現在、米国人の少なくとも3人に1人が副業を持っており、その多くの動機は生活費をまかなうためだ。レンディングツリー(LendingTree)が実施した2026年の調査によると、米国人の33%が副業をしていると回答し、副業を持つ人の61%がその収入がなければ生活が成り立たないと答えている。同調査では、副業による月平均収入は1242ドル(約19万円)となっているが、少額の副収入を得るレベルから、人生を大きく変えるビジネスを築くレベルまで、その幅は非常に広い。
その格差があるからこそ、筆者は副業に関する取材を始めた。配達アプリのドライバーをしたり、オンラインで商品を転売したり、単発のフリーランス案件を引き受けたりといった、よくあるアドバイスの先を見る価値がある。明確なターゲット顧客、価値あるスキル、あるいは人々がすでにお金を払ってでも解決したいと思っている課題を中心に構築すれば、生活費を補うだけでなく、借金返済、キャリアの柔軟性、あるいはフルタイムの起業へとつながる道が開けるからだ。
以下に紹介する4つの副業は、いずれも月5000ドル(約78万円)以上、または年間6桁(10万ドル(約1570万円)以上)の収入に達している。これらには、AI面接対策プラットフォームなどのソフトウェア開発、限定性(エクスクルーシビティ)に活路を見出したイタリアの「アマーロ(薬草酒)」ブランド、テック系キャリアコーチング事業、そして金融サービス業界の仕事以上の収入をもたらすコンテンツ制作事業が含まれる。
戦略1:業界での経験と人脈を活かしてプロダクトビジネスを構築する
カイル・ハーダーは2022年にSee the Elephant Amaroを立ち上げたが、その構想は2019年のイタリア旅行から温めていたものだった。彼は10年以上スピリッツ(蒸留酒)業界で働いていたため、製品カテゴリー、流通システム、および規制(コンプライアンス)の壁を熟知していた。
その経験は基盤となったが、やるべき仕事が免除されるわけではなかった。販売を開始する前に、ハーダーは輸入ライセンスの取得、州への登録、ラベルのデザイン、レシピの開発、そしてイタリアのサプライヤーとの関係構築をこなさなければならなかった。
販売開始の初年度、売上は月1500ドル(約23万円)から2000ドル(約31万円)程度だった。副業として運営していた最後の年である2024年には、月6000ドル(約94万円)から8000ドル(約125万円)ほどを売り上げるようになっていた。そして2025年1月、彼はこの事業を本業にした。
ポッドキャスト番組「Side Hustles IRL」での対話の中で、ハーダーは情熱、業界知識、そして忍耐力に基づいて副業を構築することがいかに重要であるかを強調した。この事業には、各種ライセンス、サプライヤーとの関係、そしてバーやレストランで際立つ製品が必要だった。See the Elephant Amaroがそれらの店舗で採用されると、副業は販売だけでなく、運営管理(オペレーション)の業務としての側面も強くなった。「これらのバーやレストランは、カクテルをメニューに載せている。私は常に在庫を切らさないようにしなければならない」とハーダーは言う。「第2段階の課題は、舞台裏での運用や物流といった面が大きかった」
実践するためのポイント
業界での経験を活かしてプロダクト型の副業を構築したいなら、まずは部外者が過小評価しがちな自業界の要素を特定することから始めよう。それは、規制対応、調達、流通、顧客教育、パッケージング、あるいはバイヤーとの関係性かもしれない。
まず自分に問いかけてみよう。より迅速に何かを構築したり、コストのかかる失敗を避けたり、顧客との信頼を獲得したりする上で、自分がすでに持っている業界の知識は何だろうか。
戦略2:特定の顧客が抱える特定の課題を解決する
リチャード・デメニーは、大学生や若手プロフェッショナルが面接の練習をし、適性検査の準備を整え、録画式の自動ビデオ面接に慣れるためのAI活用型面接対策プラットフォームを構築した。
