AIがコミュニケーションの課題を悪化させる仕組み
AIの登場により、この課題に新たな側面が加わった。
AIが「どこを見るべきか」「どう解決すべきか」を自信たっぷりに提示すると、私たちの注意はそれに引きずられてしまう。当然、私たちはAIが推奨する方向を探し始める。もし本当の答えが別の場所にあった場合、私の家族が画面上のボタンを見落とすのとまったく同じ理由で、その答えを見落とすことになる。
AIが時として誤った回答を生成することは、すでに広く知られているだろう。より懸念すべきは、AIがもっともらしい回答を提示した瞬間、脳が探索を止めてしまいがちだという点だ。他にもっと良い説明や解決策があるのではないかと疑問を持つ代わりに、AIが示した道筋だけに視野を狭めてしまう。この傾向はAIによって生まれたものではなく、心理学において何十年も前から実証されてきたものだ。AIは、脳に「これ以上探す必要はない」と思わせる格好の材料を提供しているに過ぎない。
リーダーがコミュニケーションの課題を減らす方法
リーダーがこうした脳のショートカットを完全になくすことはできないが、その影響を和らげることはできる。最もシンプルな方法の一つは、指示を繰り返すのではなく、質問を投げかけることだ。「もう一度よく見なさい」と言う代わりに、「何が見える?」と尋ねる。「なぜ一目瞭然の解決策を見落としたのだ」と決めつける代わりに、「それが選択肢にならないと判断した理由は何?」と聞いてみる。こうした問いかけは、自身の最初の結論を正当化させるのではなく、もう一度探索を始めるよう促す効果がある。
このアプローチは意思決定の質も高める。結論を出す前に、どのような前提条件を置いているか、見落としている証拠はないか、他に検討すべき解釈はないかをリーダーが問いかけることで、チームは大きな恩恵を受ける。こうした対話は思考のペースを適度に落とし、「答えが見つかった」と思った瞬間に探索を止めてしまう脳の習性を防いでくれる。
なぜコミュニケーションの課題はなくならないのか
誰かに「そんなものはない」と言われるたびに、私はかつて自分をいら立たせていた現象の裏に、科学的な理由があることを思い出す。相手が怠慢であるとか、単に注意を払っていないと決めつけるのをやめ、人間の脳は予測の外にあるものを認識するのが極めて苦手なのだと捉え直す。
コミュニケーションの課題は、誰かが言葉を発するよりはるか前に始まっていることが多い。目の前にある情報を認識できないことから始まるのだ。チームを率いるときも、戦略的な意思決定を下すときも、あるいはAIを使ってビジネス上の課題を解決するときも、最大の障壁となるのは、脳が「答えを見つけた」と思い込むことで、探索をそこで終わらせてしまうことなのだ。


