人材育成やリーダーシップ開発の責任者を対象に実施した20回以上の独自インタビューを通じて、共通するある課題が繰り返し浮かび上がった。リーダーたちは、チームのサイロ化を打破し、部門間のコラボレーションを強化するために感情インテリジェンス(EQ)トレーニングに投資している。しかし、そうしたトレーニングは個人そのものだけに焦点を当てがちだ。
個人(すなわち、リーダーが自身の感情をどのように管理するか)にのみ焦点を当てた感情インテリジェンス・トレーニング・プログラムの課題は、サイロ化を生み出す根深い構造に対処していない点にある。
そこで一線を画すのが、ノア・アスキン博士の研究だ。アスキンは、カリフォルニア大学アーバイン校(UCアーバイン)ポール・メラージ・スクール・オブ・ビジネスの組織・管理学准教授であり、同校リーダーシップ開発研究所のファカルティ・ディレクターを務めている。長年にわたりネットワーク研究に携わり、その研究分野は創造性、コラボレーション、音楽にまで及ぶ。彼の核心的な洞察は驚くほどシンプルだ。サイロを打破したいのであれば、人だけを見るのをやめ、人と人との「つながり」に目を向ける必要がある、というものだ。
この視点から応用すれば、感情インテリジェンスは、特にチームレベルにおいて、はるかに実用的かつ強力なものとなる。
リーダーが感情インテリジェンスを重視しても、なぜサイロ化が続くのか
「組織における『人』を語るとき、基本単位となるのは個人だけではない」とアスキンは説明する。「人と人とのつながりだ」
しかし、ほとんどのEQトレーニングは個人を中心に構築されている。自己認識を高め、感情をコントロールし、コミュニケーションスキルを向上させることを目的としている。これらの能力は重要だが、それだけで自動的にサイロが打破されるわけではない。
サイロが存続するのは、人間関係にパターンがあるからだ。そのパターンがネットワークを形づくる。そしてネットワークは、リーダーが認識しているかどうかにかかわらず、誰が誰と話し、誰が情報を共有し、誰が取り残されるかを決定づける。
こうした構造を理解していなければ、いかに感情インテリジェンスに優れたリーダーであっても、自分が崩そうとしているサイロ自体を結果的に強化してしまうことになりかねない。
ネットワークをマッピングしないリーダーが見落とすもの
アスキンがリーダーや学生に最初に教えることの一つが、自身のネットワークを可視化することだ。
「自分の組織のマップを描くことを想像してみてほしい」と彼は言う。「一部のリーダーは、全員がお互いを知っており、頻繁にコミュニケーションを取る緊密なクラスターの中に身を置いている」。こうしたネットワークは、協力的で高い信頼関係があるように感じられるが、すぐにエコーチェンバー(共鳴室)化してしまう可能性がある。
その対極にあるのが「ネットワーク・ブローカー」だ。こうしたリーダーは、放っておけばつながることのない人々やグループを結びつける。部門を横断して動き、異なる領域間でアイデアを翻訳し、新たな視点をもたらす。
「数十年に及ぶ研究からわかっているのは、緊密なネットワークは信頼を築くということだ」とアスキンは言う。「しかし、ブローカーは新しく異なる情報にアクセスできる。そこから創造性やイノベーションが生まれるのだ」
サイロを打破しようとするリーダーにとって、この違いは極めて重要だ。自身のネットワークが、すでに知っていることを強化するだけのものであれば、部門を超えたコラボレーションなど望めない。アスキンは、著書『Orchestrating Connection: How to Build Purposeful Community in a Tribal World(仮題:つながりのオーケストレーション:部族化された世界で意図的なコミュニティを築く方法)』の中で、この考え方を深く掘り下げている。そこで彼は、優れたリーダーはつながりを偶然に任せないと主張する。リーダーは、自分の役割に実際にどのようなネットワークが必要かを明確にすることから始め、意図的につながりをデザインするのだ。
サイロの打破には信頼が、信頼には「弱さ」が必要
ネットワーク構造を理解することは、最初のステップにすぎない。より困難なのは、リーダーが境界線を越えて動くことを可能にするような関係性を築くことだ。ここにこそ、感情インテリジェンスの実践が求められる。
アスキンは、効果のないアプローチについて率直に語る。「単に自己紹介をさせたり、『もっとネットワークを広げなさい』と指示したりするだけでは、何も変わらない」と彼は言う。「ある程度、自らの弱さを見せなければ、つながりは深まらないのだ」