デメニーは、ソフトウェアエンジニアの職を解雇された後、約2年半前にこのプラットフォームの構築を始めた。彼はテックリードを務めた経験があり、多くの学生が就職活動の際に直面する「面接に合格するための効果的な準備方法」というニーズを解決することにビジネスチャンスを見出した。「多くの学生が、最初の面接で苦戦している。彼らは非常に緊張して面接に臨みがちで、時には回答の構成や考えの整理の仕方さえわからないこともある」とデメニーはインタビューで語った。
初年度、この事業は約1万ドル(約157万円)から1万5000ドル(約235万円)の利益を上げた。2年目にはそれがほぼ倍増した。開始から約30カ月がたった現在、このプラットフォームは月5000ドル(約78万円)ほどをもたらしているとデメニーは言う。
彼の主な成長アプローチは、SNSでの直接的なアプローチだ。利用者の約20%はオーガニック検索や紹介経由で彼を見つけているが、残りの80%はSNSでの活動を通じて獲得している。このプロダクトは学生や若手プロフェッショナルを対象としているため、彼はTikTok、Instagram、Redditなど、その層に人気の高いプラットフォームに注力している。
実践するためのポイント
単発の収入にとどまらない副業にこの戦略を応用する場合、最初のステップは特定の顧客と特定の課題を絞り込むことだ。面接対策の支援を必要とする学生やキャリア初期のプロフェッショナルに焦点を当てたデメニーのように。まずは次のように問いかけてみよう。一般的なツールや講座、サービスよりも優れた解決策を提示できるほど、自分が深く理解している具体的な課題は何だろうか。顧客ターゲットが具体的であればあるほど、価値の説明やオーディエンスの獲得、そして人々がお金を払ってでも欲しがるプロダクトの開発が容易になる。
戦略3:緊急のニーズを抱える人々に高価値のサービスを提供する
ブライアン・プリアムは、大手フィンテック企業でエンジニアリングマネージャーとして働きながら、2022年1月にキャリアコーチングの副業を始めた。彼の年収は60万ドル(約9400万円)を超えていたが、会社のカルチャーが長期的に自分に合っていないと感じており、人員削減が実施される可能性を懸念していた。
待つ代わりに、プリアムは会社に籍を置いたままコーチングのクライアントを獲得し始めた。13年のコーチング経験とテック業界における広範なネットワークを活かし、コーチングが確実な収入源になり得るかをテストしたのだ。2022年6月までに、彼はこの事業を本業にすることを検討するのに十分な手応えを得た。みずから退職パッケージ(希望退職)に応募しようと準備していたところ、会社から先に解雇通告を受けることとなった。
プリアムは現在、テック業界の人々を対象に、リーダーシップコーチング、エグゼクティブコーチング、およびキャリア転換の支援を提供している。最初の6カ月間で、プリアムは約3万ドル(約470万円)から4万ドル(約627万円)を稼いだ。翌年はパートタイムの稼働でありながら約9万8000ドル(約1540万円)を稼いだ。2024年と2025年の両年とも、この事業はパートタイム労働のまま年間約15万ドル(約2350万円)をもたらし、現在、彼の労働時間は1日あたり約3時間から4時間となっている。
プリアムの戦略は、高所得者にとって明確な経済的価値を持つ課題を解決することだった。コーチングによって、より早く就職先を決めたり、面接の準備を整えたり、自身の経験をより効果的に伝えたりすることができれば、投資対効果は非常に高くなる。「彼らの時間を節約したり、より迅速に仕事を得る手助けができたりすれば、それこそが彼らにとっての『鎮痛剤(直ちに解決すべき痛みを伴う問題)』となる課題の解決だ」とプリアムは語った。
プリアムは、求職者がキャリアの悩みをよりオープンに共有しやすいRedditやBlindなどの匿名スペースを含め、潜在顧客が自らの課題についてどこで語り合っているかを調査している。また、アイデアをテストし、何が効果的かを記録している。「ふざけていることと科学の唯一の違いは、書き留めることだ」とプリアムは語る。
実践するためのポイント
