また、エンタープライズ企業が大きな関心を寄せるセキュリティとデータガバナンスについて、キム氏はグーグルの姿勢を次のように説明した。
「グーグルのセキュリティに対する考え方は『ゼロトラスト』に基づいています。人はミスを犯すものであり、それでも機密情報が誤った相手に渡ることがあってはならないという前提で、システムを設計しています。データ損失防止(DLP)やアクセス権限の管理は、これまでもすべてのユーザーに厳格に適用してきました。私たちは、この権限管理の仕組みをAIやエージェントにも同じように適用しています」
キム氏は、今後AIエージェントの性能がどれほど向上しても、本来アクセス権を持たないドキュメントを勝手に閲覧したり、許可された範囲外にデータを漏洩させたりすることは決してないと言い切る。目を引くAI機能を打ち出すだけでなく、各国・地域の法規制に準拠し、データを安全に保護するための技術開発と投資を惜しまないこと。それが「グーグルに寄せられる信頼に応える唯一の道」だとキム氏は語った。
利便性と安全性の両立を掲げるGoogle Workspaceは、日本国内でも導入が着実に広がっている。イベントの基調講演では、新たな導入企業としてNTTデータやオートバックスセブンの名前が挙げられた。全国の地方自治体や主要大学でも、活用事例が増えているという。
AIが人間らしさや創造性を引き出す
キム氏自身が、日々の業務でGoogle WorkspaceのAIエージェント機能をどのように活用しているのかを尋ねた。
「私は毎日、何百通ものメールを受け取り、15件を超える会議に出席する多忙な日々を送っています。そこで、毎朝仕事に取りかかるための準備にGeminiを活用しています。新しい『AI Inbox』機能を使い、200通を超えるメールの中から優先度の高いものや期限が迫っている重要案件を抽出し、効率よく目を通しています。会議の前には参加者の経歴や議論すべきテーマ、関連するドキュメントをGeminiにまとめてもらいます。これを毎日続けることで、最も重要な仕事に集中できるようになりました」
多忙を極めるグーグルのエグゼクティブが、AIを単なる効率化の道具ではなく「人間らしさや創造性を引き出すパートナー」として使いこなしている。その答えが印象に残った。
今年のGoogle Cloud Next Tokyoでも生成AIを巡る刺激的な発表が相次いだ。しかし、グーグルが目指しているのは個々のAI機能を増やすことだけではない。膨大な情報を探し、整理し、処理する仕事をAIに委ねることで、人間が判断や対話、創造に向き合うための余白を取り戻すことにあるのだろう。AIが人間の仕事を代替するのではなく、人間が本来取り組むべき仕事を取り戻す。その先にある「働き方の再定義」こそ、Google Workspaceが描くAI時代の核心なのかもしれない。
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