NEWS Forbes JAPAN MEMBERSHIP 新機能|
記事ページ内の広告表示を最小限にしました

リーダーシップ

2026.08.06 09:14

優秀な人材が陥りがちな「リーダーシップ・コミュニケーション」最大の過ち

Adobe Stock

Adobe Stock

優秀な人材は、結果を出すからこそ昇進することが多い。意思決定が速く、プレッシャーの下でも成果を維持し、上からの指示を待たずに自ら動ける。

だが、優秀な人材がマネジャーになると、その移行は想像以上に難しいものになりがちだ。個人としての成功を支えてきた強みが、協働を前提とする役割でそのまま生きるとは限らない。課題はスキルや努力ではなく、リーダーシップ・コミュニケーション、つまり自分の思考を可視化することの必要性にあることが多い。

新任マネジャーは往々にして、自分の頭の中にある明確さが、他者にも共有されていると思い込む。

この思い込みの代償は大きい。Employee Benefits Newsによると、リーダーシップ・コミュニケーションの不備は、米国企業に生産性低下、離職、機会損失などで年間およそ1.2兆ドル(約189兆円)、従業員1人あたり約1万2506ドル(約197万円)の損失をもたらしていると推定される。

Gossman Groupの報告によれば、リーダーと週に少なくとも6時間やり取りする従業員は、やり取りが1時間にとどまる従業員に比べ、29%高い意欲を示し、エンゲージメントも30%高いという。

この段階では、もはや成果そのものが差別化要因ではない。リーダーシップは、仕事をうまくこなすことから、他者が成功できるよう仕事を明確に説明することへとシフトしていく。

「こなす」から「説明する」へ

優秀な人材は、問題から解決策へと素早く進むことが多い。すでに文脈を理解しているため、途中のステップを省きがちだ。マネジャーになってもそのスピードは維持されるが、思考は頭の中にとどまる。指示には理由が添えられず、意思決定も説明なしに行われることが少なくない。

役割の中で変わるのは、仕事の複雑さではなく、その仕事に関わる「相手」だ。マネジャーはもはや、自分のために問題を解決しているのではない。他者を通じて問題を解決しているのだ。

優先順位や意図が見えなければ、従業員は自分で空白を埋めるしかない。誤って推測する人もいれば、完全に手が止まる人もいる。

時間がたつにつれ、マネジャーが忙しそう、あるいは苛立っているように見えると、チームメンバーは質問をためらうようになる。そのためらいは積み重なる。小さな不確実性がやり直しにつながり、エンゲージメントの低下を招く。

自信の罠

新任マネジャーは、信頼を築こうとするあまり、確信を装うことで過剰補正してしまうことがある。対話を促すのではなく結論を述べ、意見を引き出すのではなく質問に素早く答える。

こうした行動の背景には、しばしば自信のギャップがある。エグゼクティブ・コーチングの調査や職場研究によれば、新たに昇進したリーダーのおよそ3分の1が、自分の能力とその役割における自信との不一致に苦しんでいる。2019年以降、リーダー職の可視性と曖昧さが増したことに伴い、新任マネジャーが抱える自信の課題は最大75%増加したと報告されている。多くの人は、不確実性を表に出す代わりに、確信を演出することで対応している。

その結果、心理的安全性は低下する。心理的安全性は、チームのパフォーマンスと密接に結びついている。チームメンバーは懸念や反対意見を共有しなくなる。マネジャーは質問が減ったことでコミュニケーションがうまくいっていると思うかもしれないが、実際にはフィードバックの循環が止まってしまっているのだ。

有能な新任マネジャーが違うこと

この段階で有効なリーダーシップ・コミュニケーションには、マインドセットの転換が必要だ。目標は、会議室で最も賢い人になることではなく、自分の思考を可視化することだ。

この転換の重要性は、数十年にわたるリーダーシップ研究にも示されている。Center for Creative Leadership(CCL)の研究によれば、文脈や意図の説明を重視するマネジャーは、指示だけに頼るマネジャーよりも、より強い連携と、より少ない実行ミスを実現している。パフォーマンスを動かすレバーになるのは、統制ではなく明確さだ。

有能な新任マネジャーは、次のことを一貫して行っている。

  • 文脈を語る。優れたリーダーは、どのような意思決定がなされたかだけでなく、なぜその意思決定がなされたのかを説明する。CCLのリーダー・コミュニケーションに関する研究では、意思決定の背後にある理由を理解することが、とりわけ変化の時期に曖昧さを減らすことが示されている。
  • 重要なメッセージはゆっくり伝える。影響力のあるリーダーは、会議、文書での更新、1対1の面談を通じて重要なポイントを繰り返す。複数のチャネルで反復することで、理解と記憶が強化される。
  • 答えを質問に置き換える。沈黙の瞬間をすべて埋めるのではなく、優れたマネジャーは相手の視点を求める。Journal of Applied Behavioral Scienceに掲載された研究は、リーダーの問いかけがエンゲージメントの向上や問題発見の改善と関連していることを示している。質問は服従ではなく思考を促すからだ。
  • 理解を確認する。有効なリーダーは、足並みがそろっていると仮定するのではなく、それを明示的に確認する。認識のずれは、共有理解の確認を怠ることから生じることが多い。

こうしたリーダーが明確さを支えるために使う言葉には、次のようなものがある。

  • 「この意思決定の背景はこうです」
  • 「これについて、どのような疑問が浮かびますか」
  • 「私が見落としていることは何でしょうか」
  • 「これはあなたにどう伝わっていますか」
  • 「優先事項として何を聞き取ったか、言い換えてもらえますか」

これらのフレーズは、心理的安全性の向上やチーム学習の強化と関連する、エビデンスに基づいたコミュニケーション実践を反映している。また、明確さは知性を試すものではなく、共有された責任であることを示している。

優秀な人材からマネジャーへの移行は、最終的にはコミュニケーションの成熟度を問う試験だ。それを乗り越えるリーダーは、明確さがいまや自分の責任であり、説明のないスピードはもはや強みではないことを理解している。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事