成功について語るとき、情熱や執着心、目的といった言葉がよく使われる。しかし、目標を達成するための本当の鍵が、数値で説明できるとしたらどうだろうか。
カイル・オースティン・ヤングはそう確信している。『Success Is a Numbers Game: Achieve Bigger Goals by Changing the Odds(成功は確率のゲーム:確率を変えてより大きな目標を達成する)』の著者である彼は、達成を導く要素として最も見過ごされているのは、ポジティブ思考ではなく「確率」だと主張する。彼の著書は行動科学と実践的な戦略を融合させたものであり、「ただ自分を信じろ」という風潮に対して新鮮な対案を提示している。
ヤングは、人々が成功の可能性を見極める際に犯す最大の過ちは、モチベーションではなく数学に関するものだという。
「確率を見極めるときに最もよくある間違いは、平均化してしまうことだ」とヤングは言う。「例えば、フルマラソンを完走したいと考えており、ランニングコーチから、成功するためにはトレーニング、栄養計画、睡眠スケジュールの3つのルールを守る必要があると言われたとする。直感的に、自分にはこの3つをすべて実行する能力があると感じており、それぞれの成功確率が70%だと見積もったとする。本番当日までに準備が整う確率は、かなり高いように思えるのではないだろうか。しかし実際には、この目標を達成できる確率はわずか34%なのだ」
ヤングの説明によると、人間は生まれつき過大評価しやすい性質を持っているという。
「人間は成功の確率を過大評価しがちだ。なぜなら、前提となる個々のステップがうまくいきそうに見えると、全体としても良い結果が得られると思い込んでしまうからだ。しかし現実には、いくつかの条件がすべて満たされる必要がある場合、それぞれの確率を掛け合わせなければならない」
その結果、「当初の見通しは、思っていたよりはるかに悪いことが多い」とヤングは言う。「だが幸いなことに、与えられた確率をそのまま受け入れる必要はない。私たちは確率を変えることができるのだ」
では、どのようにして確率を変えればよいのだろうか。
「最も起こりそうだと感じられる、最悪の事態を特定することだ」とヤングは言う。「それが成功への最大の脅威となる。そのリスクを排除するためのクリエイティブな方法を見つけることは、手軽に確率を向上させられる効果的な手段となる」
「成功のリスクを排除する」というテーマは、彼の理論全体を貫いている。楽観論を煽るのではなく、失敗の確率を体系的に減らすことを彼は提案しているのだ。
「誤った情報に基づいて下された『正しい』決断は、悪い結果を招くだけだ」と彼は説明する。「データに基づいた意思決定を行う際には、質の高いデータを使用し、それを適切な文脈に当てはめているか確認することが極めて重要になる」
しかし、数値だけでは不十分だ。直感について尋ねると、ヤングは含みのある見解を示した。
「これは、これまでの経験の深さに大きく左右される。時に『直感』とは、欲望や期待、不安を都合よく言い換えただけにすぎない。その一方で(特に専門家に多く見られるが)、顕在意識がその理由を説明できるようになる前に、潜在意識が重要な結論に達しているケースもある」
彼の目安はこうだ。「通常、初心者は数値を信頼するのが賢明だが、真の専門家であれば、数値が捉えきれなかった要素に時折気づくこともあるだろう」
ヤングは、成功の方程式において「失敗」も誤解されている変数のひとつだと強調する。
「ひとつの方法として、失敗に終わった目標に向かって進んできた過程を、別の結末を見据えて再利用できると認識することだ」と彼は言う。彼は、初期のYouTube創業者たちが最初はデートサイトというアイデアから始めて失敗したものの、その後世界を揺るがすサービスへと方針転換(ピボット)した例を挙げた。「失敗したアイデアを捨てる代わりに、彼らはピボットを決断し、ユーザーがその技術を利用してあらゆる動画をアップロードできるようにした。その後彼らは、現在のYouTubeとして知られるそのウェブサイトを15億ドル(約2350億円)以上で売却した」
ヤングは、あらゆる目標を確率の問題として捉えてほしいと考えている。それは、意図的なリスク軽減によって改善できる問題なのだ。
「自分が追い求めているすべての目標には、2つの隠された数値が伴っていることを認識しなければならない。それは成功の確率と失敗の確率だ」と彼は言う。「成功の確率は、クリアしなければならない個々の条件の確率をすべて掛け合わせたものとして理解できる」
ヤングは、リーダーがこのマインドセットを活用してチームを鼓舞できると考えている。
「『サクセス・ダイアグラム(成功図)』は、基本的には何がうまくいく必要があり、代わりに何が失敗する可能性があるかをリスト化したもので、コラボレーションにおいて極めて有用なツールとなる」と彼は言う。「起こりうる悪い結果を防ぐ方法をブレインストーミングし、成功確率の推移を追跡することは、チームの賛同を得て、モチベーションを高めるための実用的なアプローチだ」
そしてイノベーションに関して、歴史上で最もクリエイティブだった人物たちは、同時に最も多作な人物たちでもあったとヤングは指摘する。
「モーツァルトは600以上の楽曲を作曲した。ベートーヴェンは700以上を作曲した。ゴッホは10年間、平均して36時間に1点のペースで新しい芸術作品を生み出した。ベン&ジェリーズは何百もの試作フレーバーを開発した。エジソンは6000以上のフィラメントで実験を行った。こうした華々しさとは無縁の愚直なアプローチこそが、歴史上最も『革新的』と評されるキャリアの多くを説明するものだ。これは地道ではあるが、1%の成功確率を確実に良い結果へと変える信頼できる方法なのだ」
重要な指標は、生産性それ自体を高めることではない。実際の成功に向けた、測定可能な進捗状況なのだと彼は言う。
ヤングが成功に関して学んだ、最も直感に反する教訓とは何だろうか。
「それは『ネガティブに考える』ことの力だ」と彼は言う。「大きな目標を追いかける際、私たちはポジティブな側面に集中し、うまくいかないかもしれないという不安を避けるように言われがちだ。しかし、真実はその真逆だ。悪い結果を想定してブレインストーミングすることによって初めて、成功の確率を向上させるための意図的な対策を講じることができるのだ」
彼の最後のアドバイスは、自身の哲学を実用的なエクササイズへと落とし込んでいる。
「サクセス・ダイアグラムを作ってみよう。追い求めている目標を達成するために、うまくいく必要のあるすべての要素をリストアップするのだ。それぞれの要素について、何が失敗する可能性があるかを想像する。そしてクリエイティブになり、これらの最悪な事態が発生するリスクを意図的に減らす方法を探す。そうすることで、確率を自分の味方につけることができる。ひとつの目標において、これは結果を変えるかもしれない。そして多くの目標を重ねていくうちに、あなたの人生そのものを変えることになるかもしれない」
カイル・オースティン・ヤングの世界において、成功とは魔法でも、モチベーションでも、マインドセットでもない。それは数学だ。しかし、そこには救いがある。もし成功が確率のゲームであるなら、すべての挫折、すべての再計算、そしてすべての実験は、私たちが確率を変えるための新たなチャンスとなるのだから。



