また、これよりは淡白な、全く別方向からの説明として、猫の肉球そのものが挙げられる。猫の足の指の間には臭腺があり、猫はこれを意図的に活用して、対象に肉球を押し付けたり爪とぎをしたりすることでにおいをつけ、縄張りを主張している。この行動は学術誌『Canadian Journal of Zoology』に1994年に掲載された論文に記録されており、この研究では野良猫が野外で爪とぎを通じてマーキングを行う様子を追跡した。
「ふみふみ」も臭腺を押し当てる動作だ。したがって、成猫が飼い主の膝の上を前足で「こねる」のは、ただの子猫期への退行現象なのではなく、自分のものだと認識している人間に対してにおい付けをする意味も持っている可能性がある。
また、真剣に受け止めるべき発達上の兆候もある。ただし、これは「こねる」動作そのものよりも、これと類似した行動に最も明確に当てはまるものだ。自然なタイミングより早期に離乳した子猫は、成猫になっても羊毛をしゃぶるなどの非栄養的な吸啜習慣を続ける可能性が有意に高いことが、学術誌『Scientific Reports』に2017年に発表された論文で報告されている。この研究では数千匹の猫を調査し、早期離乳とステレオタイプな行動に関連があることを発見した。
「ふみふみ」を特に離乳時期と結びつける証拠は乏しいが、羊毛を吸う行動に関する研究結果は、根底に同じ発想があることを裏付けている。すなわち、子猫の頃の行動が成体になっても続いている場合、本来の目的がとっくに失われていても、安心を求める手段として機能している可能性があるということだ。
これらの説明はいずれも他の説明を排除するものではなく、むしろそのすべてが当てはまると考えるほうが正確だろう。つまり、摂食反射という単一の目的のために始まった行動が、家畜化による広範なネオテニー効果によって成猫期まで引き継がれ、その過程で安心感の獲得やコミュニケーションといった二次的な役割を果たすようになったのだ。このような多目的の生存選択は進化生物学においてはよくみられる。維持コストの低い形質は存続するにあたって唯一の明確な正当化の理由を必要としないからである。
猫の「パンをこねる」しぐさからわかることは、結局のところ猫の前足そのもののことではない。家畜化によって種がどれほど徹底的に作り変えられるかを目に見えて示す小さな指標であり、動物が完全に成長して成体となっても、ある点では幼若期の状態を保ち続けていることを示している。


