明責任、経験に依存しているのかを見極めることだ。追跡すべき点は次の通りだ。
・価値が高まっているスキル:雇用主がより頻繁に求め、より高い対価を払っている能力を探す
・自分の賃金が市場に追いついているか:給与レンジ、求人情報、類似職に付随する責任を比較する
・自分の専門性が最も重要な領域:自分の判断に依存した意思決定、解決した問題、成果を記録する
・1人が複数の仕事を吸収していないか:賃金の増加を伴わずに、雇用主がより広い責任を求めていないかに注意する
仕事を失うことによって意思決定を迫られるまで待つことには代償がある。ゴールドマン・サックスが40年分の労働市場データを分析したところ、テクノロジーによって職を失った人は再就職後、以前より3%超低い収入を得ていた。さらに、実質所得の伸びは、その後10年間にわたり、失職しなかった人に比べて約10ポイント低かった。一方、再訓練を受けた人は、より良い賃金上昇と安定した雇用を経験していた。
自分の分野におけるAIの賃金への影響を追跡すれば、稼ぐ力が低下する前に、自分の職務がどこへ向かっているのかを見極めやすくなる。雇用主がなお賃金プレミアムを払う価値があると考えるスキルと経験を築くことに集中すべきだ。
自分の職務がどのように変化しているかを早く認識するほど、自らの立場を強化し、市場での価値を試し、次の一手を打つための時間をより多く確保できる。


