そこで注目したいのが、従業員向け人材コンサルティング会社TINY pulseが実施した「個人と同僚間のアカウンタビリティーの時代(The Era of Personal and Peer Accountability)」という調査である。40万人を超える従業員を対象に行ったもので、幅広いマネジメント関連の問題に役立つ情報満載の調査だ。今日は中でも目に留まった3つのデータをご紹介したい。マネジメントを成功に導くカギとなる、嘘のようにシンプルな3つのポイントである。
これらの調査結果は、価値の認識、成長機会、そして離職率のマネジメントをきちんと行うことの重要性について、新しい識見を示している。決して驚くほど新鮮な発想ではないものの、管理職としてうまくできているかというと、そうでもないことが多い。ひとつずつ、詳しく見ていこう。
価値の認識
従業員に、自分の仕事内容について、それが必要とされていると感じるかと聞いたところ「強くそう思う」と答えた人は31%にとどまった。興味深いことに、この数値は様々な全国調査で繰り返し登場する「仕事に熱心に取り組んでいる従業員は30%」という数値と合致する。職場で必要とされていると感じられないということは、モラル低下に直結するのだ。
成長機会
本調査に回答した従業員で「高いレベルまで専門性を高められるチャンスがあると思う」と回答した人は25%しかいなかった。他の多くの調査も示唆しているように、従業員にとって成長機会は例外なく重要なことである。成長機会が無いと感じることはやる気を低下させることになるのだ。
離職率
上に挙げた2つの問いへの回答を見れば妥当ではないだろうか。調査対象となった従業員の25%は10%の昇給が見込めれば転職したいと回答している。調査結果の要約ではこう述べられている。「当社がよく盛り込む設問に『10%の昇給が見込まれる場合、どの程度の確率で転職したいと思いますか?』というものがあります。実のところ、従業員が現在のポジションに本当に満足していた場合、もっと大きな昇給が見込まれても、未知の世界に飛び出そうとは思わないものです」。しかし、逆にちょっとしたきっかけで「未知の領域に飛び出してもよい」と思ってしまう人が相当数いることが調査結果からはわかる。そして、離職率の高さは、生産性の低下、新規採用、研修、並びにその他の付随作業によりコストに直結してしまう。
この調査の結果から導くことのできる主な結論は二つある。
1) もしあなたが管理職で、部下たちが正当な評価をされていないと感じ、今の会社では成長のチャンスが少ないと思っていたら、高い確率でその部下たちは生産性が低く、転職活動をしていると考えてよいだろう。
2)もしあなたが管理職で、部下たちが正当に評価をされていて、今の会社で成長のチャンスが十二分にあると感じていたら、高い確率でその部下たちは高い生産性を発揮し、今後しばらくは勤続すると考えてよいだろう。
道を分かつ要因はわかっている。そして、どんな道を用意するかは、管理職の腕にかかっていることも多いことを覚えておこう。