筆者は最近、来年2月にフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられる「アルテミス2号」の大型ミッションを取材するため、NASA(アメリカ航空宇宙局)に報道機関向けの取材許可を申請した。これは、1960年代後半から70年代前半のアポロ計画以来、宇宙飛行士を乗せて月軌道を周回する初のミッションとなる。
申請書に記入しながら、筆者はメリーランド州ローレルで過ごした子供時代のことや、模型ロケットメーカーであるエステス・インダストリーズ(Estes Industries)のことを思い出していた。12歳の頃、コロラド州ペンローズにある同社からミニチュアロケットを注文し、父親の監督のもとで組み立て、打ち上げていた。最初のロケットは「WACコーポラル(Wac Corporal)」というものだった。
当時は旧ソ連との月面着陸レースの真っ只中で、宇宙は大ブームだった。『スタートレック』のようなテレビシリーズや、『宇宙船XL-5』のランチボックス、宇宙飛行士のアクションフィギュア「メジャー・マット・メイソン」などが大流行していた。
半世紀後の今も、エステスは存在しているのだろうか。そう思って調べると、答えはイエスだった。しかも、成長を続ける業界に対応するように、同社が提供する宇宙機のラインナップは大幅に拡充されていた。スペースシャトルやスペースXの「ファルコン9」、さらにはブルーオリジンの弾道飛行型宇宙旅行機「ニューシェパード」のスケールモデルまで揃っている。(以下のリンクからエステスのウェブサイトをチェックしてみてほしい。)
記憶では、週末になると、打ち上げ装置を設置するために広い空き地を探した。赤いプラスチック製の発射台があり、その側面にはガイドワイヤーが伸びていた。ロケットは円形の金属製ブラストプレートの上に慎重に置かれ、小さなエンジンノズルにニクロム線を丁寧に挿入した。
エステス・インダストリーズが製造した模型ロケット。(Photo by Carl Iwasaki/Getty Images)
約15フィート(約4.5メートル)の安全な距離からボタンを押すと、電池から電流が送られてニクロム線が加熱され、エンジンが点火する。ロケットは「シュッ」という音とともに上昇し、驚くほど速く、しばしば見えなくなるほど高く飛んだ。
数秒後、最高到達点(遠地点)に達すると、エンジン内の火薬が自動的に作動して先端のカプセルからパラシュートを放出。機体はゆっくりと地上へ舞い戻ってくる。大抵の場合は機体を見つけて回収し、新しいエンジンを取り付けて再利用することができた。
もちろん、子供の常として、時には限界に挑戦することもあった。ある時、より高い高度に到達させようと、飛行中に写真を撮影できるカメラ内蔵の「カムロック(Camroc)」という機体に、過剰な高出力エンジンを詰め込んだ。その結果、大きすぎるエンジンは瞬時にロケットのフィン(尾翼)の1つを吹き飛ばし、機体は横を向いて、駐車していた車のドアに激突した。そう、小さな凹みができた。
またある時には、打ち上げに必要な道具一式を持って、地元にあった高さ150フィート(約46メートル)の給水塔に登った。その作戦ならロケットはさらに高く飛ぶと考えたのだ。おそらく実際にそうなったのだろうが、私たちが想定していなかったのは、ロケットを見つけるために十分な速さで下に降りられないことだった。さらに不都合なことに、下には警察が集まっており、拡声器で私たちに降りてくるよう命じ、そのまま親元へと連れ帰ってしまった。
おそらく最も奇妙な飛行は、特別に設計された貨物用ロケットのコンパートメントに小さなネズミを乗せた時のものだった。打ち上げと回収は成功した。ネズミは足元をふらつかせながらも無事に機体から出てきた──が、それも束の間、興奮しすぎたある少年がそれを踏みつけてしまった。このおかしなエピソードは、ワシントン・ポスト紙にも掲載された。
模型ロケットは、数十年にわたりホビー愛好家たちの定番であり続けている。上級の愛好家の多くは、高度10万フィート(約3万メートル)を超える強力な機体を製作している。最近では、45万フィート(約13万7000メートル)を超え、技術的には宇宙空間といえる高度に達したものも報告された。
フロリダ州ケープカナベラル、2022年10月5日。NASAのケネディ宇宙センターから、NASAの宇宙飛行士ニコル・マンとジョシュ・カサダ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の若田光一宇宙飛行士、ロスコスモスの宇宙飛行士アンナ・キキナを乗せ、国際宇宙ステーションへと向かうNASAの「SpaceX Crew-5」ミッションのクルードラゴン宇宙船を搭載した、スペースXの「ファルコン9」ロケットが打ち上げられた。(Photo by Joel Kowsky/NASA via Getty Images)
エステスのロケットの到達高度は3600フィート(約1100メートル)弱にとどまるが、若者が模型ロケットを体験するための安価な手段であり、米国における科学の学力テストのスコアが過去最低を記録するなか、基礎的なSTEM教育を提供する役割も果たしている。それに、父親と息子の絆を深める素晴らしい経験にもなる。



