EUのAI法が影響しないケース
このAI開示法は、すべての人物や、すべてのAI生成コンテンツに適用されるわけではない。
「AIが生成したテキストが人間のレビューや編集上の管理プロセスを経ており、かつ、個人の専門家(自然人)や企業(法人)がそのコンテンツの公開に対して編集上の責任を負っている場合、開示義務は適用されない」と、欧州委員会の「Digital Strategy」ウェブサイトの発表文には記されている。
さらに、同条項は次のようにも案内している。「ディープフェイク・コンテンツが、明らかに芸術的、創造的、風刺的、フィクション、またはこれらに類する作品やプログラムの一部である場合、透明性の義務は、作品の展示や鑑賞を妨げない適切な方法での開示に限定される」
しかし、自分の制作物がEU居住者の目に触れる可能性がある場合は特に、自己判断に頼るよりも安全策をとる方が賢明だ。
EUのAI法の透明性ルールは、米国の雇用主にも適用されるのか?
間接的には適用される。実務における具体的な例をいくつか紹介する。
例:学習・開発(L&D)のコンプライアンスやオンボーディング研修の動画に、CEOのAIアバターやAI動画を使用する場合。自社が米国に拠点を置いていても、従業員がグローバルに存在し、その一部がEU地域にいるとする。この場合、研修動画がAIで改変または生成されたものであることを示すために、EUのウェブサイトで提供されているアイコンを使用することが義務付けられる。
もう一つの例:米国の顧客のみを対象とする米国企業のコンテンツマーケティングマネージャーとして働いているとする。しかし、企業としてのグローバルな影響力が強く、LinkedInのフォロワーにEU加盟国のユーザーが含まれていたり、メルマガの購読者にEU諸国の居住者がいたりする場合だ。その場合も、安全を期してコンテンツにラベルを表示するのが賢明だ。
何が「人間のレビューと編集上の管理」とみなされるのか?
この典型的な例として挙げられるのが、やはりPwCの失敗だ。同社が発表した4つのレポートにおいて、AIのハルシネーション(事実とは異なる情報の生成)や不正確な引用が指摘された。これらは明らかに、人間の判断やレビューを経ずに公開されたものだった。
もし、PwCのAIポリシーが実施され、人間が正確性や事実関係を実際に検証し、自社の基準に沿って出力を調整・修正していれば、これは「人間のレビューによる免責」の対象となり、AI透明性ラベルの表示は不要だった可能性がある。
しかし、こうした重要なプロセスを経ずにテキストコンテンツを公開する場合、一般大衆を欺くおそれがあるとみなされ、AIの使用を開示しなければならない。


