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サイエンス

2026.08.05 18:00

なぜ猫は「パンをこねる」のか? 前足で飼い主をもむ習性を、生物学者が解説

SilviaJansen/Getty Images

これほど多くの幼若期の特徴が飼い猫に集中して現れる理由は、家畜化が実際に何を選択・淘汰してきたかに関わっている。野生のネコ科動物は世代を重ねるごとに、単独行動する捕食者にとって有用な特徴、すなわち警戒心や自立性、急速な成熟といった特性を選択して生き残ってきた。一方、飼い猫は数千年にわたり「人間に対する寛容さ」と「人間との共存」という全く異なる淘汰圧の下に生きてきた。その結果、淘汰圧の直接的な対象ではなく主に副作用として、子猫期の形質がまとめて残ったとみられる。

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このパターンを最も明確に実証しているのは、猫ではなく、旧ソ連時代に開始されたキツネの育種プログラムだ。人間に対しておとなしいという一点のみを基準に選抜されたキツネは、2~3世代のうちに耳が垂れ下がり、巻き尾になり、幼若期の遊び行動が増えたが、これらはいずれも直接的に選択された形質ではなかった。学術誌『Evolution: Education and Outreach』に2018年に掲載された研究論文では、60年間にわたるこの実験の全容を追跡している。

野生の祖先と比較して子猫めいた特徴を保持する飼い猫は、この実験結果が示す傾向のより穏やかな形態を示しているように思われる。「ふみふみ」もそのひとつである可能性が極めて高い。

猫が「パンをこねる」理由──ひとつの説明だけでは不十分

この説明には十分な裏付けがあるが、猫の行動を研究する生物学者たちは概して、これを唯一の理由とみなすことに消極的だ。なぜなら「ふみふみ」は単なる反射の名残としての反応にとどまらず、新たな目的のために転用された形質として作用するからである。

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成猫において「こねる」動作は、ほとんどの場合、特定の生理的状態の兆候とセットで現れる。それは、ゆっくりとしたまばたき、ゴロゴロと喉を鳴らす音、リラックスした姿勢などで、猫と飼い主の双方にオキシトシン(いわゆる愛情ホルモン)を分泌させるシグナルと同じである。オキシトシンは、絆の形成や、より広義のストレス軽減に最も密接に関連しているホルモンだ。

この関連性から一部の研究者は、猫が成体になっても「ふみふみ」をするのは文字通りの授乳期の名残というよりも、ある時点で自己鎮静行動と結びついたためだと主張する。人間でも幼少期に身に着いた習慣が、その必要のなくなった数十年後においても心を落ち着かせる行動になり得るが、それとよく似ている。

次ページ > 猫の足には臭腺があり、これを活用して縄張りを主張している

翻訳・編集=荻原藤緒

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