泣いた時に、変化が生じるのは目だけではない。必ずと言っていいほど、鼻にも何らかの影響が及ぶ。鼻詰まりや鼻水、場合によっては粘り気のある鼻水まで出てきてしまう。こうした現象は、悲しさに起因する別の反応ではない。解剖学的な構造が招く直接的な結果だ。涙を排出する器官は、鼻腔へとまっすぐつながっている。よって、涙がたくさん出ると、解剖学的に下方に位置する鼻腔へと流れていくのだ。
このたった一つの事実で、「みっともないほど大泣き」した時に起こる現象の説明がつく。大泣きして鼻水が出るのは、悲しみが大きすぎるからとか、制御がきかなくなるからではない。涙がゆっくりと少しずつ排出されるはずの仕組みが突然、いつもよりはるかに大量の液体を処理しなければならなくなるからだ。
涙は、目から鼻へと通じる排水管を通って流れていく
涙は、ただ拭い去られたり、蒸発したりするだけではない。左右それぞれの目には、専用の排水システムが備わっており、解剖学用語で「涙器」と呼ばれている。2025年に『Cureus』で発表されたレビュー論文の詳述によると、涙は、目頭にある小さな開口部「涙点」を通って排出され、細い管を通り、「涙嚢」という、涙が溜まる部分に移動する。そして最後に「鼻涙管」という管を通過し、鼻腔へと直接流れ込んでいく。
何か特別なことが起きなければ、この仕組みには気づかない。目は、基礎分泌の涙を絶えず作り出している。これは、角膜を潤すためだ。こうしたわずかな量の涙は、鼻涙管を通って鼻へと送り込まれ、吸収されるか、普通の粘膜と混ざってしまう。涙が流れていくこのシステムは、あくまでも少量を処理するためのものであり、洪水のような涙の量には対応していない。泣いた時に変化が生じるのは、涙の通り道の構造ではなく、涙の量なのだ。
生物学者や眼科医は通常、涙を3つに分類している。角膜を常に潤している「基礎分泌の涙」、玉ねぎの匂いや煙などの刺激がきっかけで出る「反射的な涙」、悲しみや喜びを感じたり、打ちのめされたりした時に出る「情動性の涙」の3つだ。
情動性の涙は、人間独特のものと考えられている。2018年に『Human Nature』に掲載された研究によると、人間以外の動物が感情に反応して涙を流した事例は、これまで一度も確認されていないという。
人の目に情動性の涙があふれ出すと、量が多すぎて、鼻涙管が静かに処理できなくなる。一部は頬を流れ落ちるが、一部は、鼻腔が吸収できる速度を上回る勢いで逆流して、粘膜と混ざって濃さを増す。これが、涙と一緒に出てくる鼻水になるわけだ。



