リーダーシップ開発部門の責任者を対象に何百回ものインタビューを行うなかで、私が好んで投げかける質問がひとつある。
「もし魔法の杖を振ることができ、予算の制約もなく、経営陣からの全面的な承認も得られるとしたら、どのようなプログラムを構築しますか?」
この質問は想像力を膨らませるためのエクササイズとして用意したものだが、Procoreのグローバル・タレント・ディベロップメント部門責任者であるアッシュ・パンジュワニ(Ash Panjwani)が「それこそが、まさに私とチームに与えられた機会でした」と答えたとき、私は大いに胸が躍った。
とはいえ、彼女のチームの取り組みで際立っていたのは、投資規模の大きさや経営幹部(C-suite)からの支持だけではない。素晴らしいリーダーと優れた職場環境を築き、維持するための、長期かつ包括的なビジョンこそが際立っていたのだ。彼女のチームは、今後何年にもわたって成長を続け、企業文化やビジネスに影響を与え続ける、包括的なリーダーシップ開発システムを構築した。本記事では、そのアプローチを詳しく紐解いていく。
パンジュワニが17歳のときに気づき、自身のキャリアを決定づけた「EQ」
パンジュワニが産業・組織(I/O)心理学に興味を持ったのは、17歳のころ、仕事から帰宅した両親がその日の出来事について話すのを聞いていたときにさかのぼる。「父のように小さな会社を経営する場合であれ、母のようにマーケティング幹部を務める場合であれ、どんなビジネスにおいても人間こそが核心なのだと理解するようになりました。そして毎回、誰かが『最高の自分』ではない状態で職場に現れたとき、一体何が起こるのかに強い興味を覚えたのです。それがきっかけとなり、私はその糸をたぐり続けることになりました」と彼女は語る。
彼女が気づいたのは、両親が技術的なスキルや知識について語ることはほとんどなく、ほぼ常に「人間関係」や「ヒューマンスキル(あるいはその欠如)」について話しているということだった。彼女はこれに魅了され、その好奇心に導かれて進学(産業・組織心理学の修士号取得)し、リーダーシップ開発のキャリアを歩み、そして当然ながら、感情的知性(EQ)へとたどり着いた。
規模に応じたリーダーシップ開発:すべてのレベルのリーダーにカスタマイズされた基礎スキル
Procoreでゼロから仕組みを構築するという大きな機会を与えられた彼女のチームは、慎重に、かつ深く考え抜かれたシステムを導入した。彼女は、ある根本的な問いを立てたことを振り返る。「私たちがリーダーに期待する行動とは何か、それはなぜか、そしてそれらをどう評価するのか?」
最終的に彼らは、感情的知性のスキルに立脚した、主要な行動からなる「中核となるリーダーシップへの期待」に到達した。
- 心理的安全性とエンゲージメント:メンバーが「自分の存在が認められ、意見を聞いてもらえており、責任を持っている」と感じられる環境を作ること。
- 明確な方向性の提示:最も重要な仕事に業務を連動させ、メンバーに責任を持たせることで、曖昧さを排除すること。
- フィードバック:パフォーマンスに対して、直接的、建設的、かつ一貫して向き合うこと。
- コーチング:他者を育成し権限を委譲することで、その潜在能力を最大限に引き出すこと。
レベルごとに異なるリーダーシップモデルを設計するのではなく、パンジュワニは意図的な選択をした。それは、基礎となるスキルは組織全体で共通とし、変化するのは「文脈、リスク、そして規模」のみにするというものだ。
大まかに言えば、パンジュワニは以下のように分類している。
VP(副社長クラス)は、対面でのつながりから最も恩恵を受ける。リーダーシップサミット、ファシリテーターを交えた対話、グループコーチングなど、直面する摩擦をともに乗り越えるためのプログラムが用意されている。「VPは摩擦の渦中に身を置き、社内で起きている困難な状況を自ら切り抜けていく必要があります」と彼女は説明する。
ディレクター(部門長クラス)は、部門横断的な複雑さを乗り切るために、継続的なコーチングと信頼できる相談相手を必要とする。
現場のマネージャー(管理職クラス)は、コホート(同期)型学習で力を発揮する。そこでは仲間同士のネットワークが学習を促進し、長期的なつながりを構築する。「このグループはネットワーク、つまり結束力を築く必要があります。これこそが人材の定着を促す原動力なのです」と彼女は語った。
すべてのリーダーに共通のスキルを提供することで、同社には一種の「共通のリーダーシップ言語」が定着し、トップから現場に至るまで、それらの行動に対する当事者意識(アカウンタビリティ)が育まれている。
