「思い込み」がコミュニケーションの課題を生む
多くの人は、コンピューターの画面を探す際、全体をくまなく見ていると思っている。しかし、脳はそのようには働かない。私たちは、予測に基づいて探索を行う。経験上、それがあるべき場所を探すのだ。そして、そこにない場合、「そんなものは最初から存在しない」という確信が強まっていく。ソフトウェアのアップデートで、ある機能が削除されたと思い込んだときのことを考えてみてほしい。数分後、その機能が別の場所で見つかることがある。思い込みのせいで、目の前にあるものが見えなくなっていたのだ。
これと同じことが、組織の中でも起きている。リーダーはしばしばもどかしさを感じる。部下が機会を見落としたり、明らかなリスクに気づかなかったり、誰の目にも明らかな情報同士を結びつけられなかったりすることに、いら立ちを覚えるのだ。しかし、彼らを「不注意だ」と決めつける前に、現状にそぐわなくなった古い予測や思い込みに基づいて探索を行っているのではないか、と考えてみる価値はある。
性急に探索を打ち切ることで課題は深刻化する
解決策の探し方に影響を与えるもう一つの心理学的概念に、「早期閉鎖(premature cognitive closure)」がある。これは医療分野で広く研究されてきたもので、医師がすべての利用可能な証拠を検討する前に、特定の診断を下してしまう現象を指す。脳は、妥当と思える説明を一度見つけると、それ以外の選択肢を探すのを自然とやめてしまうのだ。
これと同じことが、組織内でも日常的に起きている。予算が足りないと結論づけたり、ある社員には見込みがないと判断したり、見込み客へのアプローチ手法はないと諦めたり、あるいは「まだ見たことがない」という理由だけで解決策はないと思い込んだりする。それらの結論は正しいかもしれない。しかし、ビジネスにおいて「そんなものはない」と言っているのと同じである可能性もある。多くの場合、人々は探索を終える前に結論を出してしまっているのだ。
人間の脳は確実性を好む。探索を続けることよりも、確実性を得る方が労力を必要としないからだ。進化の観点からは、迅速な判断を下すことが生存に役立ってきた。しかし現代の組織において、こうした思考のショートカット(思考の省力化)は、チームがより良い解決策や革新的なアイデア、貴重な機会を見落とす原因になりかねない。


