リーダーがAIに関して犯し得る最大の過ちは、テクノロジーに何ができるかと、組織に何ができるかを混同することだ。
この2年間、私たちはAIの能力が驚異的なスピードで進化する様子を目の当たりにしてきた。毎週のように、より強力なモデル、より賢いエージェント、そしてビジネスの運営方法を変革すると謳う新しいアプリケーションが登場している。組織もまた同じスピードで進化するだろうと考えたくなるのも無理はない。
だが、そうはならない。
企業変革がそうした形で機能したことはこれまで一度もない。テクノロジーは一夜にして変わりうる。だが組織は、リーダーシップ、インセンティブ、オペレーティングモデル、そして人を通じてしか変わらない。だからこそ、今日AIから真の価値を生み出している企業は、必ずしも最先端のテクノロジーを持つ企業ではない。仕事の進め方を再設計している企業なのである。
私は今年のカンヌライオンズで、そのことを改めて思い知らされた。
多くの人はカンヌをマーケティングの祭典と考えており、それはその通りである。しかし同時に、創業者、テクノロジー企業、投資家、グローバルブランドが1つのエコシステムに集う数少ない場でもある。私にとって最も価値ある対話は、最新のAIプロダクトの発表に関するものではなかった。多くの経営幹部がまだ耳にしたことのないケイパビリティを構築している起業家たちとの会話だった。それらは、ビジネスがどこへ向かっているのかを示す初期のシグナルでもある。
今年、ひとつのトレンドが際立っていた。
マーケティングは、AIネイティブ(AIを前提にした)なケイパビリティを中心に自らを再編し始めた、最初の主要な事業機能のひとつになりつつある。
ここで得られる教訓は、マーケティングについてではない。リーダーシップについてである。
最近のマッキンゼーの調査は、組織が顧客とつながる方法を再形成している5つのケイパビリティを特定している。顧客シグナルを継続的に意思決定へと変換すること、パーソナライズされたコンテンツを大規模に生成すること、あらゆる顧客接点を最適化すること、ブランドがAIエージェントに発見されるようにすること、そしてそれらのケイパビリティを、分断されたキャンペーンの連なりではなく、統合されたシステムとしてオーケストレーションすることだ。
具体的な中身よりも、それらが何を意味しているかの方が重要である。
これらのケイパビリティは、従来の組織図にすっきりとは収まらない。伝統的な役割を横断し、新たな意思決定権限を必要とし、異なる働き方を求める。マーケティングは、多くの組織がその現実に最初に直面している場であるにすぎない。すべての機能が、いずれ同じ道をたどることになる。
だからこそ、AIをめぐる議論が主にテクノロジー導入に集中しているのを見ると、私は懸念を抱かざるを得ない。
業界を問わず、企業がAIを実験し、個別ソリューションを導入し、パイロットを検証している様子を今も目にする。それらは必要なステップだ。しかし、AIネイティブな形でワークフローを再設計したり、事業領域全体を再構想したりし始めている企業はごくわずかである。
これは、AIから意味のある価値を大規模に獲得できている組織があまりに少ない理由を説明している。テクノロジーが期待を下回ったからではない。企業変革が難しいからだ。あまりにも多くの場合、取締役会は目に見えるAIの進展を求め、テクノロジーチームはそれに応じて見栄えのするツールを構築する。事業部門は後からそれを引き継ぎ、実際の仕事の進め方に統合するのに苦労することになる。
変革がその方向でうまくいくことは、めったにない。
最も成功しているAIの取り組みは、事業主導である。それらは戦略的な問いから始まる。私たちはどの問題を解こうとしているのか。AIは、私たちが価値を生み出す方法を根本的にどう変え得るのか。テクノロジーが答えの一部になるのは、その後である。この区別は重要だ。AIがもたらす最大の機会は、単に生産性を高めることではないからだ。
生産性は重要である。すべての企業が追求すべきだ。しかし、削減だけで繁栄に至ることはできない。
企業にとっても社会にとっても、長期的な価値は成長から生まれる。
先行する組織は、AIを使って顧客をより深く理解し、体験をより効果的にパーソナライズし、新製品をより速く開発し、これまで不可能だったビジネスモデルを生み出す組織になるだろう。テクノロジーを、既存の仕事を最適化するためだけでなく、競争のあり方を根本的に改善するために活用するのである。
それこそが、私がカンヌから最終的に持ち帰ったことだった。
私が目にした最も興味深いものは、画期的なデモでも、気の利いた新アプリケーションでもなかった。それは、組織変革が実際にはどのような姿をとるのかを示す予告編だった。
なぜならAI戦略とは、突き詰めれば、より優れたテクノロジーを導入することではないからだ。それとともに継続的に適応し、学び、成長できる組織をつくることなのである。



