大泣きすると、鼻が詰まったようにも感じられる理由
鼻涙管が涙であふれると鼻水が出る理由は、これまでに説明したとおりだ。しかし、激しく泣いた時に、鼻の中が腫れて詰まったようになり、風邪をひいたような感覚を覚える理由は説明できていない。この現象は、まったく異なる2つ目の仕組みを示唆している。その仕組みとは、鼻粘膜を流れる血流をコントロールする神経系だ。
鼻の粘膜には血管が張り巡らされており、それらは自律神経系によって調節されている。自律神経系は、心拍や消化など、意識してコントロールしていない機能を背後で調整しているネットワークだ。自律神経系から枝分かれしているのが副交感神経で、一般的には休息や消化、強い情動と結びついている。この副交感神経が、涙を排出するシステムとはほぼ独立したかたちで、鼻粘膜の腫れを引き起こしたり、粘液を追加で生成したりすることがある。
血管運動性鼻炎、別名「非アレルギー性鼻炎」では、これと基本的に同じ仕組みが生じている。こちらは、花粉やほこりではなく、感情や温度など、非アレルギー性の要因がきっかけとなって起こる鼻づまりのことだ。2000年に『The Laryngoscope』で発表された研究によると、こうした鼻炎は、副交感神経と交感神経のバランスが崩れた時と関連しているという。
激しく泣くと、涙が鼻腔へと実際に流れ込むのと同時に、この自律神経が急激に活性化して、鼻粘膜が腫れると見られている。この2つの仕組みが重なって働く結果、盛大に鼻水をすすり上げることになるわけだ。
大泣きした時の鼻水の量は、人によって違う
これは、単なる感覚の問題にはとどまらず、実際のパターンを説明するものだ。大泣きした時には、一部の人はほかの人よりたくさん鼻水が出る。これは、「動揺の度合い」という問題ではなさそうだ。
涙点や鼻涙管の幅は、人によって差がある。2025年に『Cureus』で発表されたレビュー論文が指摘しているように、こうした違いが、涙の逆流速度に直接影響を与えている。つまり、涙の量が同じであっても、涙の通り道によっては、早く詰まってしまうのだ。
副交感神経の反応も、人によって違う。感情に負荷がかかった時に「休息・消化」モードに大きく傾く神経系の持ち主は、同一のきっかけで涙が出たとしても、鼻が腫れやすくなる。こうした違いはどちらも、涙の背後にある感情の深さとは関係がない。
以上のような説明は、「みっともない号泣」という言葉を正す、有意義な解釈の修正となる。鼻水は、静かに作動すべき2つの一般的な生理的システムが、限界を超えた時に生み出される副産物であって、人の悲しみの深さを測るものではないし、取り乱した証拠でもない。配管から涙があふれ出し、自律神経が過剰に活性化したのだ。
そして、ハンカチが2枚も必要なほど涙が出るのは、そうしたシステムが、本来の目的通りに動いているからだ──いつもと比べて、ちょっと度を越したやり方で。


