長年未解決だった10件の数学の問題について、新たな結果を出すのにかかる費用が2000ドル(約31万5000円)まで下がった。発表を行ったOpenAIによれば、自社のAstraモデルが、数十年にわたって人間による進展を拒んできた問題に対し、AIで検証できる証明を生成したという。
OpenAIは8月1日にこの成果を公表した(同時に次の主力モデル群をAstraと名づけた)。公表された成果は群論、高次元幾何学、符号理論(データの誤りを検出・訂正する数学)、量子計算量理論(量子コンピュータで何がどれだけ速く解けるかを扱う分野)、格子暗号(量子コンピュータでも解読が難しいとされる次世代の暗号方式)、極値組合せ論(条件を満たす組合せがどこまで大きく/小さくなりうるかを探る分野)にまたがる。
249ページに及ぶ論文集としてまとめられ、しかもそこには、この規模でAIの主張に添えられたことが過去に例のない補足資料が添付されていた。すべての結果について、機械が検証できる証明書が用意されていたのだ。
扱われたのは、発見らしく見せかけた教科書の練習問題ではない。いずれも少なくとも十年は未解決のまま残っていたもので、多くはそれよりはるかに長く、いくつかはそれぞれの分野の中心に位置する問題だ。
・非ソフィック群(non-sofic group)が存在することを示す構成。群を有限個の置換の集まりでどこまで近似できるかという問題で、すべての群が近似可能(ソフィック)なのかどうかは、群論の研究者を長年悩ませてきた
・コンヌの剛性予想(Connes's rigidity conjecture)の反証。フォン・ノイマン環(von Neumann algebra。無限次元の空間に作用する作用素の集まりを扱う数学の対象)の理論で、長く残されてきた問題である
・高次元における球充填密度の一般的な上界の改良。球充填密度は、同じ大きさの球を空間にどこまで詰め込めるかを表す割合で、その上界は1978年以来動いていなかった
・三問は、ポール・エルデシュが遺した未解決問題のカタログから採られている
今回の発表に先立ち、5月にも成果があった。同じモデル群がエルデシュの単位距離予想(unit distance conjecture。平面上に点をいくつか置いたとき、距離がちょうど等しくなる点の組は最大でいくつ作れるかを問う問題)を反証したと伝えられている。離散幾何学の80年来の難問で、1946年以来、真剣な挑戦をことごとく退けてきたものだ。
フィールズ賞受賞者のティモシー・ガワーズは、この証明ならためらいなく一流の数学誌への掲載を推薦しただろうと述べた。その後、ガワーズやノガ・アロンを含む九人の数学者チームが、人間の数学者にも追いやすい形でこの証明を解説した論文を発表した。
エルデシュ問題のカタログを管理するトーマス・ブルームは、8月の成果を「大ニュース」と呼び、先の単位距離の結果よりもさらに重要だと語った。OpenAIの研究者ノーム・ブラウンは、冷静な補足を添えた。「残念ながら、ミレニアム懸賞問題はまだ解けていません」。