オンボーディングはProcoreのリーダーシップ開発システムにおける重要なレバー
具体的な行動を目標に据える上で、オンボーディング(適応支援)は極めて重要なレバレッジポイントとなる。このため彼女のチームは、初日からリーダーシップへの期待を明確に示すことに、並外れたエネルギーを注いだ。すなわち、「この会社において効果的なリーダーシップとはどのようなものか?」「マネージャーはそれをどう示すのか?」「リーダーはそれをどう体現するのか?」「そして、それが評価面談にどう反映されるのか?」という点である。
これらの行動は、年2回のパフォーマンスレビュー、マネージャーの有効性評価、チームのエンゲージメント調査に反映される。これにより、リーダーは当事者意識を持ち続けることができ、自身の進捗を追跡し、実践や改善が必要な新たな領域を見つけ出すことができる。
AIはEQの必要性を変えたのではない、浮き彫りにしたのだ
「AI時代において、私たちはますますEQについて語るようになっています」とパンジュワニは言う。「現実には、EQの必要性が変わったわけではありません。私たちは何十年も前から、EQをトップリーダーに不可欠な能力として語ってきました。AIはただ、その欠如を浮き彫りにしたにすぎないのです」
AI以前は、リーダーは答えや知識を持っていることで評価されていた。「今や答えは安価に入手できます」と彼女は指摘する。「しかし、今必要とされているのは優れた判断力です。地に足の着いたリーダーが、今ほど求められているときはありません。彼らは、自分が部屋に入るときに背負っている影響力の重さを認識しており、自身の口調やタイミング、反応がチームのパフォーマンスの上限と下限を決めるということを自覚しているのです」。言い換えれば、現代ほど、感情的知性に優れたリーダーが求められている時代はない。
「判断よりも好奇心」:彼女の指針となるEQの原則
パンジュワニが最も信頼しているEQの実践方法は、特にAI時代においてシンプルでありながら非常に効果的だ。それは「判断するのではなく、まず好奇心を持って臨むこと」である。「私は頭の中で何度も『判断よりも好奇心』と繰り返しています。判断を下そうとする前に、まずは好奇心を持って一歩踏み出すのです」と彼女は語る。
「多くのリーダーは、個人として優秀な貢献者だったために昇進しています。そのため、どうしても判断がデフォルトになりがちで、部下に何をすべきかを指示してしまうのです」
好奇心は、その力学を変化させる。解決策を指示する前に問いかけることで、リーダーはより優れたアイデア、メンバーの強い主体性、そしてより回復力のあるチームを引き出すことができる。
パンジュワニはいかにして、拡張可能で持続可能なリーダーシップ開発を構築したか
リーダーシップ開発をゼロから構築する機会を与えられたとき、パンジュワニのチームは、規模の拡大に対応し、組織文化に包括的な影響を与え、そして極めて重要なことに、今後何年にもわたって持続可能な仕組みを作り上げた。
リーダーの95%以上に開発プログラムを提供し終えた今、今後の持続的な運用のために、シニアリーダーがこれらの中核的なリーダーシップ行動を現場でどう実践しているかを語るポッドキャスト形式のインタビューや、業務の流れのなかで利用できるデジタルコーチングへのアクセス、AIコーチの戦略的活用などが予定されている。
リーダーシップ開発を一過性のプログラムの連続としてではなく、ひとつの「システム」として捉えることで、パンジュワニは長く存続するように設計された仕組みを構築した。
テクノロジーが変化を加速させ続ける世界において、Procoreのアプローチはシンプルな真実を反映している。すなわち、感情的知性はもはやオプションではない。それは中核となるインフラなのだ。
ケビン・クルーズ(Kevin Kruse)は、感情的知性トレーニング企業「LEADx」の創設者兼CEO。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー著者でもある。最新の著書は『Emotional Intelligence: 52 Strategies to Build Strong Relationships, Increase Resilience, and Achieve Your Goals(感情的知性:強固な関係を築き、回復力を高め、目標を達成するための52の戦略)』。