これを示すために、彼は自身が担当するほぼすべての授業やエグゼクティブ向けセッションを同じ方法で始める。表面的な自己紹介の代わりに、参加者に次のような問いを投げかけるのだ。「これまでの人生で、十分に感謝や評価を伝えられていない人が1人いるとしたら、それは誰ですか。そしてその理由は何ですか」
この質問は、少しだけ自らの弱さをさらけ出すことを求めるため、その場の力学が一変する。「信頼関係が驚くほど早く形成される」とアスキンは言う。「相手を招き入れるために、自分の内面を適度に明かすことで、つながりが生まれるのだと人々は気づく」
部門間コラボレーションが失敗するのは、多くの場合、人々が戦略を理解していないからではない。異なるグループに属する人々が、アイデアを共有したり、不確実性を認めたり、助けを求めたりできるほど、お互いを信頼していないからだ。
感情インテリジェンスに優れたリーダーが異なるグループ間を仲介する方法
信頼関係が確立された後も、リーダーは実質的な課題に直面する。部門ごとに話す言葉が異なることだ。
営業チームが気にかけるのは顧客と売上だ。技術者はシステムと実現可能性を重視する。研究開発(R&D)チームが関心を持つのは、実験と長期的なポテンシャルだ。アプローチを調整することなく、これらの境界を越えてコラボレーションしようとするリーダーは、協調ではなく摩擦を生み出すことが多い。
効果的なネットワーク・ブローカーは、異なるアプローチをとる。彼らは自分の振る舞い方を調整するのだ。「これらのグループ間で関係を築くには、相手の言葉で話さなければならない」とアスキンは説明する。「自分が提示したものが、そのまま相手から返ってくることが多いからだ」
これこそが、ネットワークレベルに適用された感情インテリジェンスだ。共感や1対1の対話といった核心的なEQスキルに加え、文脈を読み解き、優先順位を理解し、あるグループのアイデアを別のグループに翻訳するといった、より高度なEQスキルを応用する必要がある。
アスキンは自身の講義やワークショップで、ロールプレイングや時間制限のあるシミュレーション、リアルタイムでリーダーに負荷をかけるフィードバック演習を通じて、この点を強化している。こうした瞬間はリーダーのデフォルトの行動特性を明らかにし、彼らの感情パターンが架け橋となるか、あるいはサイロを強化するかを自覚する機会を与える。
感情インテリジェンスをAIにアウトソーシングできない理由
企業がAIの導入を急ぐなか、アスキンは意図せぬ影響を懸念している。それは、リーダーシップにおける感情的な労働を外部委託(アウトソーシング)してしまうことだ。「感情的な事柄をAIに外注しようとする動きを危惧している」と彼は話す。「チャットボットに同調する必要はないし、相手がどう感じているかを読み取ったり、その場にもたらされる雰囲気に合わせて自分を調整したりする必要もないからだ」
それによってやり取りは効率化するかもしれない。しかし、リーダーとしての効果が高まるわけではない。アスキンの考えでは、感情インテリジェンスは決して「完了」するものではない。新たな人間関係が生まれるたびに、理解すべき新たな背景、気質、ストーリーが現れる。その継続的な好奇心こそが本質なのだ。「感情インテリジェンスとネットワーキングを完全にマスターすることはできない」と彼は述べた。
サイロを打破するための3つの行動
サイロを打破するには、感情インテリジェンスそのものに対するリーダーの考え方を変える必要がある。最も効果的なリーダーは、次の3つの行動を異なる形で行っている。
- 組織図上の役割だけでなく、自分が活動しているネットワークを理解している。
- 自らの「弱さ」を、足かせではなく触媒として利用し、意図的に信頼関係を築いている。
- 縄張りを守るのではなく、アイデアや優先事項を翻訳することで、異なるグループ間のブローカーとして行動している。
感情インテリジェンスは、リーダーのつながり方、そして「誰と」つながるかを変えるときに、強力な力を発揮する。そして、サイロ化に悩む組織において、それこそが最も重要なリーダーシップスキルなのかもしれない。
ケビン・クルーズは、感情インテリジェンスのトレーニング企業「LEADx」の創業者兼CEO。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー著者でもある。最新の著書に『Emotional Intelligence: 52 Strategies to Build Strong Relationships, Increase Resilience, and Achieve Your Goals』がある。



