インドネシアは現在、またしても窮地に立たされている。英オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、アーティー・ラムはインドネシアについて、通貨安によって財政余力が乏しくなるなかで、市場から財政政策の引き締め圧力を最も受けやすい国のひとつだと警鐘を鳴らしている。ラムによれば、ルピアの下落はインドネシアの財政収支を著しく悪化させるとともに、財政運営への信頼性と中央銀行の独立性の両方について市場の疑念を呼んでいる。
インドもまた難局にある。ルピー安の影響で、原油や工業用原材料から電子機器まで、生活や産業に不可欠な各種輸入品のコストが膨らみ、インフレが加速する懸念が強まっている。国内金利の上昇は投資家心理を冷やし、通貨安はドル建て債務の返済負担を刻一刻とかさませている。
市場はいまのところ、1990年代のように短期金利が1年で2倍に跳ね上がるようなショックは織り込んでいない。しかし、FRBの姿勢が緩和見込みから引き締めの可能性へとにわかに転換したことで、アジアの2026年の見通しはすでに大きく変わり始めている。
FOMCでの票の割れ方も、そうした姿勢転換を浮き彫りにしている。ウォーシュを含むメンバー9人が政策金利の現状維持を選ぶ一方、クリーブランド連銀のベス・ハマック総裁、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁、ダラス連銀のロリー・ローガン総裁は0.25ポイントの利上げを求めた。
地政学的な情勢は、さらに多くの当局者をタカ派に傾かせる可能性がある。ペルシャ湾で米国とイランの緊張が高まり、原油価格が急騰すれば、利上げ圧力はいっそう強まるだろう。たとえウォーシュがトランプへの配慮から利上げを回避しようとしても、債券市場が金利上昇を通じておのずと金融環境を引き締めることもあり得る。このシナリオでは、FRBがいま小幅な利上げに踏み切るよりも大きな混乱が市場に広がるおそれがある。
アジアにとっては、不確実性そのものが経済をむしばむ要因だ。3~6カ月後に為替相場がどうなっているのか見通せないような状況では、投資家もメーカーも、サプライチェーン(供給網)業者も計画が複雑になるし、家計もまた、いまは支出すべきなのか、それとも貯蓄すべきなのか判断が難しくなる。
さらに、AI(人工知能)ブームに起因する市場の荒い値動きが新たな不安定要因として加わっている。とりわけ韓国と台湾では、AIトレードによる相場の急騰と急落が繰り返され、株式のバリュエーション(割安か割高かなどの価値評価)が大きく揺らいでいる。そのため、企業は向こう1年の採用や投資、報酬などの計画が立てづらくなっている。
それでも、FRBのタカ派転換は、アジアが直面する対外的な試練のなかでも最も影響の大きいものだ。それへの対処は、今後ますます難しくなっていく可能性が高い。