この戦略を副業に応用する場合、価値、緊急性、および顧客の支払能力に焦点を当てるべきだ。プリアムは、就職やキャリアアップという、人生を左右する課題を抱えるテックプロフェッショナルに焦点を絞った。
読者にとっての問いは、人々がすでに時間、金銭、あるいは機会を費やしてしまっているどのような課題を解決できるかだ。サービス型の副業は、顧客がその成果のもたらす経済的価値を理解したときに、より急速に成長する。
戦略4:個人の体験談をコンテンツやプロダクトに変える
アレックス・ペトラキエヴァは、渡米して大手金融機関の会社員として働き始めた後にコンテンツ制作を開始した。筆者はカンヌに行く直前に彼女と話し、クリエイターとしての彼女のストーリーを記事にした。彼女はUXコンテンツデザイナーだったが、その職務では望むような創造性を発揮できなかった。そこで、シカゴに移住した後にクリエイティビティを探求し、コミュニティを築く手段として、2023年12月頃からTikTokへの投稿を始めた。
2024年1月、1本の動画が彼女の副業の方向性を変えた。彼女と夫がどのように借金を返済する計画であるかについて投稿したところ、その動画がバイラル化したのだ。数カ月後の3月頃には、初のブランド案件(タイアップ広告)を獲得した。1本の動画に対して600ドル(約9万円)が支払われ、後にそれはパッケージ契約へと発展し、コンテンツ制作を副業として進めるための概念実証(プルーフ・オブ・コンセプト)となった。
ペトラキエヴァが借金返済のプロセスを記録していたため、フォロワーから彼女が使っている家計管理用のテンプレートについて問い合わせが寄せられるようになった。そこで彼女は独自のテンプレートを作成し、コンテンツを収益化する方法を追加した。ペトラキエヴァによると、当初は100ドル(約1万円)ほどからスタートしたものの、このテンプレートはピーク時に月2万5000ドル(約392万円)から3万ドル(約470万円)の売上をもたらしたという。
オーディエンスが拡大するにつれ、ブランド案件がビジネスの大部分を占めるようになった。ペトラキエヴァによれば、重要なのはトレンドを追いかけることではなく、彼女自身の人生の瞬間をテーマにしたシリーズ動画という、現在では彼女の代名詞となっているコンテンツ制作手法を通じて、人々が彼女の歩みを追いかけたくなる理由を提供することだという。「自分の人生を記録する必要はあるが、人々が興味を持つような切り口で伝える必要がある」
ブランドからのアプローチを期待するクリエイターに向けて、彼女は実用的なアドバイスを送っている。連絡を容易にし、一貫性を保つことだ。「クリエイターにとって最も重要なのは、プロフィールの自己紹介欄にメールアドレスを載せておくことだ」と彼女は語る。それでも、基盤となるのは常にコンテンツそのものだ。「ステップ1:コンテンツに集中すること」と彼女は付け加えた。
実践するためのポイント
ペトラキエヴァによると、重要なのは、独自のプロダクトであれ、同じ層をターゲットとする企業とのブランド案件であれ、コンテンツ、オーディエンス、および収入を結びつけることだ。自分に問いかけてみよう。他の人々がその過程を追いかけたいと思うような、自分が現在取り組んでいる課題、変化、あるいは目標は何だろうか。最も強力なコンテンツは、人々に注目し続けたいと思わせる理由を提供し、その関心を信頼に、そして自然にフィットするサービスや提携関係へと結びつけていく。
生活費の圧迫により、より多くの人々が副収入を求めるようになる中、課題となるのは自らの経済状況を有意義に改善できる副業をどのように構築するかだ。これら4つの事例は、月5000ドル(約78万円)または年間6桁に達する副業が、通常、次の4つの基盤のいずれかの上に構築されていることを示している。すなわち、業界での経験、特定の顧客の課題、高価値のサービス、あるいはオーディエンスとの信頼関係を築く個人の体験談だ。これらの原則を応用するには、まず自分がすでに持っている強みを特定し、人々がお金を払ってでも解決したい明確な課題を中心にビジネスを構築することから始めよう。



