浮動株の少なさは両刃の剣
スペースXのIPOでは、約6億3900万株が市場に放出された。8月6日にロックアップ解除の対象となる9億1150万株は、その最初の規模の約140%に相当する。これらすべてが売却可能な供給源とみなされた場合、取引可能な総供給量は約15億5000万株に膨れ上がることになる。
多くの従業員は自身のポジションを維持するだろう。一部の初期投資家は、スペースXの長期的な価値が現在の時価総額を大きく上回っていると信じ続けるだろう。また、IPO価格を大きく下回る水準で売却することに関心のない者もいるかもしれない。しかし、市場価格は限界的な取引によって決まる。ロックアップ解除の影響が出るために、9億1150万株すべてが売却される必要はない。既存の浮動株や通常の1日の出来高と比較した場合、比較的少ない割合が市場に流入するだけでも、大きな意味を持つ可能性がある。
問題は、単に何株売却されるかだけではない。誰がその株式を保有しており、なぜ今が売却の好機であると判断する可能性があるのかだ。スペースXの従業員は、何年にもわたって報酬の一部を自社株で受け取ってきたかもしれない。一部の従業員にとっては、それが純資産の大部分を占めている可能性もある。その一部を売却することは、賢明な資産分散であり、事業が窮地に陥っていることを認めるものではない。
ベンチャーファンドは独自の制約のもとで運営されている。彼らは一定の期間を設けて資金を調達し、最終的には投資家に資金を返還することが求められる。初期の出資者は、スペースXに対して引き続き強気である一方で、IPOを現金や株式を分配する自然なタイミングであると判断するかもしれない。市場は彼らがなぜ売却したのかを問いはしない。ただ、その株式を吸収せざるを得ないだけだ。
これこそが、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)モデルを再び微調整することよりも、株主構成の方が短期的に重要な意味を持つことが多い理由だ。評価額は投資家がその事業にどれだけの価値があると信じているかを示すが、株主構成は、その価値が顕在化するまで待つ忍耐力と財務的な余力があるのは誰かを示している。
混み合うショートポジション
この状況には、もうひとつの側面がある。空売り筋(ショートセラー)が、市場で最大規模となる弱気のポジションを構築していることだ。S3 Partnersの推計によると、7月29日時点で2億1930万株のスペースX株が空売りされており、これは浮動株の約34%に相当し、その金額は246億ドル(約3兆8700億円)に達する。これはテスラの空売り残高のドル価値を上回っている。テスラとの比較は見出しとしては見栄えが良いが、より有用な情報は、この取引がどれほど急速に膨らんだかという点だ。
S3の推計によると、6月23日時点で空売りされていたスペースX株はわずか約4000万株だった。それからわずか1カ月余りの間に、そのポジションは5倍以上に増加した。ロックアップ解除のリスクは、もはや市場が見過ごしているものではない。投資家があえてこの株に売りを仕掛ける主な理由のひとつとなっているのだ。


